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無題

作者: 遥(はるか)奏汰(かなた)
掲載日:2026/08/31

愛する人と別れた後、思い出の残る六畳間で一人静かに過ごす主人公。連絡を拒むようにスマートフォンの通知を切り、相手の温もりや「またね」という言葉の残像に浸りながらも、消えない孤独の中でついに恋の終わりを静かに受け入れます

雨の音だけが響く六畳間、

冷めた紅茶に滲む薄桃色の口紅。

テーブルの上のスマートフォンは、

通知を切ったまま静かに眠っている。

画面を撫でる指先に、君の温もりを探す。

「またね」と言ったあの日の声が、

部屋の隅にほこりのように積もっていく。

鍵をかけた心の奥で、

失くした恋が静かに呼吸を止めた

濡れた傘から滴り落ちる雫が、

フロアマットに小さな染みを作る。

窓ガラスを伝う透明な筋は、

届かなかった言葉の行方のよう。

引き出しの奥に仕舞い込んだ、

お揃いの鍵輪が小さく鳴った。

あんなに温かかった季節も、

今では遠い幻のようで。

思い出すのは笑顔ばかりで、

ずるい人だと溜息をつく。

淹れ直した温かいお茶の湯気が、

ぼやけた視界をゆっくり包む。

止まない雨は記憶を洗い流し、

少しずつ夜の闇を深めていく。

明日の朝には晴れるだろうか。

新しい靴で、歩き出すために。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

冷めきった雨の日に、一つの恋をそっと手放す静かな時間を描きました。

傷が癒えるにはもう少し時間がかかるかもしれませんが、淹れ直したお茶の温もりのように、主人公が少しずつ前を向いて歩き出せるよう願いを込めています

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