あなたの婚約者と浮気なんてしてないんですが。
「ごきげんようライラ・ラピスロック様。
なぜ今日あなたが私に呼び出されたか、
お分かりになって?」
私は今日、学校の中庭でべリドット様に呼び出された。
呼び出したベリベット様の後ろにはたくさんの取り巻きがいて、
周りにも野次馬はたくさんいる。
何となく思い当たりはある。
だけど、サード様にはこないだちゃんとお断りはした。
大丈夫だろう。
「全く分かりませんわ」
「しらばっくれないで!
私の婚約者、サード様と浮気をしていること、知っているんですから!」
「浮気?なんの事ですか?」
「先々月も先月も今月、時の庭公園で会っていたでしょう!」
「ああ、たしかに会いましたね。でも会って挨拶した、それだけですよ」
私は確かな事実を言う。
だって本当にそうなのだ。
「あ、あなたがサード様に何度も微笑みかけていたという証言は、いくつもあったのよ!」
「それはですねーーー」
やっぱりそれか。
これは丁寧に説明しなければと思っていると、面倒な人が私の前に来た。
「待ってくれべリベット!ララを責めないでくれ!」
私の愛称を勝手に呼ばれた……
鳥肌がたつのを感じる。
「僕が悪いんだ!彼女の美しさに、惹かれてしまった……君という者がありながら……
僕らは互いに惹かれあってしまったんだ!」
「ちょっと待ってください。サード様。
私、愛称で呼ばないでくださいっていいましたよね?」
先日ちゃんとお断りしたのに。
愛称で勝手に呼ばないでって言ったのに。
この人には、何も伝わっていなかったんだ。
「ああ、照れているんだねララ」
「照れてなどいません。何度言っても聞いてくださらないんですね。
あなたに微笑みかけたのは、あなたの胸元で赤く輝くスピネルが、美しかったからです」
私は先日にもサード様にお伝えしたことを、もう一度、はっきりという。
周囲がざわつくのが聞こえてきた。
「ああそうか……ライラ様は''魔石姫''だもんな」
「魔石や宝石には目がない。さすがクリスティル家の血を引くものだ」
「え?じゃあサード様が勘違いして一方的に言い寄ったってこと?」
よし。
大勢の前でこの事実が伝われば、今度こそ大丈夫。
トドメの一言を私は発する。
「それに、その場には私の従兄のクォルツ兄様も一緒にいたと思いますが」
「う、嘘だ!僕達は愛し合って……」
「愛し合っていません。」
サード様に伝わっていなかったとはいえ、勘違いするような行動をしたことは、
さすがに、謝らないといけないわよね。
私は2人の前で深々と頭を下げる。
「誤解をまねく行動をしてしまい、申し訳ございませんでした。
サード様。べリドット様」
その後の私はさすがにラピスラック家の当主……クォルツ兄様のお父様に怒られた。
私のお父様はと言うと、
「いくら宝石が美しくても、男の前では微笑んじゃダメだよ!いやでも〜気持ちはわかるけど!!
男って単純な生き物だし……いやでも赤いスピネルって綺麗なんだよなぁ」
と言ってるところを、お母様に見つかり私と一緒に怒られた。
数年後、結婚したサード様とべリドット様は離縁したと聞いた。
サード様が公爵夫人に一方的に言い寄り、犯罪行為未遂をしたからとの事だった。
私は今、公爵夫人の身で、大好きな魔石や宝石に囲まれて生きている。
そのうちの一つを手に取り、思わず言ってしまった。
「スピネルって、幸せな結婚って意味、あったんだけどな」
現在連載中の魔石狂いのサーシャの主人公サーシャの親戚の話です。
魔石狂いのサーシャを読んでなくても分かる話ではあります。




