第六十話無双!無敵!無理!無駄!無謀!ムムムム!
残り20人程となってしまった傭兵達は、最早誰の指示に従うのでは無く各々が勝手に行動し始めたようだった。
軍事用語としての壊滅状態、既に戦闘部隊は5割以上を失っている。
――正直、今の勝手に動き回る方が厄介だ。
訓練されていた為に、密集陣形で戦う事ができたが、今回はその練度が裏目に出た。
恐らく連発式の銃だとしても、数で押せば押し切ることが出来ると判断したのだろうが、奴等の常識ではこれ程の長射程かつ圧倒的な火力で間断無く攻撃が来ることまでは予想できなかったようだ。
マスケット銃の有効射程は資料にもよるが、30〜50メートル程度と言われている。
奴等からすればその4倍以上の距離から攻撃を受けているわけで、実際に後100メートルも近ければ長弓の矢が届く位置まで進めただろう。
だが既に飛び道具を持っていそうな奴は粗方倒した。
ドドドッと更に射撃を続け、2個目のマガジンが空になりネリーへ渡す。
150発使って20〜30人程度、命中弾は少ないが外れた弾は大きな土ぼこりを上げて制圧効果を高める。
こちらへ向かって来る者達を撃つ、銃から離れようと背を向けて逃げ出す者もいるが――
「キエエエエエッ――!」
喊声と共に逃げていた奴等がバラバラになる。
レミが敵を挟んで俺の方へゆっくりと歩いてくる。
前門の銃、後門の剣とでも言った所か。
レミのいない方向に逃げる者も俺が撃って止めている。
何名かが一縷の望みを託してロミとルミへ向かうが、2人が剣とマスケット銃で応戦する。
応戦されて足が止まれば俺に撃たれるか、走ってきたレミにバラバラにされるかのどちらかだ。
残りがほんの数人になった所で、武器を投げ出して跪いた。
「あら?完全降伏みたいですよ、たったアレだけになるまで降伏しないとは……『蛇の目』が勇猛果敢という噂は本当だったようですね、まぁ傭兵団は瓦解するでしょうが」
数えると50人はいた敵が残り8人になっていた。
倒れている者の中にはまだ息がある者も所々にいるが、そう永くはないだろう。
降伏した相手を撃つのも……と思いつつ釈然としない。
「これが戦争なら捕虜として人道的に扱って〜って話になるんだろうけど……あいつ等、傭兵団ってことは金の為に精々4人のロミ達を襲ってきたんだよな?それで旗色が悪くなったら降伏しますっ……てなぁ……」
今回もネリーと俺が駆け付けなければそのまま全員殺されていただろう。
「でも割と大きい傭兵団ですからね、生きてる彼らは飛び道具を使わず、最前列の盾に参加せず、指揮もしなかった人たちでしょう?言うなれば末端・下っ端な彼等は何も知らされずに従わさせられてたんじゃないですか?」
ネリーが結構ひどい事を言う。
まぁ俺が狙って撃ったのがその条件なので、彼女の言う通りではあるのだが……
「とりあえずロミ達と合流しよう、降伏したアイツ等が何かしないか警戒してるから、アシヌスと馬を連れてきてくれ」
レミも似たような事を考えたのか、降伏している者達の傍へ向かっている。
俺はRPK軽機関銃とドラグノフ狙撃銃をインベントリへ入れて購入画面で売り払い、ついでに持っていたP90も売却して代わりにAK-47を購入して装備する。
俺とネリーが移動し始めたのを見て、ロミとルミも馬車を動かして降伏している者達の所へ来る。
「お前等、よくもそのザマで自分達だけで護衛は十分だの抜かしたな」
信号機へ苦言を呈する。
「アルファ……なんで……」
ロミが呆然とした様子で呟く。
まぁ詳しい話は後で先ずはコイツ等の処遇を決めなければ。
「おい!テメェ等、妙な気を起こすんじゃないぞ、レミと俺相手に勝てる可能性なんて万に1つもないからな」
AK-47の銃口を向けて恫喝すると、その言葉に男達は震え上がる。
