プロローグ 女神からの贈り物 全話編集中
プロローグ 女神からの贈り物
真っ白な世界だった。
◇◇◇
「……ここは?」
◇◇◇
少女――黒澤百合は、ゆっくりと目を開いた。
◇◇◇
最後に覚えているのは交通事故。
◇◇◇
ブレーキ音。
◇◇◇
強い衝撃。
◇◇◇
そして意識が途切れた。
◇◇◇
「私……死んじゃったのかな」
◇◇◇
静かな声が白い空間へ消えていく。
◇◇◇
その時だった。
◇◇◇
「目が覚めたようですね」
◇◇◇
鈴の音のように澄んだ声が響く。
◇◇◇
百合が振り返る。
◇◇◇
そこには、一人の女性が立っていた。
◇◇◇
長い銀髪。
◇◇◇
透き通るような青い瞳。
◇◇◇
純白のドレスを纏い、神々しい光をまとっている。
◇◇◇
見惚れるほど美しい女性だった。
◇◇◇
「あなたは……?」
◇◇◇
女性は優しく微笑む。
◇◇◇
「私は創造女神エルシア」
◇◇◇
「あなたをここへ導いた者です」
◇◇◇
女神。
◇◇◇
その言葉だけで理解した。
◇◇◇
自分は命を落としたのだと。
◇◇◇
しかし、不思議と悲しみはなかった。
◇◇◇
エルシアは穏やかな声で続ける。
◇◇◇
「黒澤百合さん」
◇◇◇
「あなたには新しい人生を歩んでもらいます」
◇◇◇
「新しい人生……」
◇◇◇
「はい」
◇◇◇
「転生です」
◇◇◇
百合の心が少しだけ弾む。
◇◇◇
転生。
◇◇◇
まるで物語のような話だった。
◇◇◇
すると、エルシアは楽しそうに微笑む。
◇◇◇
「転生先は、あなたが最も愛した世界」
◇◇◇
「VRMMORPG『リリンズ・ゲート・オンライン』です」
◇◇◇
「えっ!?」
◇◇◇
百合は思わず大きな声を上げた。
◇◇◇
学生時代から何千時間も遊び続けた大好きなゲーム。
◇◇◇
サービス終了の日には、本気で泣いたほどだった。
◇◇◇
「でも」
◇◇◇
エルシアは人差し指を立てる。
◇◇◇
「あなたが向かうのはゲームの時代ではありません」
◇◇◇
「ゲームから五百年後の世界です」
◇◇◇
「五百年後……」
◇◇◇
百合は目を丸くした。
◇◇◇
五百年。
◇◇◇
街も。
◇◇◇
人も。
◇◇◇
歴史も。
◇◇◇
きっと大きく変わっている。
◇◇◇
それでも。
◇◇◇
胸の高鳴りは止まらなかった。
◇◇◇
「面白そうです!」
◇◇◇
その答えに。
◇◇◇
エルシアは嬉しそうに笑った。
◇◇◇
「やはり、あなたならそう言うと思いました」
◇◇◇
そして。
◇◇◇
「では、一つだけ願いを叶えましょう」
◇◇◇
「リリンズ・ゲート・オンラインの世界へ行くにあたって、一つだけチート能力を授けます」
◇◇◇
「何が欲しいですか?」
◇◇◇
百合は少しだけ考えた。
◇◇◇
最強の攻撃力。
◇◇◇
無限のお金。
◇◇◇
万能魔法。
◇◇◇
どれも魅力的だった。
◇◇◇
だが。
◇◇◇
「不老不死が欲しいです」
◇◇◇
迷いはなかった。
◇◇◇
「世界中を旅したいんです」
◇◇◇
「時間を気にせず、ずっと冒険したいので」
◇◇◇
エルシアは優しく頷く。
◇◇◇
「分かりました」
◇◇◇
「あなたに不老不死を授けます」
◇◇◇
柔らかな光が百合を包む。
◇◇◇
さらに。
◇◇◇
エルシアが両手を広げた。
◇◇◇
「それだけでは寂しいですね」
◇◇◇
「餞別として、約百種類のスキルをすべてLv10で授けましょう」
◇◇◇
「本当ですか!?」
◇◇◇
百合の顔が一気に明るくなる。
◇◇◇
光の粒が次々と身体へ吸い込まれていく。
◇◇◇
剣術。
◇◇◇
錬金術。
◇◇◇
魔法。
◇◇◇
鍛冶。
◇◇◇
料理。
◇◇◇
鑑定。
◇◇◇
気配察知。
◇◇◇
数え切れない知識と技術が身体へ流れ込んだ。
◇◇◇
そして。
◇◇◇
百合の身体が再び光に包まれる。
◇◇◇
「これは……?」
◇◇◇
黒髪がさらりと揺れる。
◇◇◇
身体つきが変わる。
◇◇◇
顔立ちも少しずつ変化していく。
◇◇◇
エルシアが一枚の鏡を差し出した。
◇◇◇
そこに映っていたのは。
◇◇◇
もう黒澤百合ではなかった。
◇◇◇
美しい黒髪の少女。
◇◇◇
透き通るような白い肌。
◇◇◇
凛とした瞳。
◇◇◇
エルシアは優しく告げる。
◇◇◇
「今日から、あなたは――」
◇◇◇
「リリス・ルクスヴィアです」
◇◇◇
リリスは鏡の中の自分へ微笑んだ。
◇◇◇
「よろしくね、リリス」
◇◇◇
エルシアも優しく微笑み返す。
◇◇◇
「どうか、あなたらしく自由に生きてください」
◇◇◇
「思う存分、この世界を楽しんできなさい」
◇◇◇
「はい!」
◇◇◇
リリスは大きく頷いた。
◇◇◇
その瞬間。
◇◇◇
眩い光が世界を包み込む。
◇◇◇
少女の第二の人生が。
◇◇◇
今、始まろうとしていた。




