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43/reboot  作者: 煌洲 桜子
43/reboot
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ザクロの実

 俺は不思議な夢から目を覚ました。


 「誰だろう、あの貧乳女と変なオッサン・・・。」


 そして、耳の奥に何だか今も生生しい自分の声が残っているような気がした。

 しかし、久しぶりにしっかり眠ったおかげか、気分も爽快で体調もすこぶるよかった。何よりラグが全くないのが嬉しい。

 俺は立ち上がって嬉しさのあまり剣を振り回した。

 その時、俺の居るアジトの地下の扉が開いた。逆行で顔は見えなくても姿で分かる。メリッサが来てくれたのだ。


 「メリッサ!ありがとう!」


 俺がそう呑気に剣を振り回しながら言っていると、メリッサは顔を真っ赤にして涙を浮かべていた。

 俺が思わず剣の振りをやめてメリッサの方へ向くと、メリッサは小走りで駆け寄り、俺の胸元へ飛び込んで来た。

 メリッサはもう俺を離すまいかとするように必死に俺に抱きついてくる。メリッサのとても柔らかなものが押し付けられて、俺は思わず少し腰を引いた。

 しかしメリッサはお構いなしにずっと俺を抱きしめる。メリッサの繊細で柔らかい胸が風船のように破裂しないか心配なほどだった。


 「よかった・・・。ジオサイドくん、ここに居てくれてよかった。」


 メリッサが泣いているのを初めて見た。強くて優しい憧れの人が、俺の為に泣いてくれる。そう思うと股間のダガーも落ち着きを取り戻し、俺はメリッサを柄にもなく、でも少し恥ずかしながら抱き寄せた。

 一瞬メリッサは身を固くしていたが、今度は優しく俺に身を委ねるように泣いていた。

 こうして一緒に抱き合っていると、メリッサの小柄さ、繊細な体つき、全体的に柔らかい体つきをしていることに改めて気付かされる。

 俺は繊細なガラス細工を扱うように、優しく丁寧にメリッサを抱きしめた。


 「俺こそありがとう・・・。メリッサ。」


 その言葉に、メリッサは抱きつきながら首を横に振る。


 「もっと私がちゃんと早くに気がついていればよかったのに・・・。ごめんなさい。」

 「謝る必要ないよ。メリッサがくれたザクロの実の粒のお陰ですごく体が軽いよ。」


 俺は謝るメリッサをなだめながらその長い髪を自分の指で梳く。細くてきれいで、なんとも言えないいい香りがする。

 このまま時間が止まってしまえばいいのに、と俺は思った。


 「ジオ―!」


 突如、リータが大声を上げて勢いよく地下の扉を開けた。すると、俺達の姿を見た瞬間、リータは慌てて顔を赤くして扉を閉めた。


 俺たちはふと気まずくなってお互いの腕をほどいた。

 名残惜しかったけど、いつかは、これが毎日自然にできるような、そんな穏やかな関係になりたいと願わずには居られなかった。さっきは思わず危ない感じになりそうだったけど、きっと純愛っていうのはこういうものなのかな?と、地に足がつかない様なふわふわした気持ちになっていた。


 「そ、それじゃ、私は・・・。」


 そう言ってメリッサは涙を拭いてその場を後にした。俺は扉が閉まるまで温かい気持ちでメリッサの小さな背中を見送った。

 メリッサが扉を閉めてしばらくして、リータが扉の隙間から顔を出して俺の方を汚そうに見つめていた。


 「うわー!いやらしー!せっかく雷に当って真っ黒焦げのジオを見に来たのに、あんなの見せられるなんて!きゃー!みんなに言いふらしちゃおー!」


 リータは大げさに騒いでみせた。


 「ちょ、あれは誤解だって!メリッサはギルド員として俺のことを心配してくれただけで」

「はいはいわかりましたー。」


 リータは俺の言い訳も聞かずに大きな音を立てて強く扉を閉めた。俺はその音に思わず身をすくめる。

 俺はどうにかリータの誤解を解こうと扉を開いた瞬間、足が何かにひっかかって大きな音を立てて転んだ。

 痛みをこらえながら起き上がると、扉の横にリータが屈んでいて、俺が扉を開けると同時に持っていた武器を使って俺の足をつまずかせたようだ。

 リータはニタニタと屈託のない笑顔で俺を見る。俺は半分怒り混じりにリータに向かって苦笑いした。


 「さ、元気になったら狩り行こ、狩り。」


 久しぶりにリータから狩りに誘われた。俺はびっくりして起き上がれずにいると、しょうがないなといいながら、リータが俺に手を貸してくれた。俺はリータの手を握って起き上がった。

