表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/reboot  作者: 煌洲 桜子
43/reboot
61/86

裏切り

 メリッサはリータを抱きしめながら、白い息を吐いて監獄の中でずっと閉じ込められていた。まったく外界の様子もわからないため、どれくらい日数がたったのかメリッサにもわからなかった。

 監獄の中は、通常チャット以外の全てのチャットが強制的に使えなくなる。誰かに連絡を取ることも、誰かから連絡を受け取ることもできない。

 音のない、孤独な牢獄で、メリッサは耐えた。あの男に一言「許してください。」と言えば、すぐにでも開放してくれるのは分かっていた。

 けれども、メリッサはどうしてもあの男に許しを乞うつもりはなかった。それはメリッサの意地でもあり、子供たちへの贖罪でもあった。

 ふと、考えにふけるメリッサの服を、リータが弱々しく掴んだ。どうやら目が覚めたようだった。

 しかし、リータはもう話せなくなっていた。口をパクパクと必死で動かすが、その口から言葉は出ない。

 リータはショックのあまり再び幼児のように泣きじゃくり始めた。

 そんなリータの背中をメリッサはさする。


 「大丈夫よ。私に触れればリータちゃんの言葉が聞こえるわ。」


 メリッサの言葉に、リータは必死でしがみついてメリッサに伝えようとする。


 『コ・コ・ハ・ド・コ?』


 電子音のような声がメリッサの頭の中に伝わってくる。恐らくリータが現実の世界で使っていた、自分の声の代わりのPCの音声が影響しているのだろう。


 「ごめんなさい、リータちゃん。私がリータちゃんを助けるために、ジオサイドくんを元の世界に無断で戻して怒られて、今牢屋に閉じ込められているの。」

 『モ・ト・ノ・セ・カ・イ?』

 「いいのよ、思い出さなくて。とにかく、リータちゃんを助けてもらいたくて、ジオサイドくんに別の世界へ行ってもらっているの。」

 『ジ・オ・サ・イ・ド・・・。ヒ・ト・リ・デ、ダ・イ・ジ・ヨ・ウ・ブ・カ・ナ?』


 自分のことより、ジオサイドのことを心配する思いやりのあるリータを強く優しく抱きしめ、なおさらにメリッサは自分の身勝手さを強く感じて辛かった。


 『メ・リ・ツ・サ、ナ・カ・ナ・イ・デ。』


 いつの間にかメリッサは涙を流しており、リータはその手でメリッサの頬を優しく拭った。


 「ありがとう、リータちゃん・・・。」


 その時、メリッサにはリータがまるで希望の光のように見えた。そして、リータを見て、メリッサは決意する。


―絶対に、希望の光を絶やしては駄目!どうか、神様・・・どんな罰でも受けますから、私に力を貸してください。


 メリッサは初めて神に祈った。自分の頑なな心を溶かしてくれたあの男ではなく、男の敵である神にひたすら祈った。


 「絶対に、絶対に、希望を見失わないで。きっと、ジオサイドくんが助けてくれる。」


 メリッサは自分に言い聞かせるようにリータに言う。リータは不思議そうな顔でメリッサの顔を覗きこむ。


 「リータちゃんは、自分で思うより、ずっと、ずっと強い子よ。そう、私よりも・・・。」


 メリッサはリータの頭を優しく抱きかかえて、その髪に頬ずりする。

 その時、急にメリッサの全てのチャットが機能した。なぜそうなったのかわからなかった。男の気まぐれなのか、それとも・・・。

 メリッサは意を決し、自分の身の危険を覚悟でGM専用チャットで発言する。


 『先程、あの方から言伝がありました。これから、全ての子供たちを元の世界へ急いで戻しなさい。ここでの子供たちの記憶は全て消去すること。』


 GM達はその発言に動揺し、本当にそんなことをして大丈夫なのかとメリッサに尋ねてくる。


 『安心して。あの方がもっと効率のよい方法を考えてらっしゃるの。その新しい世界の準備に早く取り掛かりたいから、速やかに全ての子供たちのここの記憶を消して、元の世界へ処分しなさい。』


 メリッサは自分の発言の信用性を利用して、一か八かの賭けに出た。

 多少の反発はあったものの、あの方からの伝言ならば、と、GM達は渋々従った。


―もう後悔なんてないわ・・・。


 メリッサは全てをやり遂げたかのような達成感に満ちた表情で、石造りの冷たい壁に背中を預けた。


―私ひとりの命で子供たちが救えるのなら、それで構わない・・・。


 メリッサは煌々と燃える高炉を見つめながら、優しくリータの髪をその手で梳いた。


 その広場の片隅で、傍観する者が居ることにメリッサは全く気がついていなかった。

メリッサ決死の特攻。どうなるメリッサ?!


そしてなんか居る!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