免許なんていらない!
大学生の優太は、周りの友人たちが運転免許を取る中、一切関心を持たない。「あんな危険な物を扱いたくない」と一貫して拒否し続けている。そんな優太だったが、ある日友人との合コンが行なわれる。
「イヤだよ、危ないもん。なんであんなリスクあるもの乗らないといけないんだよ」
「就職するのにも、免許って最低条件よ」
20歳の大学生、優太は母から自動車運転免許を取るように勧められていた。
「煽り運転とかもあるしさ、怖いじゃん」
「あなたを煽る相手は、多分居ないと思うけど…」
優太は空手の有段者だった。
「それにさ、この国は車に厳しいよ。車検に保険に税金。保険は仕方ないけど、税金もガソリンも高いしさ。車持ったら罰ゲームだよ」
「理屈っぽいわねあなたは…」
「とにかく、俺はイヤだからね。チャリだって乗りたくないよ」
そう言って、優太は家を出て大学へ向かった。大学へは電車とバスを乗り継ぐ。
「優太、今度合コンあるんだけど空いてる?〇〇日」
「マジ!?空いてるよ!相手は?」
「〇〇女子大のテニスサークル」
「楽しみだな」
「じゃ決まり。また連絡するよ」
同じサークルの友人、正樹からの誘いだった。
優太は法学部の学生で、ボーリングサークルに所属していた。高校生まで空手一筋だった事もあり、ボーリングは興味本位で始めたのだった。
大学の講義が終わり、正樹が教室を飛び出ていった。
「正樹、一緒に帰ろうよ」
「悪りぃ、これから教習所なんだ」
正樹は申し訳なさそうに手を振って、走って行った。
「皆行くんだなぁ、教習所…」
大学の前に到着した自動車教習所の送迎車に、正樹や他の学生が乗り込んでいくのが見えた。
その晩、優太は自宅でニュースを見ていた。
[無謀運転による交通事故が後を絶ちません]
[運転操作が簡単になり過ぎているのではないでしょうか]
凄惨な交通事故の映像が画面に流れる。
「車なんて、乗らないに越したことはないな」
チャンネルを変えると、刑事ドラマになった。パトカーと犯人車のカーチェイスの場面だった。先回りしたもう一台のパトカーから刑事が降り、ショットガンを撃つ。犯人の車に命中し、横転、爆破された。
「やべぇ…犯人死んじゃったよ。起訴できねぇじゃん。くわばらくわばら」
法学部の学生らしい見方をしていた。
翌日登校すると、学校の入り口で自動車教習所が、入校の勧誘をしていた。優太は一瞥することもなく通り過ぎた。
その日の夕方、予定の合コンだった。正樹と俊、そして優太の三人が駅で待ち合わせた。
「可愛いと良いなぁ」
「〇〇女子大なら間違いないっしょ」
三人は予約した店に入った。イタリアンで、店の釜で焼いたピザが有名だった。
「よくこの店予約取れたな」
俊は感心していた。
優太が視線を落とすと、正樹の鞄から、自動車教習所の教本が見えていた。
「正樹、免許取るのって大変?」
優太が正樹の教本を手に取り、めくりながら聞いた。
「大変って言えば大変…かなぁ。坂道発進とかな」
「坂道発進?」
「俺、マニュアル車に乗りたいからさ。クラッチ操作出来ないと乗れないし」
「ふ~ん」
「優太は?免許取らないの?」
「俺は遠慮しとく。あんな危ないもん乗れないよ。自転車とか、電動キックボードとか、すげぇ走ってるしさ」
「確かにな、あれいきなり来るから怖いよな」
「おい、あの娘たちじゃないか」
俊が立ち上がった。




