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16話

「…………え?」

「結婚! しようって言ってるの!」

「いや……え?」


 私の突然の叫びに頭が追いついていないのか、間抜けな顔をしながらキースはそう返す。

 間抜けな顔をしているくせしてイケメンなのはやはり悪役令息だからか。


「いやなんで急に結婚なんて……」

「先に言いだしたのは、キースでしょ?」

「そうだけど……」


 あわあわとするキースを見ながら、さっきの私ってこんな感じだったのだろうかと考える。

 その間もキースは何やら考え込んでいて、次の瞬間ハッとした表情で口を開いた。


「あの部屋! ヴェンがあの部屋を見せたのか!?」

「絵が飾ってある部屋なら見せてもらったわ」

「あいつなんで!? 見せるなって言ったのに!」


 私の返答を聞いて信じられないといった顔をしたキースは、焦ったような声でそう言う。


「ルアナ、あの部屋のことは忘れるんだ。俺がしたくてしただけだし、ルアナは関係ない」

「いや違うって__」


 どうやら私の求婚があの部屋への責任感からくるものだと思ったらしいキースは、私の肩をガッシリと掴んで血走った目で言う。

 彼の顔は真っ赤に染まっていて、耳なんて赤すぎていつもの色に戻るのか心配になるほどである。


「だから今まで教えなかったんだ……なんで今になって教えるんだよ、ヴェンの奴!」

「キース!」


 今にも部屋を出て、ヴェンに八つ当たりをしそうなキースを落ち着かせるため、大きな声で彼の名前を叫ぶと、キースはビクッと肩を揺らして途端に静かになる。


「あの部屋は関係ない。私がキースと結婚したいって思ったから今プロポーズしたの」

「関係ないって……そんなはずないだろ……」


 泣きそうなかすれた声で俯きながら私の言葉を否定するキースの頬を軽く叩く。

 ペチッと軽い音が部屋に響いて、キースが顔を上げた。


「私が、キースと結婚したいと思ったの。それ以上になにか必要?」

「…………」

「キース、私と結婚してくれますか?」

「…………あぁ」


 少々迷いながらもようやく頷いたキースに満足しながら、私はソファに腰掛ける。

 その様子を見守っていたキースも私に続いて机を挟んで置かれたもう一方のソファに腰掛けた。一度だけ俯きながら深呼吸をしたキースは、すぐに顔を上げる。

 キースの顔は先ほどまで真っ赤だったなんて信じられないほど、いつも通りの色に戻っていたし、先ほどまで余裕のない表情だったのに、いつも通りの冷静な顔つきに戻っていた。


「それじゃぁ、結婚についての話を進めようか」

「ロマンチックさの欠片もない……」

「お互い様だろう」


 真面目くさった顔で話を切り出したキースに思わずそう告げると、ぐうの音も出ない言葉で返された。

 確かにあのプロポーズにもロマンチックさの欠片もなかった。しかし政略結婚が主流の貴族にプロポーズのロマンもなにもないが。

 いや、そういえば私の両親は母のアタックに惚れた父が盛大なプロポーズをかましたのだった気がする。まぁあの夫婦は規格外だと思っておくことにした。


「それじゃぁとりあえず婚約者になるとして、結婚は3年後でいいな?」

「え? なんで3年後?」

「なんでって……俺がガーランド家当主を辞めてから結婚するからだろ?」

「いや、別にそれ待たなくていいわよ」

「は?」


 私の言葉にキースはぽかんと口を開けて、固まる。


「絵を我慢したくないんだろう?」

「別に3年ぐらいなら待てるわよ。3年後に結婚するってなったら、どう考えても私に美味しい要素しかないじゃない」

「いや別にそんなことはないが……」

「夫婦になるのよ? 夫婦は公平じゃなきゃ。無難なところを攻めるとしたら、婚約期間を半年くらいとってからの結婚……かしらね」


 ぽかんとした表情を続けているキースを放って、私は頭の中で今年のスケジュールを探る。

 確か半年後であれば大きなイベントがあまりない時期だからちょうどいいかもしれない。


「うん……半年後がちょうどいいかも。キースは? 半年後忙しかったりする?」

「え……」

「主の半年後はこれといって大きな予定はありません」


 間抜けな表情で間抜けな返事をしたキースに代わり、いつの間にか私の後ろに立っていたヴェンがスケジュール帳を確認しながらそう述べる。


「あらヴェン、ありがとう。じゃぁそこら辺で結婚式を挙げましょう。やることが盛り沢山ね。そんな大規模じゃなくて良いんだけど、まぁガーランド家の結婚式となればそうもいかないわよね」

「えぇ。しかしガーランド家の使用人は皆全力でお手伝いいたします」

「ほんとう? 助かるわ。さて、お父様とお母様とお兄様に伝えなくちゃ……それじゃ、そろそろ昨日の事件も公になってると思うし、私一旦帰るわね」


 未だに話に追いつけていないキースに手を振り、私はさっさと執務室を出た。

お読みいただき、ありがとうございました。

ルアナは結構思い切りがいい女性です。そしてふたりとも、ものすごく切り替えが早い性格をしています。


https://ncode.syosetu.com/n0699kx/

↑新連載を始めました。

キースとルアナの物語とは一転、少しシリアスでヤンデレな長編となっておりますがお読みいただけると幸いです。

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