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43/reboot  作者: 煌洲 桜子
43/reboot
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43/ゲームオーバー

 藤枝総理は靖国神社参拝後、公用車に乗り込んだ。

 後部座席に乗り込み、両脇をSPに守られている。


 「これからの予定は?」


 前の席に座る秘書は耳に掛けたウェアラブルPC(装着型PC)で予定を確認する。耳から

左の視野上方まで一本のケーブルが繋がっている。視野に掛かるケーブルの先から網膜に直接データを照射するタイプのPCで、時には無線や電話にもなる。そして何よりケーブル型なので視界を邪魔しない仕組みになっている。

 秘書は音声で今後の予定確認をすると、秘書の網膜に今日の総理のスケジュールが映し出される。


 「これから総理官邸へもどり」


 そう秘書が言った瞬間、藤枝総理の時間が止まった。

 横のSP達は消え、藤枝総理の横にはドーランを塗ったような真っ白な肌の瓜二つの男が座っていた。藤枝総理は右足を上にして足を組み、男は左足を上にして足を組んでいる。


 「やはり靖国に入るにはまだ怖いか?」


 藤枝総理がそう言うと、男は鼻で笑った。


 「いや、ちょっとイタズラの過ぎた子にお仕置きをしてきたところだ。」


 そうか、と藤枝総理は男の言葉に相槌を打つ。

 男は藤枝総理の横で嬉しそうにしている。


 「それにしても、日本の信奉というものは実に面白いな。八百万信奉というのかな?」

 「ああ、それがどうした?」

 「あの信奉は実に素晴らしい。自分に有益になるものを崇めるだけでなく、恐ろしいものまで神として崇め奉る。動物で言えば、ヘビや猿。」

 「人間で言えば菅原道真公とか、か。」

 「そう、恐ろしい人間も、また神として崇められる。素晴らしい、本当に素晴らしい。」

 「・・・、お前は、俺に神になれと?」


 その藤枝総理の言葉に男は嬉しそうに邪な笑みを浮かべる。


 「俺達が、一緒に神のひとつになるのだ。そう、これから起こす戦争は、今なお富を独占している一部の輩から金を巻き上げ、日本中に滞り無く行き渡らせて日本人全員の欲望を喚起させることだけが目的じゃない。俺達にとってもっと重要なのは、日本だけではなく、世界を脅かし、我々が畏れ敬われる存在となって神の一つとなることだ。それに、戦争という『祭』には『神輿』が必要だ。あのヤマトやムサシよりも、もっともっと大きな、人が崇め畏れ敬うような『神輿』をな。」

 「武蔵(大和の姉妹艦)なんてマイナーな戦艦を知ってるとは恐れいったよ。」

 「そりゃそうさ。お前よりも何百年、何千年と生きているからな。俺達が神になれば、エクソシストも陰陽師も、誰も俺たちを邪魔することなどできない。」


 男と藤枝総理はまるで冗談を言い合うかのように、今後の日本の恐ろしい行く末を笑いながら語っている。男に至っては無邪気に遊びの計画を立てて喜んでいるようにも見える。 


 「しかし、例の女を靖国で始末すれば、靖国神社参拝反対派もしばらくは大人しくするかとおもったが、始末しそこねたのは、ちと痛いな。」


 男は少し悔しげにイトマキを始末しそこねたことに舌打ちした。


 「全てその女に話したらしいが大丈夫か?」


 藤枝総理は心配そうに聞くが、男は片方の口の口角を上げてニヤリと笑う。


 「どうせあいつが話したところで、信じる奴が居るわけがない。」

 「まぁそうだな。悪魔が居るなんてこのご時世でも証明も証拠もないのに、そんなことをわめき散らしたところで誰も信じるわけがないな。」


 男のその言葉に、藤枝総理は安堵のため息をつく。その横で、今度は男が眉間にしわをよせて考え込んでいる。 


 「それより、俺が気になっているのは汚いハエがそこら辺をうろうろしていることだ。」

 「ハエ?」


 男にそう言われて藤枝総理は周りを見渡すが、ハエらしきものはどこにも見当たらない。


 「日本にいるヴァチカンの連中を全部始末したのに、たかが死んだ、ただの普通の人間風情の一匹が、何かと邪魔をしてくるんだ。しかし、どうにもすばしっこくてな・・・。」

 「お前らしくもない。珍しいこともあるものだな。」


 藤枝総理は男を皮肉るが、男は眉間にシワを寄せたまま腕を組んでいる。


 「まぁ・・・邪魔をされたところで痛くも痒くもない。ただ目障りなだけだ。」


 男はそう言って背中全体を後部座席に預けてふんぞり返る。


 「それにしても、例の産婦人科医の男の始末は、ちとやりすぎじゃないか?」


 藤枝総理はその誠実そうな顔を崩し、男と同じような邪でいやらしい笑みを浮かべている。


 「ああ、あれか。ちょうどサッキュバス(女淫魔)が飯が食い足りないと言ってたんでな。あの産婦人科の男を紹介してやっただけさ。」

 「凄まじいな。サッキュバス達が精液を絞るだけ絞ってミイラになるほど干からびるまで弄んでたらしいじゃないか。次の日刑事たちが大変だったらしいぞ。床中精液だらけな上に生臭い匂いが充満してたんだと。まさに悪魔の所業だな。」


 藤枝総理は嬉しそうにクックックと喉を鳴らしながら笑っている。


 「そういえば、これからお前の言う戦争ともなれば、また力を蓄える為に生贄が必要なんじゃないのか?それに昔のあの生贄も、もう古くてそろそろ使い物にならんと思うんだが?」

