表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/reboot  作者: 煌洲 桜子
43/reboot
24/86

 私は腹違いの妹が憎くてしょうがなかった。

 私がこの家を継ぎ、この家に住むことになったのは、本妻が亡くなったのと、妾である母の子である私が男だからという理由だ。

 本家の連中は、体の弱い本妻が女の子しか産めなかったことを不服に思っていた。

 そしてとうとう本妻が亡くなったことで、男の子を生んだ妾である母が本家の連中に快く迎え入れられ、新しい本妻となった。

 それは私が12歳、元本妻の娘が7歳の頃だった。


 母子二人の質素な生活が一変した。日本建築の豪華な家に住み、規律と厳しい教育を受けた。

 一見豊かな生活だが、これからこの家を継がなければならない私は、未来の跡継ぎとしての教養や躾や重責で心が荒んでいた。

 そんな時、こんな豊かな家の中で誰からも厳しく躾けられず、のびのびと楽しく暮らしている腹違いの妹が憎くて憎くてしょうがなかった。

 私はストレスのはけ口に腹違いの妹を選んだ。

 ある時は家の立派な庭園にある池に突き落としてみたり、ある時は爆竹を埋めた砂場へ立たせて爆竹が鳴るのを驚いて足をじたばたさせながら泣き喚くを見たり、直接人から見えない部分を強くつねってアザにして痛めつけたりした。

 しかし、この腹違いの妹はそれでも私がしたことを誰にも言わず、嬉々として


 「おにいちゃん、おにいちゃん」


 と親しげに呼ぶ。

 この健やかな笑顔が更に憎くてしょうがなかった。

 泣いて叫んで、生きていてごめんなさいと言うまで傷めつけてやりたくてしょうがなかった。

 本妻となった私の母も、私が腹違いの妹をいじめているのを知ってはいたようだが、家政婦にも口止めし、母も知らん顔をしていた。


 ある昼下がり、母が琴の教室に出かけている時のことだった。

 私は勉強に疲れ、ここに来る前まで習っていた剣道の竹刀を取りに、庭園の奥にある日陰の土蔵へ向かった。

 すると、土蔵は開いており、中から声が聞こえた。土蔵の扉の隙間から中を見ると、土蔵の奥の小さな窓から光が差し込んでおり、その光の中で父と若い家政婦が睦み合っていた。

 私は興奮するより辟易していた。私は父をただの色情魔としか思えなかった。本妻が居る時も外に何人も妾を囲い、さらには若い家政婦とも通じている。

 私は気持ち悪くなって土蔵から離れ、部屋へ戻ろうとした。その時、池の側の飛び石に生えた苔に足を取られ、受け身をとれず倒れそうになった。

 その時、時間はスローモーションになり、私はじっくりじっくりと体が地面へ近づき始めた。

 目の前には真っ黒なスーツを着た男の足が見え、男の足の前に何か円に囲われた文字が書かれていた。その文字は私の目に、頭に強烈に焼き付いた。

 そして男は言う。


 「新月の夜に生贄を捧げよ。」


 そして私の意識は遠のいた。

 気がつけば、琴教室に居た母が私の側で泣きはらしていた。私は庭で足を滑らせて頭を打ち、脳震盪を起こして病院に運ばれていたようだった。念のため精密検査などうけたが、私は誰にも土蔵でのことや脳震盪を起こすまでの不思議な出来事を誰にも話さなかった。


 私はその後、1m四方の紙を購入し、あの時見た文字を書き写していった。正円を書き、その中にひたすら書き続けた。まったく読めない文字なのに、なぜか体が覚えているかのようだった。

 そして文字は完成した。その時点でこれが何か私にも薄々分かり、あとは新月の夜を待つだけだった。


 月の光のない、暗い新月の夜。皆が寝静まった頃を見計らい、眠る妹を抱きかかえて自分の部屋へ連れて行った。

 四方にロウソクを立て、大きな紙に書かれた円陣の中に妹をそっと置く。

 妹が目を擦りながら目覚めようとした瞬間、青い光が円陣と文字の中から差し込み、天井まで届いた。

 その青い光の円陣の中から、真っ白な肌に黒いスーツをまとった細身の男が眠そうな妹を抱きかかえながら現れた。


 「お前との魂の契約はこれで完了だ。生贄は契約代として頂いていく。」


 私は深く頷いた。


 「クックック。それにしても、『7つまでは神のうち』とはよく言ったものだ。」


 その男は狡猾な笑みを浮かべて妹を見ながらそう言うと、たちまち青い炎の柱に包まれた。

 その青い炎の隙間から、妹が目を見開いてこちらを見つめながら静かに涙を流しているのが見えた。

 炎は勢いを増し、その場にあったロウソクも、円陣を書いた紙も飲み込んで消えていった。

 私が呆然としていると、いつの間にか夜が明けていた。

 寝不足のはずなのに自然と目が冴えて気持ちの悪い思いをしながら居間へ向かおうとしたとき、何やら家の中が騒がしかった。

 皆が妹の部屋へ向かうので、私もそこへ行ってみた。部屋からは大人たちの泣き声が聞こえ、父が救急車を呼んでいる声が聞こえた。


―警察じゃなくて救急車?


 私は不思議に思いながら部屋を覗くと、眠っているような妹がいた。ただ顔は青白かった。


 古参の年寄りの家政婦は泣きながら方言まじりに言っていた。


 「『七つまでは神のうち』とはいいますが、どうしてうちのお嬢さんを神様のところへ返さねばならんのですか?」


 その言葉を聞いて、あの夜聞いた言葉の意味を知った。

 そして、妹は神のところではなく、悪魔のところへ行ったのだと知っているのは私だけだった。

 

「七つまでは神のうち」というのは諸説いろいろあります。

自分で書いておいてあまり説明とかできないです・・・。ごめんなさい。

気になる方は「七つまでは〜 意味」で検索してください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