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プロローグ
今の世の中、男の子だから虫が大丈夫って考えるのは偏見らしい。むしろ、男女平等に虫は苦手…?
夏真っ盛り、開け放した窓から蝉が入ってきて、壁にぶつかって気絶した。勿論、女子は大騒ぎ。蝉を囲んで周りに人だかりができた。
「ちょっと男子、何とかしなさいよ!」
「え~嫌だよ」
放っておけば死ぬよと言う男子達に、女子は草食系と言う言葉を投げつける。その時、蝉がバタバタし始めたので、私を含めてみんなヒッと息を飲んだ。
「一体何の騒ぎですか?」
その時、名も知らない上級生(学年ごとに上履きの先端の色が地味に違う)が現れた。ボサボサの髪に眼鏡をかけた真面目な印象の先輩。
「あぁ、可愛い夏の風物詩が校舎に迷い込んできたんですね、これは大変」
先輩は素手で蝉を掬い上げ、窓に向かって放り投げた。蝉は特有の鳴き声を上げて飛んでいく。蝉を見送る先輩の後ろ姿は、何故か私の記憶に刻み込まれた。