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5分で読める恋愛小説

誕生日にはホールケーキを半分ずつ

作者: ありま氷炎
掲載日:2026/04/08



 今日は私の誕生日。

 祝ってくれる人もいなくて、でも自分をお祝いしたくて、美味しいと有名のお店でホールケーキを買った。

 誕生日ケーキなので、キャンドルをくださいって聞かれて、一瞬考えたけど、嘘をつくのをやめた。

 三十一歳の誕生日。


 大きなキャンドルを三つ、小さなキャンドルを一つお願いした。


 転ばないように、落とさないようにしながら、帰った。

 アパート見えた時、私はほっとしたみたいで、注意散漫になった。

 角から歩いてきた人にぶつかって、ケーキの箱を落してしまった。

 ぐしゃって音がした。


「すみません!」


 ぶつかってきた人が慌てて謝ってきた。

 

「ケーキですよね?本当、すみません」

「大丈夫ですから」


 どうせ一人で食べるつもりだった。

 どうせ、私の人生なんてこんなもの、

 うまくいかない。


「あの、俺、ホールケーキあるんですけど、半分いりますか?」

「へ?」

「今日、誕生日で、自分一人なのに、ホールケーキ買ったんです。苺のショートケーキです。ドリトンのケーキです。お詫びに。半分でけち臭いですけど」

「今日誕生日なのですか?」

「はい」

「私もです!あの、どうせなら、一緒にお祝いしませんか?」

「へ?」


 会ったばっかりの人。

 だけど同じ誕生日だし、一人って言っていたし、一緒にお祝いしたかった。


「は、い」


 私たちは近くのカジュアルなカフェに入った。

 そして彼の買ったケーキをお店に預け、後で食べることにした。


 同じ誕生日。

 性別。

 それしかお互いにわかっていない。


「……なんかおかしいですね」

「そうですね。確か。俺のこと、怖くないですか?」

「怖い?」

「だって、俺デブだし、暗いでしょ?」」

「うーん。痩せてはないですね。でも熊っぽくて可愛いです」

「か、可愛い」


 その人は照れてしまった。

 背が高くて、ずんぐりしている彼は、山田太郎という変わった名前だった。

 偽名かと思ったのだけど、本名だった。

 小さい時から弄られていたみたい。

 そういう私の名前は鈴木霞。

 普通の名前。あえていうなら、霞って名前が可愛すぎる。

 私は霞っていうより、花子、そう。

 

 その人、私は知らなかった人と誕生日をお祝いした。

 それをきっかけに友達になって、付き合って、結婚した。

 誕生日はいつも二人でホールケーキを半分にして食べる。

 人から見たらオカシイかもしれないけど、私たちはそれが好きで、楽しい。


 はっきりいって、子供はいらない。

 うまく育てられるかわからないから。

 友達のいない私たちは、小さい時から親に放置されていて、どうして人とコミュニケーションをとっていいかわからなかった。

学校でいじめられないように懸命に生きて、どうにか学校生活を終わらせ、就職した。

 話す人はいるけど、誕生日を祝ったり、遊べるような友達はいない。

 こんなんじゃ、親になれるわけない。

 距離感がわからないから。


 私たちはずっと二人だけで暮らす。

 誕生日にはホールケーキを半分ずつ食べながら。


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