始まりを告げる声
「じゃあ長老。学校行ってくるね。」
「おぉ、お前達も今日からか」
赤い髪の少女と、白髪の老人が里の入り口で会話をしていた。
「1人寝坊してるけどね。」
「まったく、常日頃から睡眠はちゃんとしろと言っとるのに」
まだ来ていない1人について肩をすくめ、苦笑いをしていた。
「まぁ、これを許せるくらいあの子は強いのがのー。」
「まぁまぁ長老。あの子のお父さんもそうだったみたいだし見逃しても・・・あっ。」
何かに気付いた赤い髪の少女が、長老の後ろに手を振る。
「ごめんごめん。また寝坊しちゃった。」
少し息を切らしながら、黒髪の少女が2人と合流した。
「心配しないで。まだ入学式まで時間あるし長老で暇つぶししてたし。」
「ワシで暇つぶししとったんか!?」
わざとらしく驚く長老に大笑いしながら、2人は里に背を向け歩き出した。
「学校生活楽しむんじゃぞ。紗露、雨椿。」
長老は小さな声で、赤い髪の紗露と黒髪の雨椿に激励を送った。
「長老、なんか元気だったね。」
「うん。私と雨椿が一緒に行くから安心なんだと思うよ。」
そうなんだー。と緩く答える雨椿に紗露は微笑み先導するように前に進む。
無言の時ですら楽しく感じられるほど、2人はこの瞬間を待ち侘びていた。
見知った大人や子供、同い年ばかりだった里から知らない人だらけの社会へと向かう。
まるで宇宙人と会うかのように、紗露以上に雨椿はわくわくしていた。
山を抜け立ち並ぶビルの間を歩きながら、2人はこれからの新しい生活について話し合っていた。
「学校てやつ楽しみだね紗露!」
「そうだね。授業に部活、学校のいろんなイベント」
紗露も雨椿もたくさんの初めてに心躍らせていた。
想像するだけで心臓の鼓動が早くなるのを感じる。
「ん?あの建物じゃない?」
紗露が指を指した方向には、葉陽野学園の文字が見える。
校門の近くには女性が通る生徒に紙を手渡している光景が見えた。
「きっとそうだよ紗露!」
そう言って、スキップしながら紗露を追い抜き雨椿が1人で校門へと行ってしまった。
見失わないように紗露もスピードを早めて同じ場所へ向かう。
「おはようございます。」
「おはようございます!!」
門の前に立つ女性に2人は並んで頭を下げ挨拶をする。
「はい。おはようございます。新入生の方ですね。」
こちらをどうぞと紙を渡され、2人は入学式が行われる体育館へと案内される。
入学式は恙なく進行し
「続きまして生徒会長の挨拶です。」
淡々とプログラムが読み上げられると、生徒とは別の椅子に座った男子生徒が壇上へと向かっていく。
「生徒会長の天崎爽太です。新入生の皆さん、本日はご入学おめでとうございます。」
そんな挨拶から雨椿達の学園生活は始まったのだった。




