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第30話運命の日、6人の魔人

 ――埃っぽい部屋だった、牢屋の如く壁と床は頑強な石で作られた部屋。


 そこには大きな長机が置かれており、6人が席に付いていた。

 

「迷宮都市での成果、素晴らしいよ魔技(マギ)


 悦に入るように、1人の男が呟いた。


「そうですかな?少々人間を襲うことに特化させ過ぎましたな、もっと臨機応変に動くよう調整が必要ですかな……」

 魔技と呼ばれた男は下を向いたまま考え込むように返答する。


「謙遜しなくていい、ここから我々の反攻が始まる」

 芝居でもしているかのように男は手を振り語る。


「勇者へ挑みたい者――【千刃(せんじん)】」

 眩く金の髪を持つ美丈夫――ヴェルナーが男を見る。


「研究をただ続けたい者――【魔技(マギ)】」

 剃髪(ていはつ)した頭に黒い僧服を纏った男が顔を上げる。


「芸術を磨き上げたい者――【恐美(きょうび)】」

 筋肉質な男が、自身の持つ板へ何事か描き続ける。


「勇者を己が物としたい者――【恋獄(れんごく)】」

 美しく、蠱惑的な魅力を持つ女性は興味の無いように自身の爪を見る。


「この世界、その(すべ)てが憎い者――【異時界(いじかい)】」

 青年が演劇染みた男へ、何の感情も見せず視線を送る。


「そして私、この世界へ新たな秩序を(もたら)す者――【新神(しんしん)】」

 男は恍惚の表情を浮かべ、今一度全員を眺める。


「我ら6人の魔人が、これより新たなる世界を作り上げる」

 自身に陶酔した男は、自身が演劇の主人公であるように振る舞う。


――我らこそ新たなる世界の構築者、六魔人也――


■■■■


 新神による趣味の悪い演劇が終わる。


 その様子を見て、うんざりとした心持ちで、()()()()から出て新鮮な空気を肺一杯に吸い込む。

 

 いつもそうだが、新神が(まと)め役――というより纏めようとする奴が彼だけ――なので彼がいなければ同志という()()にならないので有難いのだが……どうにも拘りがあるのか面倒くさく胡散臭い演出をする。

 

「やぁ!ヴェルナー君、お母様はご壮健(そうけん)かな?」

 後ろから声が掛かり、振り向けばそこには黒い髪の青年が立っていた。


 彼との付き合いも長い、母の友人だった彼が僕と出会って何年経っただろうか?


 幼少期に出会ってから、容姿に全くの変化のない彼へ向き直る。


「フフッ……ここでは【千刃(せんじん)】と呼んでくださいよ!【異時界(いじかい)】!」

 まぁカッコ付けてはいるが、只の()()()なのでどっちで呼んでもらっても構わないのだが。


「いやぁ……そういうのは微妙というか14歳くらいで卒業したというか……」

 異時界はポリポリと頬を掻きながら照れくさそうに話す。


 まぁ正直、同志とはいえ全員が新神とは温度差を感じているだろう。


 そのままこちらへ近付いてきて、世間話を始める。


「確か迷宮都市に行ってたんだよね?魔技の奴から聞いたよ、迷宮に入ってたりしてたんだろ?」

 こういった気安い態度は彼の一面……それも上っ面だけだ。


 答えを誤れば、僕は彼の真っ黒な、あらゆる穢れを濃縮したようなその感情によって呑まれるだろう。


「えぇ、といっても初回講習を受けただけで大したことは何もしてませんよ、魔技からのサプライズはありましたがね」

 魔技と話したと言っていた、ここはある程度正直に話した方が良い。


 だが――()のことは伏せる。


 きっと彼の事を知れば、この人は(たちま)()()へ底の無い怒りを向けるだろう。


 しかしそれはダメだ、迷宮都市での絶望的な状況から生還してみせた彼は、()()として予想以上の逸材になりつつある。


 まだ成長させる時期、彼の……勇者の名を冠する者共の()()()()は戦いたい、()()()()()()()()


「ふぅーん?……まぁ大したこと何て早々無いかぁ……それにしても迷宮都市の冒険者達は流石に精鋭揃いだったようだね、猛烈な爆裂の魔法で穴を塞がれたり、強力な火の魔法で魔物をバッタバッタと薙ぎ倒したりしてたって魔技が言ってたよ」

 何気ない雑談のように和やかに話す。


 迷宮都市の話題が来ることは想定済み、彼に何か悟らせるようなことはしない。


「そうだ、ついこの間の事なんだけど、|ショート・フェイス・ベア《短顔熊》が迷宮都市の冒険者達に狩猟されて、綺麗な極上の毛皮と骨格標本(こっかくひょうほん)が王都のオークションに出されるって大騒ぎがあってね、見に行ったんだよ」

 魔技がエリミエス山脈で実験し、様々な生物が住処を追われた。


 恐らくその中の1匹だろう。


「その毛皮が本当に綺麗でさぁ……鉄砲で心臓を一撃だったらしいね」

 ほんの一瞬、目が泳ぐ。


 3メートルにもなるという巨大なショート・フェイス・ベアを一撃で仕留めることができる強力な鉄砲。


 その言葉で()を連想してしまった。


「……なぁ、ヴェルナー君……その冒険者()ってさ、本当に……()、だったのかなぁ……もしかしてその冒険者について――」


 ――何か知っているのかい?――その、問いが来る直前。


「あれ?千刃とトドメおぢじゃん?まだこの辺うろついてたんだ」

 女性の声が僕達2人の会話を止めた。


 見れば妖艶な雰囲気を纏わせた、淫魔の女王……を自称するサキュバス、恋獄が立っていた。


「やぁライラちゃん、久しぶりだね」


「ちょっとー!トドメおぢ!恋獄って呼べってずっと言ってんじゃん!」

 こちらを見ていた異時界――時遠(トキトウ) (トドメ)の気がそちらヘ逸れる。


「申し訳ないのですが、この後野暮用があるのでここで失礼させていただきますよ」

 その隙を突いてその場から離れる。


「トドメおぢが異時界って呼ばれるのがイヤだって言うからこっちはちゃんと名前で呼んでるのに!そっちはこっちが呼んで欲しい二つ名で呼ばないのはズルッしょ!大体いっつも――」


 背中に黒く鋭い視線を感じたが、無視して逃げた。

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