突然の変更
翌日、優太のスマートフォンに絵里からのLINEが届いていた。
[昨日はありがとう。今度空手の試合、観に行きたいです。来週の土曜日空いてるかな。ツーリング行かない?]
「ツーリング!?」
昼に食堂で正樹と俊に、絵里からのLINEを伝えた。
「えーマジ!?羨ましいわぁ」
正樹が大声で立ち上がり、周りの視線が一気に集中した。
「二人でツーリングって!絵里ちゃんといきなり密着ですかぁ」
俊がニヤけて優太を茶化す。
「そんなんじゃねぇよ。俺免許持ってないしさ」
「だ・か・ら、二人乗りってことだろ」
正樹が指を立てる。
「え!無理無理無理。会ったばかりの女の子に無理だって」
「良いじゃんか。何かしらお前の事が気に入ったんだから。羨ましいよ俺は」
俊がニヤけている。
「まぁ、夏だしさ。海にでも行ってこいよ」
「お!新しい恋の始まりですかぁ?」
「お前らいい加減にしろ」
優太は笑いながらツッコミを入れた。
後日、絵里とのツーリングの待ち合わせは、絵里の自宅の最寄り駅だった。真夏で太陽が痛いくらいに射している。
優太は若干緊張しながら、絵里を待っている。スマートフォンを見ると、正樹と俊からそれぞれLINEが届いていた。
[気をつけて行ってこいよ!]
[結婚式には呼んでください]
「何言ってんだバカ」
緊張していた優太には、二人の気遣いが嬉しかった。
程なくして、低いエンジン音とともに、黒いバイクが優太の前で止まった。メッシュのジャケットに革のパンツを履いた女性がヘルメットを外した。絵里だった。
「お待たせ、この前は楽しかったよ!」
合コンの時に会った絵里は、白いブラウスにピンクのスカートという、清潔感のあるお洒落な女性という印象を抱いていた。
しかし、今優太の前にいる絵里は、アクティブさが前面に出た「カッコ良さ」を纏った女性だった。
「あの時、守ってくれてありがとう」
酔っ払いの一件だ。
「いや、こちらこそ…」
照れながら返した。絵里は優太の格好を見て表情が一瞬曇り、唇を噛み締めた。
「優太君、今日ツーリングやめて、違うところに遊びに行かない?優太君が決めて良いから」
「え?あ…そうだね。じゃあ、水族館でも行く?」
「良いね!じゃあ、ちょっと待ってて。私バイク置いてくるね」
絵里はエンジンをかけ、バイクを自宅に戻しに行った。20分ほどして、絵里が走ってきた。この前会ったときと同じような、清楚な格好だった。
二人は駅から電車に乗り、海辺に立つ水族館に行った。夏休み中とあって、カップルだけでなく、家族連れでも賑わっていた。デートの経験が少ない優太も、次第に緊張が解れてきた。
「あの魚、正樹みたいな顔だな」
「アハハ、悪いなぁ優太君」
水族館の中は広く、出たところで歩き疲れた。
「お腹空いたね」
絵里の一言で、レストランに入った。大皿に載せられたピザを頼み、二人で分け合うことにした。優太は絵里のことが少しずつ気になり始めていた。
ピザが届くまでの間、優太は気になっていた事を絵里に尋ねた。それは、予定を変更した理由だった。
絵里は少し考えたあと、静かに切り出した。
「私が事前に言わなかったからいけないの。本当にごめんなさい」




