免許を取る!
優太は本屋に出向き、運転免許取得に関する問題集や教本、自動車雑誌やDVDまで買い込んだ。
[道路交通法百選]の見出しの本が目に入る。
「これは…六法持ってるから良いや」
家に帰ると、沢山の本を持った優太を見た母親が驚いた。
「どうしたのそれ…」
「車のこと、俺何も知らないからさ。とりあえず、まずは車。その後は二輪の免許!」
そう言うと、優太は自分の部屋へ入って行った。
「えっと、『車間の保持』に、『巻き込み確認』に…」
[基礎から学べる運転]という本を真剣に読み込む優太。さらに、DVDも観ることに。再生すると、車が横滑りしている映像が流れてきた。
「こんなことまでやるのか…!?」
そこへ母親がお茶を持って入ってきた。
「あなた、何観てるのよ!?」
優太が観ているDVDのパッケージを母親が取り上げる。
「『基礎からの…ドリフト講座』!?こんなこと自動車教習所でやるわけ無いでしょ!」
「だって、本屋の人に『運転を基礎から学びたい』って言ったら、この本とこのDVDを出してきたんだよ…」
優太は買ってきた本の山を指さした。テレビ画面からは、タイヤから白煙を上げてドリフトしている車の映像が流れている。
「まずはアクセルワークで荷重をコントロールするところから…荷重移動を覚えましょう」
レーシングスーツを着ている、土井圭介というレーサーがホワイトボードで説明をしている。
「これは自動車教習所で習いません!」
母親はテレビのスイッチをオフにした。
「『ヒールアンドトゥ』とか、技術難しそうだけど、できるかな…」
翌日、優太の姿は自動車教習所にあった。正樹が同行してくれた。
「そっか、いよいよ優太も免許に挑戦か。でも、あんなに『免許なんか取らない』って言ってたのに。驚きだよ」
笑いながら正樹が優太の肩を叩いた。
「このまま拒否し続けるのも違うかなって思ってさ」
『入所手続きはこちらです』
職員が受付に優太を案内した。
一通りの手続きをして、数回分の予約を取った。
自動車教習所からの帰り道、優太は正樹を誘ってカフェに寄った。
「最近は自動車教習所もサービス業って事で優しいところが多いけど、ここはそこそこ厳しいと思う」
正樹が真剣な顔で話す。
「でも、車もバイクもさ、命を扱うんだもんな。厳しくてもおかしくないって。卒検を控えた今、尚更そう思うよ」
優太は絵里の言葉を思い出していた。
『慎重に、怖さを理解している人だからこそ、乗る資格があると私は思うんだ』
「まぁ、優太は運転のセンスありそうだけどな。俺で分かることがあれば聞いてくれよ。絵里ちゃんとドライブ行けると良いな」
正樹は笑って、テーブルの上にある伝票を取って立ち上がった。
「良いよ、付き合ってくれたから俺が…」
優太が正樹を引き止める。
「大丈夫大丈夫、俺からの入校祝いだ」




