ギルマスと試合です
「あぁ?言ってなかったか?」
「言ってね〜よ」
(ってか名前も知らないし)
「あ〜わりぃわりぃ、じゃあ改めて、ゴホン!え〜冒険ギルドジョージ支部ギルドマスターのジル・ライナーだ!ギルドマスターかジルって呼んでくれ!」
「じゃあジルと呼ぶよ俺はEランクのユウ・シンドーだ」
「自己紹介も終わった事だし、そろそろいいか?」
ダン!
こっちの返事を聞く前にジルは踏み込み高く振り上げたポールアックスを振り下ろしてきた。
俺は後ろに下がり縦振りを躱す。
ジルは振り下ろした姿勢から更に一歩踏み込み槍の穂先で喉を突いてきた。
ただの槍なら首を捻れば躱せるがポールアックスの場合は斧の部分が当たってしまうので半身をズラして躱す。
そのままの姿勢から俺は左手に持っていた剣を横に薙ぎ払う。
これは躱せる様に手加減する。
「今…音がしなかったぞ!」
「当たり前だろう、剣を振って音がするようじゃまだ半人前だ!」
「おもしれ〜、おもしれ〜ぞ!」
ギンッ!ギィン!
ジルが猛攻を始める、まともに打ち合うとこちらの剣が確実に負けるので攻撃の殆どを躱しそれ以外を受け流す。
「ハ〜ハッハッハ」と笑いながら斧を振る姿はまさに戦闘狂だった。
それから10分ほど打ち合いお互いに距離を取る。
「ハ〜ハ〜オイ!お前まだ本気じゃ無いだろう!」
「ああ、この剣じゃあ本気だと一振りで折れちまうからな」
「ま〜訓練用だしな、しゃ〜ないな後一撃で終わりにしよう、だから本気だせ!」
「了解、次が最後だ」
ジルはポールアックスを腰だめに構えて姿勢を低くする。
俺は左手に剣を持って上段に構える、両手で持たないのは両手で持つと確実に剣をおってしまいからだ。それにここでジルに勝っても特にメリットもないので、武器を破壊して引き分けに持ち込むつもりだ。
「…」
「…」
一時の静寂の後先に動いたのはジルだった。
低い姿勢で踏み込みからポールアックスを横薙ぎ振る。
俺はそれに合わせて剣を振り下ろす。
ガキィン!
と一際大きな音がして俺の剣とジルのポールアックスが砕け散る、俺は自分の計画通りに引き分けに持ち込めたと思い油断していた、ジルは砕けた武器を捨て、拳で殴りに来たのだ。
俺は咄嗟に反応して前蹴りを打ち込む。
「…グフッ!」
俺の前蹴りを喰らったジルは数メートル程の吹き飛んで大の字に倒れ気絶した。
「…だ、大丈夫でしょうか?」
「大丈夫だろ、多分」
こうしてジルとの試合は腕と脚のリーチの差で俺の圧勝に終わった。
それから数分後
気を取り直したジルが滅茶苦茶機嫌良さそうに俺の方に歩いてきた。
「いや〜参ったね、強いなユウ!メッチャ楽しかったぞ!」
「そうか…そりゃ良かった」
(負けたのに嬉しそうだな)
「どうした〜ノリ悪いぞ!勝ったお前がテンション低くてどうするよ!」
「ジルは負けたのにテンション高いな」
「当たり前だろう!勝つ日もあれば負ける日もある闘いとはそう言うものだ!命があるだけ儲け物だろ?」
「ハハハ、確かにな」
清々しいぐらい戦闘狂だな。
だが悪い人間じゃなさそうだ。
「じゃあ、そろそろ戻って仕事するか!」
「なんだ、暇なんじゃなかったのか?」
「息抜きだ息抜き!書類仕事ばっかりじゃ肩が凝るからよ!」
「あっそうだ、コレを渡しとくわ」
ジルからドックタグの様な物を渡された。
「これは?」
「それはここの使用許可を証明するもんだ、それがあればこの闘技場とあそこのドアの向こうの設備が自由に使えるんだよ」
「あのドアの向こうに何の設備があるんだ?」
「それは見てのお楽しみってヤツさ、じゃあ俺は行くから、そのタグはドアの鍵になってるから出入りする時はアイテムボックスの中じゃなくて外に出しとけよ」
「あぁ、ありがとう」
「じゃあまたな」
「あぁ、また」
お互いに手を上げてジルは出て行った。
「さて、どうするかな」
ジルが出て行ってから俺は、これからのことについて考える。
まずはマリアの服と防具それと武器を作らなければならない。
武器は最悪、俺が作ったヤバめの武器があるが俺ではデザインセンス的に女性用の服や防具は作れない。
その問題を解決するためには、マリアの服飾師としての力が必要だ。
そして制作用の場所だせめて2人で作業しても邪魔にならない広さの部屋があれば…。
「そう言えば、あのドアの向こうを見に行って無かったな」
「悩んでもしょうがないでしょう、取り敢えず見に行きましょう」
「あぁ、そうだな」
マリアに手を引かれながらドアの前に歩いて行く。
「じゃあ開けるぞ」
「はい…」
ドアを開けるとそこにあったのは。
「ふぁ〜凄い!」
マリアが感嘆の声をあげる。
「おぉ〜、これは凄い!」
部屋の中には武器や防具や服などを制作する為の道具が揃っていた。
鍛治用のハンマーやその他の道具、皮を加工しやすいように造られた台や織物機など、これでマリアの装備が作れる。
「これだけの設備があれば色々作れそうだ!マリア、まずはマリアの装備から作ろう!俺はデザインセンス無いからマリアが頼りだ!」
「分かりました!最高の物を作りましょう!」
俺たちは2人共物作りキチガイなので燃え上がる。
「明日だ明日から本腰を入れて作るぞ!」
「明日が楽しみ♪」
マリアは妖艶な笑みを浮かべて織物機やその他の設備を眺めている。
「さて、それじゃあ宿に戻るぞ」
「ね〜えあなた〜帰りに生地見に行きたい〜」
「分かった分かった、行こう行こう!」
(キャラ変わってね!でも、これはコレで…アリだな!)
「ありがとう〜あなた〜」
マリアが俺の腕に抱き着いてくる
(めっさ、かわえぇ〜まったくウチのマリアは最高だな)
俺は、腕に抱き着いたマリアとイチャイチャしながら宿に帰った。