正樹の合格
「優太!」
振り返ると正樹が走ってきた。
「卒検、合格できたよ!」
息を切らして、興奮気味に話している。
「あとは、試験場で学科試験だ」
優太と正樹は拳を突き合わせた。
その日の夕方は、絵里といつものカフェで待ち合わせていた。
「おつかれさま、路上は疲れたでしょう」
「絵里ちゃんすごいなって思ったよ。路上って色々な危険が潜んでいるんだもん」
優太の正直な気持ちだった。
「それに、キャラ強い教官でさ。田中さんって知ってる?」
「アハハ、知ってるよ!中指をおでこに当ててるんだよね。『え〜』って」
絵里が同じように中指を当てて真似をしている。
「もうすぐ卒検だね、私、応援してるから!頑張れ優太!」
自宅に戻ってから、間もなく受けるであろう試験場での学科試験対策に向けて、勉強を始めていた。
クセのある問題が多く、意地悪な設問に苦戦した。
「うわぁマジか、これ正しくないの!?」
大学で学ぶ法学とは、また違う難しさがあった。頭をかきながら前を見る。優太の視線の先には、水族館で絵里と撮った写真のシールがあった。
翌日、卒検前最後の技能教習となった。99号車の指示が出た。
「こんな番号の車あるんだな…」
教官が近づいてきた。髪型はリーゼント、開襟シャツに光沢のある生地のスーツを着ている。目つきは鋭く、まるでVシネマに出てきそうな教官だ。
「ここ…自動車教習所だよなぁ…」
「よろしく!!竹田です!」
見かけは明らかに怖いが、勢いのある挨拶に、優太は少し緊張感がほぐれた。
「あんちゃん、今日が技能教習最後か」
「はい、よろしくお願いします」
「よっしゃ。ほな、行こか!」
竹田教官は静かに車を発進させた。