 「そうだな・・・。PUCSのガキ共も多少は起こさないといかん分、お前に送るエネルギーの供給量も少し減ってしまうからな。あれば嬉しいに越したことはないな。」


 藤枝総理の言い分に、男はどちらでもいいとでも言いながら嬉しそうに舌なめずりをしている。


 「生贄はお前の娘か。」

 「俺の子じゃない。間男と妻の子だ。」

 「どうして生まれてきた時に俺に何も聞かなかった?」


 生贄の話になって、男に核心を突かれた藤枝総理はしばし黙っていた。


 「なんだろうな・・・信じたかったんだろう。自分を、他人を、人を・・・。」


 藤枝総理はそうぽつりと呟いた。

 あの日以来、藤枝総理の心は、人に対して完全に冷たく凍って何も感じなくなっていた。

 

 「むしろなぜお前は何も言わなかった?知ってたのだろう?」


 空っぽの言葉、空っぽの心で藤枝総理は男に聞いた。男はニヤリと笑って何も言わなかった。


 「今夜は満月だが、大丈夫か?」

 「ああ、もう大丈夫だ。邪魔するものは全て排除した。それじゃ、今夜は頼んだぞ。」


 男はそう言うと、藤枝総理の影の中に消えた。

 やがて時間は動き出し、両隣のSPが現れ、秘書は予定を告げる。


 「そうだ、済まないが、2mほどの紙を今日中に用意してくれないか?」

 「紙ですか?」

 「ああ、久しぶりに書道がしたくなってね。」


 藤枝総理に申し出に秘書は驚いていたが、早速紙の種類などを聞いて、今日中に直接公邸へ届ける手配を済ませた。


 そして、藤枝総理はSPに守られながら総理官邸へ到着した。

 影が藤枝総理の前を歩いている。すると、また藤枝総理の周りの時間が止まった。

 藤枝総理は周りを見渡し、それから自分の影を見下ろした。そこには、影の中から這い出ようとする男を、ダルマのような厳つい男が後ろから羽交い絞めにしている。


 「きっさま、伊東希のぞみだな!」

 「おお!俺の名前を覚えてくれてたとは嬉しいじゃねぇか。」


 藤枝総理が見守る中、二人の男は藤枝総理の影の中でもみ合っていた。


 「離せ、離さんか、このクソ汚いハエめ!」

 「汚いハエとはなんだ!そっくりそのままテメーにお返ししてやらぁ!人のこと刺し殺しやがった挙句に真木子にまで手を出しやがって!日本の刑事を舐めるなよ!」


 男は華奢だが、魔物としては相当の力をもっているはずである。しかしなぜ、この厳つい伊東というダルマ男に苦戦しているのか、藤枝総理には分からなかった。


 「まさか、貴様・・・。」


 男の言葉に、藤枝総理は目を凝らしてよく見てみると、伊東という男の胸ポケットが輝いているのが見えた。伊東は男と藤枝総理がその事に気が付き、嬉しそうにニヤリと笑ってみせた。


 「刑事手帳でもOKみてぇだな。なんせ中身はヴァチカン公認の魔法陣だぜ。ゲームオーバーだ。さぁ、俺と一緒に地獄で仲良く楽しもうや。」


 伊東がそう言うと、光は更に輝きを増した。そしてそれに反比例するように、男の動きが弱々しくなっている。


 「やめろっ。早く、早く、こいつをっ・・・。」

 「安心しろ。すぐに戻してやる。」


 藤枝総理が見下ろしながら事務的に言うと、男は一瞬安堵して油断したせいか、そのまま伊東という男と共に羽交い締めにされたまま影の中に沈んでいった。

 やがて藤枝総理の周りの時間が戻り、藤枝総理はスーツを正しながら官邸へ入った。



 そして、ベルセポネオンラインのタルタロス50階で異変が起きた。

 玉座に座っている女が、急に瞬きを始めた。

 女は玉座から自分の意志で立ち上がり、裸足のまま、ゆっくりと階段を降り始て目的地へ向かった。

さらば、伊東希刑事!の巻

しかしなぜヴァチカンの人たちは日本にやって来なかったんでしょうね?というか来れなかったんでしょうね?


・戦艦武蔵について

第二次世界大戦中に、広島呉で造られた大和の姉妹艦として、長崎で密かに造られていたのが武蔵という戦艦だそうです。

参考は吉村昭の「戦艦武蔵」。前半はプロジェ◯クトXっぽくて激アツです。いかにして密かにあんなでかい戦艦を造船したのか、どうやって長崎のあの狭い湾から出航させたのか、めっちゃ面白いです。ただ後半は鬱展開で思わずげっそりします。


・八百万信奉

仏教が入ってくる前から、日本ではいろいろなものを崇め奉る信奉があったそうです。自分とって有益なものから、恐ろしいものまで、幅広く神として崇めていたそうです。動物でいうとヘビ神様や猿神様、人間で言うと菅原道真公などですね。

ちなみにメリークリスマスは、もうある意味神格化というよりはイベント化していますが・・・。

そういえばどこかのお坊様がサンタ供養なるものをやってました。

http://www.youtube.com/watch?v=3eOOv86PB70


・スカウターっぽいPCについて

今現在、本当にスカウターっぽいPCがあって、主に工業用で組立工の人が使ってるらしいです。

相手の戦闘力は計れませんが、網膜に直接情報を照射して、組み立て方の手順を見えるようにしているそうです。

エアスカウターで検索するといろいろ出てくると思います。

ただ個人的には網膜に直接・・・ってのが怖いです。

あと最近はまだ試作段階ですがグーグルグラスもありますね。

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