リスク
絵里とは駅近くのカフェで待ち合わせをした。優太は祖父の件を絵里に話した。
「そうだったんだ…ショックだろうね」
「自損なのは幸い。でも、やっぱりリスクがあるんだなって…少しだけ怖くなったよ」
優太は唇を噛み締め、視線を落とした。絵里は優太を察し、優しく微笑んだ。
「ハンドルを握る以上、リスクは避けられない。それをお祖父さんはご存じだったんだね」
「どういうこと?」
「ずっと無事故の人でも、事故とは無縁じゃないんだよね。だから、返納を決めたんだと思う。運転も、返納も、どちらも責任なんだよ」
「以前、『怖さを理解している事が大事』って、絵里ちゃん言ってたね」
「私はそう思うよ。ここまで来たんだもの、頑張ろ」
絵里が、前に座る優太の手を握った。驚いて優太は絵里の顔を見た。
翌日、大学の学食で正樹と俊に昨夜の話をした。
「そっかぁ、免許返納かぁ」
「引き際って難しいよな。」
「俺、これからそういうリスクを背負うんだなって思ってさ」
優太は独り言のように呟いた。
「でもさ、気をつけるってことしかないよな」
正樹が頭の後ろで手を組んだ。
「まぁな、運転だけじゃないよ。人間はミスをするからさ。色々リスクがあることを承知しているって事が大事なんじゃね」
「俊、たまにはお前良いこと言うな」
「だろ〜、っておい!たまにはってどういう意味だ」
三人とも笑っていた。この二人は最高に良い友達だと、改めて優太は思った。




