水面
この頃俺はどうしてだか、あまり積極的に狩りに行かず、この池で釣りをしている。
特に大したアイテムが出る訳じゃないけど、何もしないよりはいいような気がしていた。
それに、なぜだか日に日にこの釣りの池も少しずつ人が増えて皆談笑したりしていた。
相変わらずリータは積極的に狩りをしてるみたいで、ちょこちょこ誘われることがあるのだが、なぜかどうしても気が乗らなくて嘘をついて誘いを断ることが多くなった。
ふくれっ面をするリータの姿が頭の中に浮かんできて俺は思わずひとりでニヤニヤしてしまった。
たぶん、俺はLv上げにちょっと疲れただけなんだと思う。時々狩りに飽きたら、こうして気分転換にのんびり狩りをするのも悪くない、俺はそう思えた。
水面に垂らした釣竿はぴくりともしない。
「んー!まったりするのも悪くないなー。」
俺は背伸びしながら大あくびをした。
一方、ある町の宿屋に再び黒い影達が集まっていた。
皆一様に苛立っている。
「なぜ皆、積極的に狩りをしないんだ!」
影達は日に日に狩りをする者が少なくなって来ていることを気にして苛立っている。
細い影もそうだった。一番狩りを好むはずの少年が最近狩りにあまり出ていない。これがただひとりだけで一過性のものであればいいが、数が増えてくると話は違ってくる。
「『外』で何か起きてるんだ。あの雷のせいでおかしくなったんじゃないのか?」
「しかし雷を見たのはひとりだけで、俺のギルドでは見た奴はいない。」
「俺のところもだ。」
影は口々に雷が関係しているか否かで騒がしかった。
「現在、雷を見たのは私のギルド員ひとりだけです。これが要因とは考えられません。それに、この事態はすでにあの方に報告しております。」
細い影の言葉に一同の背筋が伸びる。
「あの方は何とおっしゃっておりましたか?」
「あいつらが狩りしないと、俺たちの世界が持たなくなるぞ!」
他の影たちが必死で細い影に問いかける。
「皆さん落ち着いてください。あの方は、『特に問題はない。』とおっしゃっておりました。きっとまた彼らが喜ぶような新しい狩場を新設する予定なのでしょう。」
影達はその言葉に一気に歓声を上げるが、くれぐれも内密にするよう細い影は釘を差す。
実際の所、細い影は『あの方』という者からまだ返事をもらっていない。
不測の事態の際は必ずすぐに返事があるはずだが、『あの方』はこの事態をあらかじめ予測していたのか、あるいは『あの方』がそうさせているのか、細い影はひとり悩んでいた。
今はただ、この事態を黙って見ているか、あるいはもっと積極的に狩りに誘うか、それくらいしか細い影にはできなかった。
―どうして私達GMの言うとおりにならないの?!
細い影は苛立ちのあまり、思わず自分の親指の爪を噛んだ。




