神社
気付いたらそこにいた。
今も変わらず静かにたたずむ神社。
さほど大きくはないが、決して小さくも無い。
風情の感じる石畳に沿って木が植えられている。冬枯れした木々の下には、あんまり掃除はされていないらしい、落ち葉がたくさんそのままになっている。
時折風邪が吹けば、辛うじて木についている枯れ葉がふわりと宙を舞い、下に溜まった落ち葉はかさかさ、と音を立てて踊る。
しんと静まり返っているためその音がやけに耳に響いた。
ぼんやりと、まるで夢の中のように、ふわふわとした気持ちでその神社を見つめていた。
どれだけ見つめていたかわからない。
そうしているだけで何となく心が落ち着いていく。
そしてゆっくりと昔の事を思い出した。
ここは、オレが昔よく遊んでいた神社だった。
近所に住んでいるワタルと暗くなるまで遊んでいた。
鬼ごっこや、だるまさんが転んだとか、かくれんぼとか。
かくれんぼでは最後の一人が見つからず、苦労したっけ。
「………え?待て。遊んでいたのは…ワタルと二人で、だよな…?」
思い出していた回想の中の自分達と、今覚えている記憶が違ってオレは頭を抱えた。
覚えていないはずなのに、オレはなぜかワタルのほかにもう一人いたと知っている。
この神社を前に、自分が覚えている記憶は間違っていると心が告げているのだ。
神社を見上げる。周りを見渡す。しかし、そこにいたはずのもう一人がどうしても思い出せない。
自分達が遊んでいる光景は思い出せるのに。
記憶とこころが食い違っていて気持ち悪い。
オレが強引に思い出そうとしたところで、
ぐー・・・
「………………」
腹がなった。
「………空気読めっオレ!!!」
誰も聞いてないとわかっているのに頬が厚くなるのを感じた。
どうしてオレはこうなんだ。
何か、考えているのも馬鹿らしくなった。
そういえば、オレは学校が終わってから、まだなにも食べていなかったことを思い出す。
時刻は二時を回っていた。
どうりでおなかが減っているはずだ。
「とりあえず…ここは保留だな。明日は日曜だし…改めてまたもっかい来てみるか」
ワタルにも聞いてみようかなと思ったオレは、ようやくその神社をあとにした。
その夜、オレはワタルに電話していた。
「おーいワタルー?オレオレー」
『その声は…いや、オレオレって誰だよ!詐欺か!?オレはまだそんなじーさんじゃ…』
「その声はって…気付いてんだろ、無理に演技すんなよ」
『うわーけちー。ノってくれたっていーじゃん』
「どやって乗るんだよ…」
オレが溜息をついたところで、ワタルは何の用事か聞いてくる。
「ああ…、昔の話なんだけどさ、神社で遊んでたのって覚えてるか?」
単刀直入に聞いてみよう。何の脈絡もないが、そこには突っ込まずに、電話の向こうで唸る声が聞こえてくる。
思い出しているらしい。
十数秒ほど後、ワタルが思い出したように、『ああ!』と声を上げる。
『そーいや神社で走り回って遊んだよなー。オレらちっせー頃ここら辺に公園なかったから…』
因みに今は歩いて五分ほどのところに小さな公園が出来た。
近くにマンションが建ったため、それに付随して作られたのだ。
「オレと、もう一人いたよな?…誰だっけ?」
本題を聞いてみる。
『え?もう一人…?…………』
「覚えてるか…?神社の近く通ったときふと思い出してどうしてるかなーって…」
『うーん、いたようないなかったような…どっちにせよオレ名前知らねーや…』
ワタルはいまいち覚えていないらしい。曖昧な答えが返って来る。
さほど期待してはいなかったがやっぱり誰なのか分らず仕舞いか。
「いいや、ありがとう」
そういって、電話を切る。
「まー…どっちにしろ明日行って見るか…」
テスト勉強のことも忘れてオレはベッドに入った。