第七話伝説の勇者様!?今のうちにサイン貰っとかなきゃ!!
村を出てから俺達はずっと無言で歩き続け、太陽が天頂に届こうかという時間になった。
「もう少し歩けば次の村に到着するわ、そこで食事にしましょう」
マリーのその言葉に頷き返し、そろそろ気になっていた事柄を聞くことにする。
「なぁ、俺の状況について教えてくれ、異世界召喚なんて経験したことなくてよ」
現在の状況についていい加減説明してほしいと思い言葉を投げかける。
「異世界召喚?……貴方の世界ではそう言うのね……貴方を呼び起こしたのは私、遥か昔に作られた魔法によってこの世界に顕現した勇者……それが貴方よ」
「勇者?俺が?」
柄じゃないなーと思いながら話を聞く、テンプレート的な感じだろうか?
じゃあここからハーレムでも築くとか魔王を倒したりするのが目標にでもなるのだろうか……どっちも気苦労凄そう……
「そうよね……突然貴方はこの世界に放り出されて……ごめんなさい。私、自分のことしか考えてなかった」
マリーが申し訳なさそうな空気を醸し出して謝罪してくるが、正直地球に戻りたいか?と聞かれると首を傾げざるを得ない。
「いいよ、どうせ家に居てもゲームしてるだけだし」
自分でも信じられないほど軽い口調で答える、なんというか全てが他人事で現実感が希薄なのだ。
「でも何だか異世界に来る前の記憶が凄く混濁してるんだけど?」
「……多分利用した魔法陣が古かったせいで何処かに不具合が出ているのかもしれないわ」
マリーが俺の質問に考えながら答える、多分って……何処かって……
「はー、とりあえず次の村に付いたら食事と昼寝ね……」
マリーが眠そうに欠伸をして目をこする、思えば教会から休憩無しなので小柄な女性には辛い行程だろうと思う。
◇◇◇◇
「あっ、次の村が見えて……来たけど……」
なだらかな丘の頂点で村が見えてきたので、マリーが指差すが……
村からは煙が上がっており、住居や畑といった燃えてはいけないものから赤い火が噴出しているのが見える。
「……どう思う?」
「……どう思うって……」
固まった状態のマリーに意見を求めるが困惑した声が返ってくるだけであった。
仕方ないのでバックパックから夜の間に購入した双眼鏡を取り出して覗く。
「うーん……」
双眼鏡で見た感じ、人間らしき影がウロチョロしているのは見えるが何をしているのかまでは判別できない。
「何してるのかわかるか?」
双眼鏡を渡しながら訊ねる、どうか村の祭り的なものであってくれ〜。
マリーは突然渡された双眼鏡を少し訝しげに見た後、俺の真似をして覗き込む。
「アレは……野盗の類ね」
やっぱりね!と思いながら俺はどうするか考える、召喚されてまだ24時間経っていないのに治安が終わっている……
「あの村に寄らないと水も食料が心許ないわ……」
そりゃー教会の全員にバレないように出てきたんだから碌な物資は無いだろう、というか流石にそろそろマリーは休ませないとキツいだろう。
「じゃあ、どうする?」
「……お願い、野盗を追い払って」
双眼鏡を受け取り武器の準備をする、相手は人間……
それも複数人いることは確定なので追加でショップの武装を購入して装備する。
M16と一緒に持っていると少し不格好になってしまうが致し方ないと思い斜め掛けしたそれを背中側に移動する。
そしてマリーに購入した武装の内の1つ、フレアガンを手渡す。
「マリーはここでバックパックの番しといて、もし何かあったらコレを空に向けて、ここを引いてくれ」
バックパックを置きながら簡単にフレアガンの使用方法を説明する、これで知らない内に他界していたなんてことは無いと思う。
「わかったわ、その……村の住民が居たら助けてあげて、お願い」
俺はその言葉に頷き返して火災現場の住宅に向かう、俺達の位置から直線距離としては300〜400mは離れている。
近付くにつれてウロチョロしていた人間達が何をしていたのか見えてきた、男たちが人間の死体を燃え盛る住宅の中に放り込んでいる。
気づかれない内に双眼鏡を覗き込み機能の1つのレンジファインダーを使用する。
直線距離で大体200mほどなことを確認してM16のアイアンサイトを覗き込み、A3W中のデフォルトのゼロインが25m/300mなことを考えながら狙いを付ける。
FPSなどのガンシューティングは弾道がレーザービームと言われるほど直線で飛んでいくことが多いが、A3Wでは複雑な弾道計算によって現実のように弾丸が弧を描いて飛ぶ。
25m/300mというのはアイアンサイトの中心でまっすぐに狙ったときに、弧を描き始める25mと弾が落ちる終端の300mの地点でど真ん中に命中するということである。
彼我の距離は200mほどなので頭の少し下を狙う、風はほぼ無風なのでそのまま引き金を引く。
ドンッと銃声が響いた後に狙っていた男の頭に5.56mmのFMJ弾が吸い込まれて即死させる。
他の男たちがこちらの存在に気付いたようで各々武器……槍やら斧やら……を携えてこちらに向かってきた。
最初の村と違って綺麗に開墾されて畑が広がっているので隠れる場所の無い奴らに連続して発砲する。
真っ直ぐ走ってくる者、伏せる者、逃げる者、様々いたが逃げた者以外の5人を倒すことに成功した。
今の動きでわかったが、連中は銃に対してどのように動けばいいかが全くわかっていないらしい。
と思っていたら10人くらいの男たちがワラワラと槍や盾、弓矢を持ってやってくる。
その陣形は矢盾……俺の薄い知識では木の板と違いが見て取れない……を持った者を前面にして他の兵がその後ろに陣取っている。
盾の後ろから曲射の矢が飛んでくる。
矢の落ちてくる地点をしっかり確認して最小限で避ける……A3Wでも弓矢が存在したので対処法もその通りにする……地面へ矢が刺さり、お返しとばかりにM16の射撃を敢行する。
矢盾の後ろに居た奴らの2人が貫通した弾で倒れる。
しかし戦意は全く衰えないようで矢盾のスキマから今度は直射しようと狙ってくる者がいる。
ソイツにマガジンが空になるまで弾丸を撃ち込む。
リロードしながら弓兵から見て横方向へジグザグに進み距離を詰めていく。
A3Wで存在した弓矢は銃弾と比較するとほとんど無音の武器で、曲射ができるため障害物の後ろから撃てる利点があった。
短所として次弾の遅さや直射時の弾速……矢速?……が遅いため、このように横にジグザグに動かれるのが比較的苦手という特性があった。
……上級者の弓使いの矢はそんなこと関係なく百発百中だったが……
矢盾に制圧射撃をしながら近付く。
彼我の距離が150mほどになったときにショップで購入しておいたM79グレネードランチャーを背中から持ち、射撃の体勢に入る。
M79グレネードランチャー、40mm×46mmグレネード弾を使用する最初の武器で、米軍の正式装備として使用されていた。
映画などでもその特徴的なフォルムと榴弾の派手さで人気の武器である。
M79に榴弾を装填して矢盾の後ろに飛ぶように狙いを付け、発射するとポンッと特徴的な射撃音と共にグレネードが飛んでいき爆発した。
銃弾から身を守るために矢盾の後ろで密集陣形を取っていた野盗達はその一撃で一網打尽になり、即死しなかった者たちがモゾモゾと動いている。
もう一度榴弾を打ち込んだ後、M16に持ち直して動いている者達に何発か撃ち込むとやがて動く者はいなくなった。
タ―〇ネーター2大好きです。