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吹奏楽

今日は土曜日だ。星信学園は私学で土曜日も午前だけであるが授業がある。


楽譜の事をある人物に聞こうと思っているオレにとっちゃ良いタイミングだ。




放課後。

オレはワタルと分かれて吹奏楽部が使っている音楽室へ向かった。



音楽室は既に吹奏楽部の生徒がいるらしく、廊下に音が響いている。

やかましすぎないその音を聞きながら、音楽室のドアを開けた。



「あれ?ショウ?どうかしたー?」

透き通るようなアルトの声。その人物は小首を傾げながらオレの方をみる。少々長めの髪もはらはらとすべる。


声やその容貌から男にも女にも見えるそいつはれっきとした男だ。

しかも、


「もしかして、僕に会いに来てくれたの?いやー僕の美貌とカリスマも罪だねぇ、申し訳ないけど僕は今とても忙しい―……」


かなりの変態である。



確かに、見た目は中性的ではあるがハーフであるが故に金髪碧眼で整った顔立ちはモデル並である。しかし残念なことに身長は日本人の血が濃く現れたのかあまり高くない。オレより5㎝は低いだろう。

多少変態であるが、身長がもっとあれば女子達が黙っていなかっただろうに。

身長が低く女子の中に混ざっても違和感がないため、女子達には子供というか妹というか、そういう可愛がられている節はある。変態なのに。美形は強いのか畜生。

言ってしまえば、こいつほど美形ではないがこいつよりもかなり身長の高いワタルに女子達は興味があるようだった。


それを知ってか知らずか、同じ吹奏楽の同級生や先輩、後輩までもがまたやってるよーとくすくす笑い出した。



コイツの名前は森蓮(もり れん)

本当はウォーレンと言うらしいが長いしややこしいしオレはレンと呼んでいたら気付いたら定着していた。最初は勿論少しは申し訳ないと思っていたが、コイツは前から変態だし(因みに最初は我慢していた)、気にしていない風だった。

それよりも気に入っている、と言っていた。


「でも君は僕にとっても特別だ。其処に這いつくばって懇願するなら考えてあげなくもないけれど?」

見下すように目を細めて口端を僅かに持ち上げる。ムカツク笑みだが完璧なほど綺麗な笑みだ。

しかし、そんなこと誰がするか、というか。


「うげふっ!!」

ちょームカツク。


「レーン?お前ぜんっぜん変わんねーなあ?マジで」

「いっいだだだだだだだだぁっ!!」

オレはとりあえずレンの座るイスを蹴っ飛ばしてレンをそこから落とすとぎゅうぎゅう踏みつけてやった。

周りはこちらをちらちら見ながらもくすくすと笑っていた。

これはいつもどおりの挨拶だった。




「今日も一段と…容赦ないな…ショウ。親友に向かって…」

「ああ、ただの変態の知人にそう優しく出来るほどオレは素晴らしい人間じゃないからな。ただの知人に。」

「………」


オレたちは今音楽室の端っこにいる。

吹奏楽の練習の邪魔をしないようにと思ってのことだが、部員達はこちらをちらちらと伺っている。

何だかんだいって変態であるがレンは慕われているようだ。


「まあ、親友がわざわざ来てくれたんだ。跪いて靴をなめるなら聞いてやっても…」

「くだんねーことばっか言ってっと潰すぞ」

「………」

オレはとりあえずそういって最大級の笑みをレンに向けた。

レンが青くなって静かになったのを確認して、オレはカバンの中から楽譜を取り出した。


「ん…何?楽譜?」

楽譜を受け取ったレンはまじまじと見る。


楽譜は三枚。右上をクリップでとめてある。

それをぱらぱらとめくって一通りレンは目を通すと、これは?と尋ねてきた。


「昨日廊下で拾ったんだよ。どんな曲かちょっと気になってな」

「僕に弾けってこと?は~頼れる人が僕しかいないんだね、可愛そうに。仕方ないなぁ…親友の頼みだし弾いてあげ…」

ごん。

鈍い音が音楽室に響いた。

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