表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/reboot  作者: 煌洲 桜子
43/reboot
41/86

メリッサ

 あれからメリッサがボス狩りに行ってからというもの、なかなかメリッサに会う機会がなかった。

 俺はいつものように釣り池でぼんやりと水面を眺めてため息をつく。

 そして、釣りにも飽きて、アジトに戻ることにした。

 アジトでは以前同じギルドになったヘラクレスクラスの女アバターが苦しみもがきながら腹を抱えてうずくまっている。どうやら俺たちと同じ拒否反応に悩まされているようだ。

 あの時の痛みを思い出すだけで背筋がゾッとする。俺は話すのも辛いだろうと思い、あえて女アバターには声を掛けず、アジトの地下へと向かった。


 アジトの地下を見渡していると、どこからか微かに声が聞こえてきた。声のもとを頼りに向かうと、部屋の仕切りの奥で、メリッサが薄暗い部屋の隅に向かって誰かと話しているようだった。

 メリッサの表情がひどく険しく感じる。まるで何か文句か嫌がらせを受けているような感じがした。

 そしてその時、メリッサはおもむろに自分の両手を自分の首へあてがって締めつけるような動作をした。


―誰かに操られてるのか?


 俺はこのままメリッサが絞殺されてしまってはまずいと思い、仕切りの影から慌てて駆け寄り、メリッサを壁に押し付けてその首を絞める手を離そうとした。思っていたよりメリッサの手の力が強く、俺はなんとか全力でメリッサの手首を掴んで壁に押し付けた。

 ようやくメリッサの手が首から離れて安堵したあと、掴んだ手首から力が抜けて震えだしていた。


 「お、お願い、助けて・・・。」


 メリッサはまるで俺に命乞いをするように真っ青な顔で唇を震わせながら俺を見上げていた。メリッサの頬を涙が伝っている。

 俺はすぐにメリッサの手首を離すと、メリッサはその場に崩れ落ちて体を丸めながら激しく呼吸を繰り返している。


 「ご、ごめん、大丈夫?」


 呼吸の苦しそうなメリッサの背中をさすろうと手を伸ばした時、メリッサはひどく怖い表情で俺の手を払いのけた。そしてまた激しく呼吸を繰り返す。

 俺はメリッサの側で困惑しながら、メリッサが落ち着くまで見守るしかなかった。

 やがて、メリッサの呼吸が落ち着き始めた。


 「あ・・・ジオサイドくん・・・。」


 ようやくメリッサは側に居るのが俺だと気づいたようで、いつもの穏やかな笑みを浮かべながら起き上がった。しかし、その声は酷く弱々しかった。


 「メリッサ、大丈夫?何があったの?」


 俺がメリッサの肩に触れようとした時、今度は怯えるようにして俺の手を振り払った。


 「はっ・・・。ごめんなさい・・・。私は大丈夫だから・・・しばらく・・・ひとりにさせて・・・。」


 こんなにも怯えて息も絶え絶えに苦しそうにしているメリッサのことが心配で側に居たかったが、メリッサに断られて後ろ髪を惹かれるような思いで俺はその場を去ることにした。


 メリッサがあんなに酷く怯えて泣いていた。何があったのか聞きたかったけど、きっとメリッサのことだから、俺やみんなに心配かけないよう話さないだろうと思った。


 「そうだよな。心配かけたくないもんな・・・。」


 そう呟いた時、俺の脳裏にタルタロス1階で遭ったブロンズゴーレムがなぜか思い浮かんだ。

 メリッサに倒されて消える間に、あのボスの目が俺に向かって優しく微笑んでいたような気がした。


 俺はメリッサが落ち着く間に、もう一度タルタロス1階へ行こうと決意した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