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43/reboot  作者: 煌洲 桜子
43/reboot
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43/作戦会議

 イトマキは仕事が終わり、帰り支度もせずにずっと休憩室でビデオカメラに収めた三沢少年の様子を見ていた。

 やはり気に掛かるのはメリッサだった。稲村米子から聞いた話では酷い仕打ちを受けたと聞いており、さらには面会では自分の首を絞めるふりをしてこちらを牽制していた。

 しかし、三沢少年は、とても優しくて、ギルド思いのいい人だと言っていた。メリッサは三沢少年たちを騙しているのか、それとも・・・。

 そう思った時、岩見が休憩室へやってきた。


 「まだ資料作りか?」

 「え、はい・・・。」


 岩見の問いかけにイトマキは曖昧に答えた。事実、まだ頭の中でメリッサのことが引っかかって、資料の整理も全く手につかなかった。


 「お、それ例の三沢くんじゃねーか。見せて見せて。」


 そう言って岩見は強引にイトマキからビデオカメラを奪ってソファーに座り、わくわくした表情で観始めた。


 「へぇ〜、夢の世界でゲームかぁ。反抗期の子使って、面会に来る親を敵にするなんてよく考えたもんだなぁー。」


 岩見は三沢少年の話を感心しながら見ていた。そして見終わった後、岩見も考え込んでいた。


 「中島遥香を助けて、か・・・。だけどあの苺花だっけ?あいつが絡んでるとなると、何か裏がありそうな気がするな。」


 岩見もイトマキと同じ考えをしていた。実際に苺花を見た岩見もイトマキ同様、苺花が罠を仕掛けているのではないかと考えているようだった。


 「岩見先生もそう思われます・・・?」

 「なんだ?お前にしてはえらく慎重だな。」


 イトマキの言葉に岩見は不思議そうにイトマキを見つめる。


 「私にしては、って・・・?」

 「お前ならいつも思ったらすぐに行動してるだろ?」

 「それが、高田苺花さんに話を聞きに行こうと思ったら、肺結核で入院中だそうです・・・。」


 岩見は片手で手を覆って天を仰いだ。


 「あーそうか・・・。だけどよぉ、俺達に敵意むき出しにしてた奴がそう簡単に腹割って話してくるわけないだろうしなぁ・・・。」


 しばらく沈黙が続く。岩見は膝に置いていたビデオカメラを机に置いて、覆っていた片手を外すと、足を組んで両手を頭の後ろで組んだ。


 「あのさ、苺花は面会の時にジオサイドのことや周りの連中のことを気にしてたよな。」

 「はい・・・。」

 「思ったんだけどよ、苺花はPUCSの子供たちを自分の子供のように思ってたんじゃねぇのかな?今回の話を見てみても、どうにも子供びいきなところがあるな。そして、俺達大人を毛嫌いしてる。だけど、苺花は大人を毛嫌いしてるくせに、三沢に『理解して助けてくれる大人がいる』って言ったんだろ。」


