第3話冒険者たちの場合
グルルル……とフォレスト・ドッグが唸りながら俺達を取り囲む。
「呪文はまだか?」
俺は背後で魔法を準備しているレイアに声を掛ける。
「もうちょっとです。」
手短にそう答えて魔法を練り続ける。
数は多いがレイアの範囲魔法でなら全てを射程距離内に捉えることができるだろう、後はこのまま睨み合いを続ける。
あともう少しで魔法が発動するその時、ドンドンッ!と凄まじい音が響き睨み合っていた魔物たちが一斉に走り出す。
内1匹はこちらに走ってきた、ミーンが大盾による攻撃で弾き飛ばすが、魔物が散り散りになってしまい魔法の範囲外に行ってしまう。
レイアはその状況を素早く判断して広範囲を対象とした魔法から、対象を絞った魔法へ変更して放ち2匹を仕留めた。
発動中の魔法を変更できる魔術師はそう多くない、少なくとも冒険者としては数えるほどしかいない上級の魔術師である。
爆発音のような轟音が連続して鳴り響いていた方を見ると、魔物が何体も倒れ伏し絶命していた。
余計なことを……しかし援護してくれたのかと、その結果を齎したであろう人物の目を見たときに俺は異常な気持ち悪さを感じた。
魔物に襲われたり戦えば当然、興奮や殺気といったもの……浮足立っている様子ともいえる……があるはずだが、男の目にはそのどれもが全くなかった。
その黒い目はまるでガラス玉を入れたように透き通っているが、それは純真なまなざしではなくただただ無感情な何の色も無い色だった。
「テメェ何者だ?突然現れてよ、フォレスト・ドッグに何したんだ。」
異質に過ぎる相手に思わず喧嘩腰になるが、俺は問いを投げ付けた。