 ふと俺はギルドメールやワールドチャットが気になって見てみた。すると、どこのギルド長も雷には気をつけるよう警告するワールドチャットを定期的に配信していた。

 あの雷はこの世界全体にとってとてもマズいことだったのだと思い、メリッサの涙の理由も含めて、俺は改めて背筋が凍る思いをした。


 「ああ、ギルドメール見てない?」


 真っ青な顔の俺をリータが覗き込んでいた。俺はギルドメールを確認する。

 そこにはメリッサがギルド員全員に向けて、雷の注意事項と、雷が鳴った際にはアジトに避難し、ギルド長に必ず連絡すること、と書かれていた。


 「それと、メリッサからザクロの実もらった?」


 そうメリッサに言われて、俺はふとアイテムを見た。そこにはいつの間にかザクロの実が入っていた。

 なんでも今回の雷騒動で、皆にザクロの実を渡せるよう、どこのギルド長たちも自前でギルド全員分のザクロの実を購入したり集めたりしているらしいとリータが言った。


 「なんでザクロの実?」

 「ザクロの実は雷を避ける効果があるみたいだよ。あ、MOBじゃないほうのね。」


 そういえば俺は眠る前にメリッサからザクロの実の粒を食べさせてもらったのを思い出した。


 「ザクロの実もあることだし、狩りいこう!狩り!」


 リータははしゃぎながら俺を促す。リータは自分の無邪気さに気がついているのだろうか。ゴルゴンクラスの女アバターは特に露出が多いのに、そんなの気にせずリータが飛び跳ね回るから、でかい胸がブルンブルン揺れてのを見るとこっちが恥ずかしくなってしまう。

 俺はなるだけ邪念を払おうとリータより先にアジトを出ることにした。


 そして狩場に到着し、パーティーを組みながら、先ほどのアジトの中とは違い、黙々と二人で狩りをしていた。

 そんな時、急にリータがパーティーチャットを始めた。


 『あのさ、あたし、あの時マユにヤキモチ妬いてたのかも。』


 ゴルゴンクラスは基本補助クラスなので、パーティーでは後衛になることが多い。そのせいで背中越しのリータの表情を見ることは出来ないが、寂しそうにしているのは伝わってくる。


 『あんなに「帰りたい、帰りたい」って言いたいくらい、帰りたいようないい家や家族なんだろうな・・・って、最近思うんだ。』


 アジトに居た時とはうってかわって、しんみりとリータが語る。


 『マユ・・・ちゃんと家に帰れたかな?』


 俺は目の前のMOBを黙々と倒しながらマユやペンデュラム、そしてまた最近姿を見ない奴らのことを思った。


 『ちゃんと、帰れてたらいいな。いや、きっとちゃんと帰ってるよ。』


 俺は、自分とリータを励ます様に言った。


 『ほら、みんなリアルで都合あるんだと思うしさ。』

 『そうだね・・・。』


 なぜかそれでもリータはやはり寂しそうにしている。


 『ねぇ、ジオはおうちに帰りたい?』


 リータはふいにそんな言葉を投げかけた。


 『うーん・・・、俺は心配かけたくないから帰りたくないなぁ。』


 自然とそんな言葉が俺の口から出た。


 『心配?誰に?』

 『え?誰にだろう?』

 

 そうリータに言われて、俺もとっさに誰が俺を心配しているのだろうと自分で言っておきながら改めて自分の言葉に疑問を感じた。

 リータも俺も、何やら訳が分からず、お互い顔を不思議そうに見ながら首をかしげた。


貧乳女と変なオッサンはエイプリルフールの時に仕込んだ、ジオサイドの夢に出てくる人物のことです。

この二人は何者なんでしょうね?

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