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メリッサはアジトへ戻り、ギルド員達を呼び出して全員記憶を消して元の世界へ返した。
ひと仕事終えてアジトの外へ出ると、大勢のGM達がメリッサを待ち構えていた。
「どれだけ人を待たせたら気が済むんだ?」
GM達の先頭に居る牙王がメリッサを見下ろしながら言った。
「ごめんなさい、お待たせして。」
そう言ってメリッサは深々と頭を下げた。そして顔を上げると、いつもの優しい微笑みでGM達を見た。
「お詫びに、面白いものを見せてあげるわ。」
そう言うと、メリッサはGM達を連れて一斉にタルタロスの地下へテレポートした。
初めてこのタルタロスの地下を見たGM達はその部屋の異様さに思わず恐ろしくなって鳥肌が立っていた。
しかし、それにもひるまず、牙王はメリッサを問い詰める。
「最近どうもお前の様子がおかしいと思ってたんだ・・・。お前、いつから大人たちの味方になった?」
華奢なメリッサの胸ぐらを、牙王はその太くて逞しい拳で掴む。牙王はそのままにらみつけるが、メリッサは笑みを絶やさなかった。
「大人の味方になったわけじゃないわ。自分の罪を認めて、子供たちを開放しただけよ。」
「なんだと?!あの方からの指示じゃないのか?!」
「残念だけど、あの方はもう死んだわ・・・。あれは私が勝手に出した指示よ。」
牙王は怒りに任せて、広間の中央にある高炉にメリッサを押し付け、その華奢な首を片手で掴んだ。
「それなら俺達だけでもこの世界に残る。お前は死んでもらおうか。」
そう言って牙王が邪な笑みを浮かべながらその細い首を折ろうとするが、いくら力を入れても一向にメリッサの首が折れるどころか、首を絞めている感覚すらなかった。
「殺せるものなら殺しても構わないのよ。ただ、この世界は元々あの方と私が作った世界・・・。もしこの世界にまだ未練があると言うならいいわ、今すぐ私をこの高炉に入れなさい。そうすれば皆、私と一緒に一生自分の命が尽きるまで地獄のような業火に焼かれ続け、自分で死ぬことすらできなくなるわよ。それでもいいのかしら?」
メリッサはクスクスと笑いながら牙王を見上げる。牙王は震えながらその手を離し、顔を青くしながら後じさりした。
「もう・・・私たちは大人よ。子供には戻れないの。」
メリッサのその切なげな言葉に、皆一様に押し黙った。
「私たちは、自分たちの身勝手な欲望のために子供たちを殺してきたわ。だから、これからは彼らの魂に祈りを捧げ、自らの罪を現実で償い続けましょう。」
「嫌だ!ふざけるな!」
「なんでお前に従わなきゃいけないんだよ!」
メリッサの言葉にGM達からヤジが飛ぶ。しばらくヤジは止まず、メリッサは目を閉じる。
そして、その目を見開き、GM達を見渡した。
「黙れっ!」
その一喝に、GM達は一瞬にして静まり返った。
「大人なら、自分のケツくらい自分で拭きなさい!」
メリッサの乱暴な言葉づかいや怒った目つきにGM達はさらに怯えた。その彼らの姿を見て、改めて自分たちの不甲斐なさを感じてメリッサはため息をついた。
「私たちはこれから記憶も消さず、生きて苦しみ、もがきながら、それでも彼らの分まで生きて、一生をかけて罪を償い続けましょう・・・。」
メリッサは死んでいった子供たちに祈りを捧げるように言葉を紡ぐ。GMの多くは渋々メリッサの言葉にしたがおうとしたが、牙王だけは納得がいかないようだった。
「嫌だ、俺だけは、俺だけはここに居させてくれよ!」
牙王は先程とはうってかわって、メリッサに泣いて縋った。メリッサは優しく牙王の頭を撫でる。
「私は、あなた達を巻き込んだことへの罪も償い続けるわ・・・。だから、みんな、生きましょう・・・。」
そう言うと、牙王を含め、地下にいるGM達全員が静かに消えていった。
地下は静けさを取り戻した。
そして、この箱庭の最初の場所へ向かった。それはタルタロス50階の玉座の間だった。
メリッサが到着すると、はるか遠くの玉座には、もう誰も座っていなかった。
玉座の前に立ち、メリッサは自分の杖を振りかざして、空っぽの玉座を粉砕した。




