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楽譜


校内にはまだ明かりがついている教室があった。

おそらく、勉強をしている生徒達がいるのだろう。

時刻はもう、六時になろうとしていた。


「すげーな…」

かつんかつん、と足音がやけに反響するくらい静かな廊下にオレの独り言が響く。

少し覗き込んでみれば、案の定数人の生徒が固まって勉強をしていた。





「あ、あった。あった」

オレのノートはやっぱり教室に置き忘れていたらしい。

ばっちり机の中にあった。数冊のノートと、一応置き勉していた教科書もカバンにいれる。


教室は誰もいなかったが、明かりがついていた。

日直が消し忘れたのだろう。オレは教室の電気をしっかりと消して廊下に出た。


はやくワタルのところに行こう。と駆け出したときだった。




ぽろん…。




「ん?」




ぽろん ぽろろろん…。





「………」

どこからか、ピアノの音が聞こえた。

教室に来るときは気付かなかった。寧ろ、何の音もしなかったと思う。

というか、結構はっきりと聞こえている。気付かないはずがないくらいに。

周りを見回すと、他に電気のついている教室はない。当然誰かが出てくる気配は無かった。

幻聴か?

そう思うにはあまりにもよく聞こえすぎる。


では、音楽系のどこかの部活がピアノを弾いているのだろうか?と思ったが、直ぐに否定した。この校舎には音楽室は無いはずだ。

ピアノは大きいし、しかも音もよく響く。よって、教室などの勉強する校舎とは別に、ピアノが置いてある音楽室は主に部活で使う教室を集めた特別棟なる校舎にある。

そこには、音楽室の他に美術室や書道室、和室、花道室など様々な用途の教室が集められている。



そう考えて、少しからだが震えた。

オレはそういう類は信じない派であった。しかしいざ直面してみると、なるほど…悪寒が走らないとはいえない。

自分で自分の身体を抱く。




ぽろろん ぽろん…。




そんなオレを嘲笑うかのようにピアノの音は聞こえてくる。


しかし、落ち着いてよく聞いてみれば、ピアノのメロディーはとても清らかで優しいものだった。

俺が恐怖を抱いた理由はピアノの音なのに、気付けばその恐怖はこのピアノの音によってなくなっていた。


すると、残るのは好奇心だ。このピアノの音はなんなのか。どこから聞こえてきて、誰が弾いているのか。

ワタルにはあとでどうともいいわけが出来る。

この季節多少冷えるが仕方ない。ワタルには耐えて貰おう。

オレもワタルに付き合ったんだから、ワタルもオレに付き合ってくれてもいいんじゃないか。





「……ん、あれ?おかしいな…」

ピアノの音を追って、廊下の端まで来て、そして一階上がる。

そしてまた廊下をかける。

行けども行けどもピアノの音源に辿り着かない。

キョロキョロと辺りを見回す。やっぱり誰もいなかった。ピアノの音だけが聞こえて、他はしんと静まり返っている。


「一体…どこで…」

「おーい!ショーウ!!まだかー!?」

「…!!」

そのときだった。

ワタルの声が聞こえた。ワタルは待っているのが飽きてしまったようだ。

確かに校舎に入ってもう20分は経つ。普通は10分もかからないだろう。

オレは少し息をついて仕方なくピアノの音を追いかけるのを断念した。


廊下の窓を開けて下を見る。

するとワタルがオレを見つけて手を振ってきた。


「ごめん。今行く」

そういうとワタルは無邪気に笑って早くーと急かしてくる。


窓を閉め、くるりと背を向け歩き出したところで、




カサリ。




「ん?」


何かが音をたてた。


振り返ってみてみると、白いものが落ちている。

見てみるとそれは楽譜だった。

オレは首を傾げながら拾い上げる。

どこからどう見ても楽譜だ。

枚数は三枚。右上がクリップでとめてある。

三枚ともタイトルや作家名は書かれていない。手書きの楽譜だ。

楽譜は綺麗な文字で書かれていたが、所々少々乱暴にぐしゃぐしゃと書き直されている。


オレはとりあえず楽譜をカバンにしまい、駆け足で昇降口に向かった。



その頃にはもう、ピアノの音は止んでいた。

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