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第四話デカけりゃいいってもんじゃない!ジビエは小さく切ってしっかり火通せ!

「彼はこのあたりに来たのが最近らしいから、まだこっちの冒険者ギルドには登録していないのよ」

 マリーがアシムを誤魔化しながら俺の虚偽の設定が形作られていく。


 息をするように嘘つくなマリーさん……


「だから魔物(モンスター)の素材買取をしてもらえないのよ、アシムさんたちで一度換金してもらえるかしら?」

 話が纏まるとアシムは頷き、魔法使いと村の人々の方に向かって話し始める。


「フォレスト・ドッグを片付けるのを手伝ってくれ!ここの他にもまだ何匹か亡骸があるから何人かマリーさんとアルファに付いて行って手伝ってくれ!一旦全部ここに集めて処理しよう」

 その声に数人がこちらに来る。


「あぁ……マリー、無事だったのね」

 マリーと似た服装の女性2人と男性2人の集団が駆け寄ってくる。


 特に気にしていなかったが彼女らの服装は、足元が広がっているオリーブ色のワンピースに貫頭衣の上着を着ている。


 腰には上着の上からベルトのようなものが巻かれているため、ある程度ボディラインがわかるようになっている。


 そんな感想を抱いたのは同じ格好をしているはずなのにマリーさんのボディライン……特に上半身の……主張が非常に控えめだったため、ゆったりとした服を着ているように見えたのである。うん。


「リミ!エマ!よかった、皆いるのね……」

 マリーが嬉しそうに集団に答えるが、すぐに暗い顔になる。


「ごめんなさい……マーカス牧師はフォレスト・ドッグに……」


「仕方ないわ、貴女が無事でよかった」

 薄い緑の髪色の女性がマリーを抱き締める。


 その身体はマリーさんとは違い起伏に富んでおり、抱き締めたときに形状の変化がわかるほどである。うん。


 そんな二人を思いつつ辺りを見回し、人々の髪色を見る。


 マリーは明るい茶髪で冒険者パーティもアシムと大盾の男は暗い赤毛、それ以外は帽子やフードで殆ど髪が露出していなかったので気付かなかったが……


 赤、緑、金(かなり黄色に近い)、紺と非常に多彩な色である。


 何喰ったらあんな色になるんだろうと考えていると、知り合いらしき集団と話し終えたマリーが話しかけてくる。


「アルファ!この人たちは私と同じ勇教会の巡礼者よ、倒したフォレスト・ドッグをここまで運ぶのを手伝ってくれるわ」

 マリーが男女4人を紹介してくれ、フォレスト・ドッグの亡骸の回収に向かった。



 その後、教会に運んだフォレスト・ドッグを村の人やアシムたちが協力して解体していった。


 さすがに20匹近くいるので大変な作業であり、数十人がかりで肉と毛皮などの素材に分け終える頃には太陽が山向こうに落ち始め橙の光で山の陰から人々を照らしていた。


「革は縮まないようにしてるけど肉は全部保存できるほど塩が無いから、せっかくだし皆で食べちまいしょう」


「そうね……アルファもそれでいい?」

 アシムとマリーが俺に提案してくる、手慣れてそうな冒険者が提案してくるのだから乗っておいた方がいいだろうと思い肯く。


「よし!じゃあ完全に日が暮れる前に焼き始めるぞー」

 アシムが号令をかけ、冒険者5人組が中心となり教会の前に立派な焚火……キャンプファイヤーみたい……が用意される。


 そこからは脅威が去ったことを伝えられた村の人々が集まってきて、口々に冒険者たちへお礼を言っていったりどこからか持ってきた大鍋でスープが煮込まれ始めたりと祭りの様相を呈してきていた。


