命の任侠道!?
「あんちゃん。ワシはな、銭は二番目に大事なもんや思うとる」
運転しながら、竹田教官は話し始めた。
「なら、一番大事なのは何やと思う?」
「え、一番ですか…身体でしょうか」
信号で停車する。竹田教官が優太の目を見て、笑顔を浮かべる。
「そうや。身体…つまり、命や。金は掛けても、命掛けたらあかんぞ。ほな、交代しよか」
竹田教官と運転を交代した。路上のあらゆる障害物を「証拠」と見て、「推理」しながら走る。何かあるかもしれないと思う事で、余裕を持てる気がしていた。
「あんちゃん、空手やっとるのか」
優太は驚いて竹田教官を見た。なぜ分かったのだろうか。竹田教官は笑っている。
「わしも昔な…。拳ダコや」
優太の手の甲を指さした。
「空手は力を見せつけるもんやない。心を鍛え、自分や大事な誰かを守る。力いうもんは、そう使うもんやないか」
見かけの怖さより、語りの熱さに優太は惹かれていた。
「せやからな、ああいうもんがワシは大嫌いや」
後ろを指さす。優太はミラーを見ると、ミニバンが車間を詰めていた。明らかに煽り運転をされていた。
竹田教官がシートベルトを外し、窓を開けた。
「ゴルァ、車間とれボケェ!おのれも最初は教習車乗っとったろうが!!」
走行中の教習車から顔を出して怒鳴りつけている。
「追突したらどないすんじゃボケェ!他人の命脅かすんかいゴルァ!!」
ミニバンは急ブレーキをかけ、あっという間に教習車のミラーから消え去った。
「まぁ、あんなもんや。デカい車乗るとな、自分が強いと勘違いしよる奴がおる」
今の今まで怒鳴っていた人が、冷静に話しているギャップに驚いた。
「けどな、そんなの関係あらへん。自分も他者の命も守る。空手もそうやな。そういう心意気が必要や」
竹田教官は優太に笑みを浮かべて伝えた。
何とも熱い、スリリングな教習が終わった。
「あんちゃん、いよいよ卒検やな。免許取るのはゴールやない、スタートや。大事な事は、大体言うたつもりや。まぁ、頑張りや」
優太の方を二度叩き、竹田教官は車を降りて去っていった。
[絵里ちゃん、最後の技能教習終わったよ。いよいよ卒検!ここまで来たよ]
[送信]
受付の端末から卒業検定の予約を行い、教習所を出た。
「命を守る…か」
優太は自宅に帰ってから、これまで習ったことをノートにまとめていた。技術的な面だけでなく、本当に必要な心がけの数々。
絵里からメッセージが届いた。
[やったね!卒業目前。優太なら大丈夫!卒検はいつ?私応援しているから!]
優太は卒検の日時を添えたメッセージを送信した。待ち受け画面に戻ると、カフェで撮った絵里の笑顔に変わった。
そして、卒業検定当日の朝を迎えた。




