ブロンズゴーレム
俺は市場へ向かい、タルタロスの鍵を売買している個人露天へ行った。しかし肝心のタルタロス1階の鍵が売ってなかった。
俺は仕方なく、以前鍵を見つけたヌルい狩場から、様々な狩場をさ迷いながらタルタロス1階の鍵を探した。
全体チャットでもタルタロス1階の鍵を高値で買いますと、買いのチャットを出したものの、反応がなかった。
俺は再び寝る間も惜しむかのように血眼になって剣を振るい、鍵を探す。ぜいぜいと息を切らし、疲れていてもそれでもなお、あのボスに会いたい一心で重い剣を振り回す。
大声で叫び、わめきながらMOBを倒す。
ー待っててくれ!
そして、ようやく運良くタルタロス1階の鍵を手に入れた。俺は鍵を手に入れて嬉しくて嬉しくてしょうがなかった。これでようやくブロンズゴーレムに会えると嬉しくてしかたがなかった俺はボロボロのまま、体力のない状態で、そのままタルタロスへ向かった。
タルタロス1階は夜のせいか、依然と比べてひどく薄気味悪く感じた。それでも俺は重い剣を背負って壁に時々体を預けながらブロンズゴーレムを探す。
すると、どこからか灯りが点っているのが見えた。おそらく1階を探索しているパーティーだろう。灯りの方へ近づいていくと、だんだんと騒がしい声が聞こえてきた。
「足を抑えろ!」
「動きを止めて一斉にやるぞ!」
俺は思わずぞっとした。俺がずっと会いたかったブロンズゴーレムが殺されてしまう!
俺は声のする方へ力を振り絞って走った。
「おい、お前ら!やめろぉー!」
俺は灯りを灯しながら狩りをするパーティーの背中に大声で呼びかけた。
すると、パーティーの面子がこちらを振り返った。
そして、そのパーティーの隙間から何かが見えた。
「・・・カニ?」
俺は思わずその場で力が抜けて跪いた。パーティーの面子はお構いなしに巨大ガニを倒していた。
「なんだよお前、俺達の狩りの邪魔しやがって!」
巨大なカニを倒した後に、パーティーの面々が狩りの邪魔をされたことに怒って俺のほうへやってきた。
「さっきのは・・・?」
「あれ?アイアンクラブ(鉄の蟹)だぜ。ここのボスじゃん。」
「アイアンクラブ?ここのボスってブロンズゴーレムじゃないの?」
「ブロンズゴーレム?聞いたことねーよ。なぁ。」
「なんだよそれ?あんた頭がおかしいんじゃねーの?」
俺は聞いたこともないボスの名前に驚き、ボスを倒したパーティーは俺のことを笑っている。パーティーの面々は狩りの邪魔をされた鬱憤をここぞとばかりに言葉でなじり、発散していく。
俺はたまらなくなってその場にうずくまって耳を塞いだ。それでも嘲笑は収まることを知らない。
やがてパーティーはようやく気が収まったのか、震えて怯える俺を置いてどこかへ行ってしまった。
俺は真っ暗闇に取り残された。
もうあのブロンズゴーレムには会えない・・・。
「どうして、どうして?なんでだよ!どうしてだよ!」
俺はとにかくブロンズゴーレムに会いたくて仕方なくて必死で狩っていたのに、あの時見たブロンズゴーレムは幻だったとでもいうのだろうか?
自分の心をひどく踏みにじられた上に、会いたかったものにもう会えない悲しみで、俺は頭をかきむしりながら壁に体を預けて泣き崩れた。心がひどく苦しくて痛い。
「会いたい、会いたいよ・・・。」
嗚咽を漏らし、激しくむせび泣いたあと、ふいに気持ちが軽くなった。
「あれ・・・、なんでボス倒すのにこんなに必死になってるんだろう?」
俺は今まで泣いていたのが嘘のように何も感じなくなった。
「うわー、俺めっちゃはずい。何勘違いしてたんだろう。」
俺は苦笑いしながら涙を拭いてアジトへ戻った。




