誕生日にはホールケーキを半分ずつ
今日は私の誕生日。
祝ってくれる人もいなくて、でも自分をお祝いしたくて、美味しいと有名のお店でホールケーキを買った。
誕生日ケーキなので、キャンドルをくださいって聞かれて、一瞬考えたけど、嘘をつくのをやめた。
三十一歳の誕生日。
大きなキャンドルを三つ、小さなキャンドルを一つお願いした。
転ばないように、落とさないようにしながら、帰った。
アパート見えた時、私はほっとしたみたいで、注意散漫になった。
角から歩いてきた人にぶつかって、ケーキの箱を落してしまった。
ぐしゃって音がした。
「すみません!」
ぶつかってきた人が慌てて謝ってきた。
「ケーキですよね?本当、すみません」
「大丈夫ですから」
どうせ一人で食べるつもりだった。
どうせ、私の人生なんてこんなもの、
うまくいかない。
「あの、俺、ホールケーキあるんですけど、半分いりますか?」
「へ?」
「今日、誕生日で、自分一人なのに、ホールケーキ買ったんです。苺のショートケーキです。ドリトンのケーキです。お詫びに。半分でけち臭いですけど」
「今日誕生日なのですか?」
「はい」
「私もです!あの、どうせなら、一緒にお祝いしませんか?」
「へ?」
会ったばっかりの人。
だけど同じ誕生日だし、一人って言っていたし、一緒にお祝いしたかった。
「は、い」
私たちは近くのカジュアルなカフェに入った。
そして彼の買ったケーキをお店に預け、後で食べることにした。
同じ誕生日。
性別。
それしかお互いにわかっていない。
「……なんかおかしいですね」
「そうですね。確か。俺のこと、怖くないですか?」
「怖い?」
「だって、俺デブだし、暗いでしょ?」」
「うーん。痩せてはないですね。でも熊っぽくて可愛いです」
「か、可愛い」
その人は照れてしまった。
背が高くて、ずんぐりしている彼は、山田太郎という変わった名前だった。
偽名かと思ったのだけど、本名だった。
小さい時から弄られていたみたい。
そういう私の名前は鈴木霞。
普通の名前。あえていうなら、霞って名前が可愛すぎる。
私は霞っていうより、花子、そう。
その人、私は知らなかった人と誕生日をお祝いした。
それをきっかけに友達になって、付き合って、結婚した。
誕生日はいつも二人でホールケーキを半分にして食べる。
人から見たらオカシイかもしれないけど、私たちはそれが好きで、楽しい。
はっきりいって、子供はいらない。
うまく育てられるかわからないから。
友達のいない私たちは、小さい時から親に放置されていて、どうして人とコミュニケーションをとっていいかわからなかった。
学校でいじめられないように懸命に生きて、どうにか学校生活を終わらせ、就職した。
話す人はいるけど、誕生日を祝ったり、遊べるような友達はいない。
こんなんじゃ、親になれるわけない。
距離感がわからないから。
私たちはずっと二人だけで暮らす。
誕生日にはホールケーキを半分ずつ食べながら。




