マリアの修行〜実戦・前編
あれから一週間が経った。
あれから毎日マリアの戦闘訓練を行ない、マリアの職業は剣聖まで上がった。
《魔装術》も戦闘訓練と同時進行で鍛えていき、最初の頃は纏うだけで精一杯だったが今では、纏ったまま高速戦闘が出来る程まで上達した。
シンドー流剣術は奥伝まで上がって最初の頃は身体能力に頼った直線的な動きだったのが今では、円運動を基本とした舞う様な美しい動きになった。
俺がマリアに訊いた所によると、マリアは産まれてすぐ親に捨てられて幼少期を孤児院で過ごしたらしい。
成人(この世界では15才で成人)してからは、院長の知り合いの服飾店で働いていたらしい、孤児院では服は高価な物なので年長者のおさがりだけだったからか、服を作る事にのめり込み、店主以上の腕前になり王都でも名前が知られる位になったらしい。
しかし、ある日王女の依頼でドレスを持って店主と一緒に王城へ行った時事件は起きたらしい。
王女がドレスを着てみるとドレスが破けた、王女は怒り、製作者のマリアは奴隷に落とされ店主にはドレスの代金と王女の肌を見たとして王城への立ち入り禁止と罰金、金貨20枚を徴収されたと言う。
後から分かった事らしいが、どうやら王女専用の着付け師が細工をしたらしい。
ドレスには刃物で切り裂いた様な跡があり、しかもマリアに依頼する前にある服飾店と裏取引をしていたらしい。
この事について、復讐したいか?とマリアに聞くと…。
「あの時は、絶望もしましたし復讐もしたかったのですが、今ではあなたに巡り合わせてもらって感謝してるぐらいです」
っと言われてしまった。
つまり、何が言いたいかというとマリアは魔物や生き物を殺した経験が無いらしい。
そこで俺は、戦いにとって最も大切な命を奪うと、言うことを経験させたいと思う。
そして丁度いい依頼を受けた。
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牙狼の群れの討伐
場所 北の森
内容
北の森に最近出没する牙狼の群れの討伐。
牙狼は20頭以上の群れになっている、その群れに鉱山で働く者が襲われて困っている。
推奨 Cランク以上
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この依頼を受けたのには理由がある。
生き物を殺した事の無いマリアにいきなりゴブリン等のヒト型の者を殺させるのは流石に無理があるので、取り敢えず最初はケモノ型の魔物が良いと思ったからだ。
その後ギルドを出て北の森に向かう。
今回の装備は、俺はいつもの《革ジャン》《革パン》《神製鋼のバスターソード》で、マリアが《革ジャン》《革パン》《双魔剣 風切り》と言う感じだ。
森の中では、俺の後ろにマリアがついて来る並びで進んで行く。
途中で魔物が襲って来るかと思ったが、以外にも一度も襲われる事は無かった。
不思議に思った俺たちは、周りの気配を探りながら進んで行く。
そして鉱山にたどり着くと昼食を摂った。
鉱山は、木の棒や角材で入り口が補強されていて以外に立派だ。
正直、製鉄技術やミスリルやオリハルコンをゴミの様に扱っている、だからこそ以外だったがまぁ良いか、今回の俺たちの依頼は牙狼の群れの討伐だと思い直し2人で辺りを探索した。
それから一時間程探索した頃牙狼の群れを発見した。
牙狼の数は20頭どころかざっと見積もっても50頭以上いる様だ。
しかも群れの真ん中にいる個体は他の牙狼に比べて大きさが倍以上ある、取り敢えず、俺は目に神気を集めてその大きい個体を見てみる。
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種族 牙王
脅威度 Bランク
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牙王と言う名前らしい。
確かに他の牙狼達より強そうだがワイバーンより格下なら俺にとっては雑魚だ。
あとはマリアが実際の戦闘でどれ位動けるかによるが、まぁ負ける事は無いだろう。
楽観的ではあるが訓練通りの実力が出せればワイバーンですら今のマリアの相手にならない。
俺はマリアの肩に手を置く。
「緊張はしてもいいがあまり硬くなるなよ、一度ゆっくり深呼吸して」
「す〜〜は〜〜」
「落ち着いたか?」
「はい」
ある程度緊張は取れた様だ。
「じゃあ、行くぞ!」
俺たちは牙狼の群れに向かって走り出した。