 徐々に日が落ちて藍色の空が広がり始める中、その様子を見ていると……


「おーい!アルファもこっちに来い、お前もかなり討伐したんだからこっちでいいとこの肉食えよ!」

 アシムがキャンプファイヤーで肉を焼きながらこちらに声をかけてきたのでそちらに向かう。


「最近この辺に来たのならフォレスト・ウルフを食うのは初めてか?背の肉だ、一番美味いぜ」

 鉄串……というか小さい刺突剣……に刺さった肉を勧めてくれる。


 受け取ってみるとジビエ料理のような、いやジビエか……獣肉の焼けた食欲をそそる香りがする。


 一口サイズに切られた肉は、振られた岩塩が焚火の灯りでキラキラと反射している。


 肉に齧り付くと、牛や豚とは全く違う歯応えのある滋味深い肉の味が口内に広がる。


ドッグ()系とウルフ()系はどっちも雑食なんだが、ドッグ系のほうが草食に寄ってるから臭みが少なくて食べやすいんだよ」

 アシムが肉を咀嚼しながら教えてくれる。


 確かに鉄分を感じる独特の香りがするが嫌な臭いではなく、肉の栄養を余すことなく取り込んでいるような気持ちにさせてくれる。


 調味料は塩だけだが、それが逆に肉自体の複雑な旨味を引き立てており非常に美味である。


「アルファ、今日は本当にありがとう……」

 肉に舌鼓を打っているとマリーが隣にやってきて感謝を伝えてくる。


「時々魔物(モンスター)が生息地から人里に襲撃してくることがあるの、ただ今日ほど大規模な襲撃は滅多になくて危なかったわ」


「あぁ、いつもは精々3~5匹くらいで、それも群れからの弾かれ者が多いんだが今日は群れ全部が来たみたいだったからな……」

 マリーとアシムが今日の出来事を振り返る。


 皆がテキパキとお祭り騒ぎの準備を始めたりしたので意識していなかったが、魔物に滅ぼされるかどうかの瀬戸際だったんだよな……少なくとも2名以上亡くなっているはず。


 焚火の周りを見回す、人々はそんな状況だったことを感じさせない活気で無事を喜び合い、食事を楽しんでいる。


「……亡くなった人たちの遺体とかはどうなったんだ?」

 魔物の回収はしたが人間の方は全く何も手を付けていないことを思い出して問いかける。


「もしかして神教徒(しんきょうと)か?この村の人は勇教徒(ゆうきょうと)ばかりだからな、勇者教会では魔物にやられた人たちは一晩その場に残すんだよ……遺体に執着する魔物が多いから、魔物が遺体を持っていかないのを確認してから荼毘に付すんだ」

 アシムが教えてくれる。


 神教徒やら勇教徒やら、理解できない単語が出てきたが宗教的な話だろうか……とその意味を聞こうとしたとき。


 ウオオオオオオ――――ン!

 日がほぼ沈み、焚火の炎と月の灯りで照らされた村に大きな獣の遠吠えが響き渡った。


 まるで予期していたかのように冒険者たちが素早く手に持っていた食べ物を置いて武器に持ち替え、四方に別れて警戒し始める。


 人々が焚火の周りに集まり不安そうな表情を浮かべている。


「残りの3匹だ!来るとは思ったが随分早いな」

 武器を構えながらアシムが叫ぶ。


 俺もM16をロー・レディ・ポジションに持ち直し警戒する。


 冒険者の聖職者と大盾の騎士……リルルとミーン……の2人の側の暗がりから3匹の獣が飛び出してきた!


 2人はすぐに反応し、ミーンが大盾を構えその後ろにリルルが陣取る。


 飛び掛かってきた3匹のうち正面の1匹を大盾で弾き飛ばし、左右に別れた残りの2匹に弓兵……レーン……の速射によって1発ずつ矢が当たり倒れる。


 俺は銃を向けこそしたが同士討ち(フレンドリーファイア)を恐れて撃てなかった。


 などど考えていると大盾で弾かれて倒れていた1匹にミーンが短剣で止めを刺す。


 その様子に全員の注意が向いて、ほんの少し空気が弛緩する。


「きゃッ!……」

 魔法使い……レイア……の悲鳴が一瞬響き、レイアがすぐに建物の陰まで引きずられていく。


 しまった!と思い銃口を向けた時には遮蔽物で狙うことができなかった。

猪と鹿は食べたことあるけど独特の味ですよね。

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