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50年目の免許返納
優太が家に帰ると、母親が深刻な表情をしていた。
「どうしたの?」
「お祖父ちゃんが、車ぶつけちゃったの」
優太は自宅の敷地に停めてある車を見に行った。後ろのバンパーを少し凹ませていた。駐車の際に生け垣に当ててしまった様だ。
「え?でも、傷は大したことなくない?誰か巻き込まれたの?」
「そうじゃないから良かったんだけど。もう返納した方が良いんじゃないかって」
「この辺が潮時かもしれんな…」
そう呟いた祖父は、50年近く無事故だった。
「自分だけは大丈夫と…慢心していたのかもしれん」
それだけ言うと、祖父は家に入って行った。
『運転は、慣れた頃が危険です』
水野教官の言葉を思い出していた。
「慣れは、免許を取った初めばかりじゃないんだ…」
仮免許合格の嬉しさよりも、優太の心には、車を扱う責任の重さを感じていた。
スマートフォンに絵里からのメッセージが届いた。
[やったね優太君、合格おめでとう!いよいよ路上だね。その調子!]
メッセージを見て、優太は絵里に電話をした。
「絵里ちゃん、今から会えるかな…」