流石にこの5倍以上いた戦力が死屍累々なのだ、抵抗する事は無いと思いたい。
「どうする?そっちが決めろよ、ネリーもそれでいいよな?」
「はい!もちろん!そもそも私、殆ど関係ありませんもんね!」
ロミへ向かって選択を委ねる。
ネリーも俺と一緒にいただけで襲撃されたので、一応許可を取っておく。
「……全員拘束させてもらう、抵抗しなければ少なくとも命までは取らない」
ロミの言葉で傭兵達にホッとした空気が広がる。
俺は購入画面を開いて、手錠を8個購入して取り出す。
「3人とも、拘束具だ、使え」
信号機へ手錠を投げて渡し、捕虜の1人を立たせて手錠を掛けて使い方を教える。
後ろ手に手錠を掛けられた者は、従順に応じた。
他の者達も特に抵抗することなく、手錠を掛けられた。
「遺体の処理は多すぎて無理だな、湖から水だけ汲んだら丘の向こうまで越えよう」
ロミの先導で馬車とネリー達が前を行き、その後ろにレミと捕虜達が続く、俺は殿を務める。
◇◇◇◇
湖で水を汲んだり準備して、遺体が見えない丘の先まで移動した時にはもう夕日が沈み始めていた。
腰を落ち着けて焚火を囲む。
捕虜達は手錠をされたまま逃げ出さないように、座った所へお互いを鎖で繋ぐ。
鎖はここへ来る途中にレミを縛っていた物を何本か持ってきた。
繋ぎ方は雑だが、まぁ手錠に加えての鎖なので逃走防止には十分だろう。
「なぁ、お前等誰に雇われたんだ?こんな傭兵団全滅する価値のあるくらいの雇い主だったのか?」
男達へ質問する、死ぬ気で何かを成す……一般的に立派な事とされるが、今回の彼等は無駄死にもいい所だ。
ただ命令に従うだけではここまでは出来ない。
否、出来るのかもしれないが、きっと俺には無理だ。
――神涙石があれば別だが。
嫌な事を思い出し、1人勝手に苦い気分になる。
「言えない……それにオレ達は詳しい話を聞かされていない」
まぁ予想していた回答だ、指揮官の様な動きをしていた者は優先的に撃っていたので上位の者達は粗方死んでしまっているだろう。
「ではお前達の仲間はまだいるのか?まだ傭兵団は残っているのか?」
ロミが横から男達へ詰問する。
「輜重部隊はまだ15人いる……戦闘部隊は宿場町に13人残ったが……」
男達の中でも1番年上であろう男が応えている途中、コチラへ視線を向ける。
13人……暗殺に来た3人と出入口を塞いでいた10人。
「そいつ等も始末した、正確には何人かは生きているかもしれないが……」
最早祭りの見世物の体を成していた私刑から生き残っていればだが……
その言葉にロミが驚いた顔をした。
「なぜ別れたアルファを襲った!?私達が目的では無かったのか!」
ロミが怒りを含んだ声で男へ問う。
……ロミって結構純粋というか、平和主義というか、楽観的というか、そういう所がある。
「なぜって……お頭はそっちの……アルファって奴とレミって2人が1番厄介だから確実に分断して仕留めようとしただけ……」
多分傭兵の方も質問の意図が分かっていない。
「そいつ等からすれば、なんで二手に別れたのかわかんねぇだろ……でも厄介な2人が勝手に分断されてくれたから各個撃破を狙った、別に不思議な話でも無いだろ」
横から口を出す。
もしかして、クビにされたのは機密保持的に拙いからではなくて、俺を危険に晒さないため?
ルミを舐めてた手前、強くは言えないが舐められたもんだな。
「もうとっくに俺達は一蓮托生の仲間だってことだよ」
少なくとも刺客を送ってきている奴等にはそう思われている。
「アルファ……私達のせいで……」
ロミがショックを受けたように項垂れる。
自身の無力さに打ちのめされたように落ち込んでいる。
私達のせいってなぁ……
「それは違うぞ、お前等のせいでこうなったんじゃない、お前等の為に俺が選んでこうしたんだ」




