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15/22

15話

少し短めです。

「……これは……一体どういうこと?」


 私の掠れた声が部屋の中に響く。

 キースは全く絵に興味がない。名門の当主ということもあって基本知識くらいは頭に入れていると思うが、絵をコレクションするほど好きだなんて様子はなかった。

 私の口からは自然とそんな疑問がこぼれ落ちていたが、答えはなんとなく分かってしまっていた。


 だってここに並ぶ絵画は私の好きな画家の作品ばかりだ。一目見れば分かる。


「いつか……いつかルアナ様に受け渡そうと、主がいろいろなオークションで落札したものたちです」

「オークションって……なんでそこまで……」

「エルヴァレイン家の当主様も次期当主様も絵に興味がないことが社交界で知れ渡っています。ですからルアナ様は絵画と触れることが少ない。だから社交界デビューしてから主は絵画好きのフリをして今までずっと絵を集めてきました」


 ヴェンの言葉に私は絶句する。私が好きな画家の作品の価格は決して安くはない。キースがそれをこんなにもの数落札してきたのはどうしてか。

 そんなの決まっている。全て全て私のためだ。


「私が……キース以外の人と結婚したらどうするつもりだったの……?」

「その場合は考えていたか怪しいですが……ルアナ様のこととなると途端に馬鹿になる人なんです。でも、長年側にいた私が保証します。主は……ルアナ様のことを本当に一番大切に思っています」

「……」


 ヴェンの言葉に私は昨夜のキースを思い出した。焦ったような泣きそうな表情で私が無事だったことに安堵して優しく抱きしめてくれたことを。

 

「……」


 部屋を見渡していた私は、著名な画家の作品の中に一つだけかなり古い額縁に入れられた絵を見つける。


「…………っ!」


 私はすぐさま踵を返して、真っ直ぐにキースの執務室へと向かう。先程廊下を歩いている際、ヴェンがキースは今執務室にいると話していた。

 他家の屋敷の廊下を全力疾走するなんてここ数年一度もしたことがない。お母様にバレればお説教どころでは住まないかもしれないし、多分お父様も庇ってはくれない。

 広大なガーランド邸の廊下を走り続けていたら、3分ほどしてようやく執務室のドアが見えた。走っている勢いのままそのドアをバンッ! と音を立てながら開ける。


「っキース!」

「は!? ……ルアナ?」


 突然のゼーハーと肩で息をする私の来訪にキースは驚いたような声を上げる。


「一体どうしたんだ? なんでそんな息切れしている……?」


 持っていた書類を机の上に置いて、椅子から立ち上がり部屋の入口で膝に手をついてゼーハーゼーハーする私の近くまで走り寄ってきたキースは動揺していた。

 当たり前ではある。先ほど客室に帰した人間がなぜか息切れした状態で戻ってきたのだから。


「とりあえず座りなよ……」


 執務室に置いてあるソファに案内しようとキースは私の肩に手を伸ばすが、あと少しで私に触れそうだというところでピクッとその手を止めて、腕を下げようとした。

 私はその腕を瞬時にガッシリと掴んで、バッと顔を上げる。

 キースの瞳は大きく見開かれ、じわじわと顔の色が赤くなっていっていた。


「ルア__」


「結婚しよう! キース!」


 息切れする身体をなんとか抑えて、私は大きな声でそう叫んだ。

お読みいただき、ありがとうございました。

あと三話ほどで本編完結予定です。

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