005 魔術
「まじかぁ」
予想通りというかなんというか。
とにかく、【虚空記録層】の結果、どうやら僕らの学校は地下にあるようだった。
地中1000mとかいうふざけた深度に。
「え、創った人は何を考えてるの?バカなの?地震とか起きたら壊れるぞ??」
情報を見た感じ、鋼で作られているというだけで特に耐震設計はしていない。
しかも、どうやら学校設立を決めた少数でこの校舎は作られた様子。そこにさらにびっくり情報を追加するならば、この地下に建造された校舎はわずか1ヶ月で作られた様子。
どうしてそんなに短時間でここまでの校舎を作れたか?それは簡単――
「ていうか、やっぱりこの人たちは魔術のなりそこない...?を使えるんだね」
――建造メンバー全員が、神秘の力を使うことができるから。
まぁ、神秘の力といっても僕から見れば出来損ないなんだけど。
彼らが使うのは、イメージ力にすべてを任せた――いわゆる魔法。
僕が使うのは、すべて理論と術式で完璧に管理された――本物の魔術。
これらを比べると、魔術の方が燃費もいいし、威力の調整もできる。
だけど、魔法はイメージ力にすべて任せるだけあって理論のかけらもない。
故に、魔力の消費量が半端ない。あと、人間の深層意識というかそんな感じのサムシングのせいで無意識に威力制限がされてしまう。
その威力制限を取り払ったとしても、所詮は人間の想像力。
魔術はどれだけの魔力を使用してどれだけの威力にするかを限界なしに調節できるけど、魔法はそれができない。
そんな欠点があるからこそ、僕は魔術を使っている。
それに、理論に頼らず脳筋でやるのはなんか気に入らないからね。理論で魔術を構築するってかっこいいじゃん?
魔法陣とか自由に操れるんだよ。こんなロマン技術を使わないわけがない。まぁ、異世界には魔法こそ至高とかいう邪教もいたんだけどね。全部滅ぼしたけど。
さて、ここまでながながと魔術のすばらしさを語ったんだ。
いっちょ魔術を使って魔法なんていう技術使用者を上回ってあげようではないか。
ちょちょいのちょいと目標校舎に結界を付与し、度の魔術を使うか考える。
「最適な魔術は...まぁ、ここはあくまで並行世界なんだし破壊しても大丈夫かな」
別にここを破壊したって現世に影響があるわけではない。
自由に、破壊したってかまわんのだろう?
ふふっ、僕がこの世界に来てから初めての大規模魔術だ。
魔力量を込めれば、世界さえ滅ぼすことだって難しくない、そんな魔術。
それを今から僕は使う。
たのしみだなぁ、なんて。そんなことを考えながら、僕は自分の右手を頭上に掲げた。
――ゴロロロロロ
魔力を右手に集める。
その反動で雷が鳴りだしてしまったけど、そんなことは気にしない。
もっと、もっとだ。このあたりを僕の色に染めるイメージで、体内空間問わず、とにかく魔力を集める。
それから、数10秒。
「もう、いいかな」
荒れ狂う空気の奔流。鳴り響く雷の連鎖。
そのすべてを無視し、右手を地上に向ける。時々僕に雷が当たってるのは気にしない。
「さぁ、お披露目だ」
洒落たポーズをとりながら、右手の感触を確かめる。
周りに観客がいないのが残念でならないよ。
まぁ、もしこの場に一人でも生物がいたら何の抵抗もできずに消えてしまうんだろうけど。それでもオーディエンスがいるともっとテンションも上がるだろうに。
無い物ねだりはそこまでに。
集まった魔力をすべて、右こぶしを握ることで圧縮。
――その瞬間、ぴたりと、あたりが静かになった。
「一度、出力を間違えて星を消し飛ばしてしまったこの魔術――」
一度に膨大な魔力が僕に集まったための副作用。それによりテンションが上がりながらも、僕はその掌を開き――放った。
――《黒禍》
光の渦と呼ぶのでは生ぬるい。