 イトマキも岩見のその『理解して助けてくれる大人がいる』という言葉が引っかかっていた。


 「三沢くんの話によると、苺花さんも中島遥香さんと同じ目に合っていた、と言ってます・・・。」

 「うん、それちゃんと見てるからわかってる。」


 イトマキはうつむきながら、机のビデオカメラを見た。


 「お前はさ、素直に感じたままに動いてきたじゃねぇか。今までみたいに、もっと素直に、シンプルに考えてみろよ。」


 その岩見の言葉にハッとしてイトマキは顔を上げる。


 「苺花だか、メリッサだかは、嫌いな大人に助けを求めてる。しかも赤の他人のことをだぜ?お前はそれをどう思う?」


 そう言われてイトマキはうつむいて考えこむ。そして、白衣のポケットの中の養父の手紙に手を当てる。

 岩見は答えずに黙るイトマキにため息をついて腰を上げて休憩室から出ようとした。


 「岩見先生!待ってください!」


 イトマキの呼び止める声に、岩見はニヤリと笑って振り向いた。


 「お前、なんか隠してるだろ?」

 「はい・・・。」


 岩見は元のソファーに戻って座った。そして、イトマキは三沢少年から預かったメモを見せた。


 「これ、本人が書いたやつ?」

 「いえ・・・目覚める前にヒゲダルマみたいな人から貰ったって言ってました。」

 「まぁあの状態じゃ三沢本人が書けるわけないもんなぁ。しかし誰がこんなの書いたんだ?」


 そこへ、よれよれになって疲れ果てた豊平が休憩室にコーヒーを飲みにやってきた。岩見の目が邪に笑う。


 「豊平くん、お仕事ご苦労さまです。ご苦労様ついでに文字を照合するソフトとかアプリとか持ってない?」

 「どうしたんですか?いきなり?」


 岩見の言葉に、豊平は疲れきった表情で答える。


 「ちょっとね、調べたいことがあんのよ。豊平先生様お願いします。」


 岩見は珍しく豊平に拝むようなポーズをとった。豊平はため息をつきながらコーヒーを置いて休憩室から出て行った。


 「・・・怒って帰っちゃったんでしょうか?」

 「まぁ待っとけって。ところでお前はこの字に思い当たる奴はいねーの?」

 「いないことはないですが・・・。ちょっ私のPC取ってきます。」


 そう言ってイトマキが休憩室から出たあと、豊平がアルミフレームのメガネを持って帰ってきた。そしてその後を追うようにイトマキが息を切らしながら自分のパソコンを持ってきた。


 「僕のPC持ってきましたよ。」


 豊平はソファーに座り、太いフレームの黒縁のメガネの上から、手にしていた細いフレームのメガネを掛ける。そして、机に向かって手のひらでゴミを払うようなジェスチャーをした。イトマキはそのアルミフレームのメガネの智(フレームと蝶番の間)の部分に目を凝らすと、ある会社のロゴマークが入っているのに気がついた。


 「これ、リンゴ社のPCメガネじゃないですか!」


 イトマキはようやく豊平の掛けているメガネが、PCメガネだということに気がついた。

 どうやら先程の豊平のジェスチャーは、バーチャルキーボードの呼び出しのようだった。豊平は机をリズミカルに叩き、何か検索している。


 「ありましたよ。文字照合ソフト。」


 豊平は先程とはうって変わって力強く真剣な声になっている。


 「イトマキ先生、照合する文字を見せてください。」


 そう豊平が言うと、イトマキは紙を二つ折りにして、『真木子、頼む。どうか、あの子らを助けてやってくれ。』と書かれた部分を豊平に見せ、そして、自分の養父が書いた文字がPCの中に残っていたのでその画像を豊平のPCに送った。

 豊平はソフトを使って文字を照合する。岩見とイトマキは固唾を飲んで豊平を見守る。


 「照合できました。紙の字と、イトマキ先生からもらった画像の文字が一致しました。ところで、これ誰の字なんですか?」


 豊平がPCメガネを外すと、イトマキが泣いていた。


 「あー、ああ、琉星くんが泣ーかせた、琉星くんが泣ーかせた、せーんせいに言ってやろ。」


 岩見は動揺する豊平を見てわざとはやしたてた。


 「ええー?岩見先生が言うからやったのにぃー!」


 豊平は眉毛をハの字にして困っていた。そのやりとりを聞いてイトマキは涙を拭きながら笑った。


 「豊平先生、ごめんなさい、悲しいわけじゃないんです。むしろ、なんだか嬉しくて・・・。」


 イトマキは岩見と豊平に、このメモが10年前に死んだ養父の文字だと言った。


 「・・・ソフトで解析して一致したんなら、本物なんだよな・・・?だけど10年前に死んだ親父さんがなんで・・・?」


 岩見と豊平はその現実を目の当たりにして呆然としている。


 「どうやって10年前の親父さんが三沢にこのメモを渡したのかはわからない。だけど、イトマキ、お前はメリッサと親父さん、どっちを信じる?」

 「父です。」


 イトマキは岩見の言葉に思わず即答した。


 「それなら答えは簡単だ。中島遥香を助けるぞ。」

 「助けるぞって言われても・・・。」


 岩見の意気揚々とした表情とは反対に、イトマキの顔は曇っている。


 「証拠や証言に信ぴょう性がないって言いたいんだろ。言いたいことはよく分かる。警察は証拠主義・現場主義で、MD(精神疾患)の証拠はアテにしないからな・・・。」


 そう言って岩見は腕を組んでしばし考え、それからポンと手の平を拳で軽く叩いた。


 「要は俺達第三者がちゃんと証拠を見て、撮りゃいいじゃないか。」

 「そうですね。それじゃ僕はこれで・・・。」


 立ち上がって去ろうとした豊平の肩を、岩見は強く握った。


 「豊平先生?まさか豊平先生ともあろう人が、そんな薄情な訳ありませんよねぇ?」


 岩見は豊平と肩を組み、豊平の耳元で囁く。豊平は岩見の醸し出す恐ろしさに、思わず首を縦に振った。


 「よし、これより『ひと・きゅう・さん・ご(19時35分)』、作戦会議に入る!」


 岩見は自衛隊の時間の読み方を使い、ヘトヘトになった豊平を巻き込んで作戦会議を始めた。

相変わらず疲れていても琉星くんは奴隷体質でした・・・。不憫だ・・・。

さてさて岩見先生は何を目論んでいるのでしょう?

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