フルーツ柄のテディベア
詩織は、驚いていた。こんな事は、今まであったか?あ、一度だけあったかもしれない。でも、ちゃんと言われた事はなかった。なんだか変な気持ちだ。
「好き…。」
LINEでそう告白された。相手は、元会社の同僚。同じ、営業の仕事をしていた。しかし、営業は肌に合わないのだ。なんとなくしっくり来なくて、気が付いたら退職してた。
そんな詩織に一通のLINEが届いたのは、辞めた二日後。
「小谷さんにID教えて貰ったんだけど、川上さん、会社辞めちゃったの?
時々休んでいたから心配してたんだ。
挨拶もなしだったから、ビックリしたよ。」
どうやら、急に会えなくなったから、心配してLINEくれたらしかった。
「うん。
営業はもう辞めようかと思って…。
次の仕事も見つかったし、元の会社はもう辞める手続きしたよ。」
「次の仕事は、どんな仕事なの?」
「医療事務の仕事。
資格取得したの。
結構面白いよ。」
「なら良かった。
心配したんだ。もう会えなくなるんじゃないかと思って。」
「別にそんな事はないよ。」
「じゃぁ、今度二人で会ってくれる?」
?
「いいけど、何で?」
詩織には、思い当たるフシがなかった。
亮平君は、どこにでもいる、普通な人。実年齢より上に見られるけど、実際は年下がタイプなんだろうなぁ。そう思っていたから、年上の詩織には、何も用無しかと思っていた。ちなみに、九歳も年齢が離れている。やっと二十代になった感じの亮平君に、自分は不釣り合いだ。
「会いたいからだよ!
これから詩織さんと会えなくなるなんて、嫌だ。」
詩織は、そのLINEを、近くにあった、フルーツ柄のテディベアを振り回しながら読んでいた。
すると、こんなLINEが来たのだ。
「詩織さん、好き…。」
!!
振り回していたその手が暫くの間、止まった。
ふーん、そうだったのか、知らなかった。まさかあの亮平君が…。
一瞬迷ったが、詩織はきちんと返信した。
「ありがとう。
嬉しいよ。
よろしくね!」
「良かった!
ありがとう。」
こうして、詩織と亮平の付き合いは始まった。
詩織は、フルーツ柄のテディベアを気が付いたら抱きしめていた。