人の言葉で表すことのできぬようなほどの閃光が上がり――次の瞬間、この世界から音が、光が、存在が消え去った。
「やりすぎたかも...」
頬をかきながら、僕はつぶやいた。
すでにあの魔術――【黒禍】を放ってから数分が立っている。
一応、本来の僕の目標こと校舎には結界を張っていたからいい物の。
あたりには今、荒野――ではなく宇宙が広がっていた。
もちろん、目を凝らせばぽつんと校舎一つが浮かんでいる。
「とっさに僕の周りに結界張っててよかったぁ...これ銀河一つ消え去ってない?」
技の発動時、「あ、やべ。やりすぎた」と思った僕は、即座に自分に空気がなくならないための結界を張っていた。
まぁ空気がなくなってもいきれることには変わりはないけれど、なんか空気なかったら頭痛くなるから嫌いなんだよね。こう、二日酔いを10日連続繰り返したみたいな気分になるんだ。
――...はぁ。
現実逃避はそこまでにして。
改めて周りを見渡すと、そこにあるのは圧倒的な”黒”だけ。
ところどころに小さな星が見える、ただそれだけの空間が広がっていた。
...うん。確定で銀河飛ばしちゃった。
太陽があるはずの場所に高原がなく、周りを見渡しても月はない。
生物の生きることのできる可能性が見つかったとか何とかの火星ももちろん消え去っていて、あるのは結界に包まれた校舎だけ。
こんなことになるならもう【転移】で飛んどけばよかったな...ふざけすぎた。
今更後悔しても遅いので、取り敢えず宇宙にポツンと一軒家している校舎へ向かうのだった――
――――――――――――
「やっべ、なんか寒気したんだけど」
「あら?あなたそんなに軟弱だったかしら?」
「ちゃんと完全防御のイメージで術張ってるから寒気とかないはずなんだけどなぁ」
賢者が並行世界で地球を破壊していたころ。
現実の地下校舎ででは、魔法をもって公社を設立した初期メンバーが今日も今日とて集まっていた。
「それで、面接の資料はできたのかしら?」
「あぁ、人格の面接のやつか?あれはできたぜ、洗脳しやすそうなやつを見つけるための面接だからな、割と簡単に質問作れた」
「影響されやすい悲しい人類しかこの学校に入らないからね、駒になってもらうためにもちゃんと生徒の選別はしないと」
「気になるなら後で確認しておいてくれ。お前のデスクの上に置いてるぜ」
和気あいあいと、彼らの目標からは考えられないほどに盛り上がる。
――彼らの目標は、異世界とこの世界の融合。
それすなわち、どちらかの世界が犠牲になるということで――この世界の生物が滅びることはほぼ確定しているようなものである。
もし、この世界に賢者が転移してこなかったらこの世界の生物にも生存余地はあっただろう。
しかし、すでにこの世界に賢者は転移してきてしまっている。
その影響により、この世界と賢者の世界は必然的に近づいてしまっていて――彼らの願いが達成するとしたら、数多の世界の中から賢者の世界が選ばれるのはほぼ確定事項である。
賢者の世界にはこの世界には存在しないような魔物、魔王、そして人に敵対的な神が数々存在する。
その世界とこの世界が融合したら、それらが一気に地球に流れ込んでくる。
武器のない、神秘のない非力な人間ではそれらに対抗することは難しく、すぐに絶滅させられてしまうことが目に見えているだろうに、どうして彼らは融合をのぞむのか――
「俺らは人によって改造されたんだ。人を操って世界を滅ぼすくらい、許されるよな?」
――最終兵器。それは彼らであった。
――――――――――――
「最終兵器たちが見つかりません!」
「あぁ、そいつらよりやばいのが地球に来てるからもう放置でいいよ」
「は?」
その研究所は、脱出されたのにもかかわらず相変わらず研究を続けているのであった。
あとがき――――
機能更新忘れてた☆
許してクレメンス




