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第三十五話とりあえず脱げ!全部脱げ!

「では改めて、私はロミ、ロミ・ヴィエント・メ・セブ・シャルだ」


「初めまして、ワタクシはルミ・リミュールですわ」


「レミ・エレンディア」

 赤黄青の順番で名前を名乗る。

 

「アルファ・1(ワン)、アルファでいい、よろしく」

 お互いに自己紹介をする。


 真っ白なお姫様はお礼後、すぐに馬車内に引っ込んだ。


 3人を見回すと、個性的な集団である。


 ロミは真っ赤な髪をポニーテールにした精悍な顔つきで、装備には高そうな銀の鎧が胸部と両手両足を覆っており、短めの剣を左右の腰に差している。


 ルミは綺麗な金髪……というより黄色の髪に特徴的なドリルのようにウェーブがかかっている。


 装備は肩から掛けている両脇の特殊な形のホルスターに2丁ずつと両足の(もも)に2丁ずつの、フリントロック方式の銃を差している。


 ホルスターが干渉するのか、鎧は着けていない。


 レミは青い短髪で(たか)のような鋭い目をしており、頭以外の全身を余すところなくプレートメイルに包んでおり、関節部分以外は隙間が無く動きづらそうな恰好である。


 そして背中に異様に長い剣を背負っている。


 長すぎて自身の身長を超えているが、先程まで凄まじい勢いで振っていたので伊達や酔狂ではなさそうだ。


「よしっ!じゃあ小鬼(ゴブリン)の死骸を片付けるか!」

 ロミがパンパンと手を叩いて指示を出し、ゴブリンの片づけをし始めた。


 4人でゴブリンの死骸を馬車から離れた一か所に集めて積む。


 その後、レミが馬車からシャベルを持ってきたと思ったら凄まじい速度で穴を掘り、あっという間に2~3メートルは深さのあるデカい穴と土の小山ができた。


 そこへ死骸を放り込んだ後、ロミが何やらムニャムニャと何かしら呪文のようなものを唱え始めると、小さな火球が発生し、徐々に大きくなっていく。

 

 5分ほど呪文が続くと、最早火球は人間の頭部を超えた大きさで赤々と太陽のように輝いている。


 呪文が終わると同時にその大きな火球は、穴の中へ飛んでいき、死骸を大きく炎上させる。


 動物って結構水分があって燃えづらいのだが、炎は都合よく広がり黒煙を上げた。――恐らく魔法の炎のせいだろう――


 その様子をボケっと見ていると、横から刺すような視線を感じて、そちらを見るとルミが俺のことをジッと見ていた。


 俺が視線を向けるとすぐに視線を逸らしてしまい、さっさと馬車の方へ行ってしまった。


 なんかやってしまったのだろうか?


「いや、片付けまで一緒にしてもらってありがとう。詳しい契約は明日詰めよう」

 ロミの言葉で、とりあえず荷物を取りに行くか。と先程までの野営地まで戻った。


◇◇◇◇

 

 「戻ってきたか、焚火番は私たちでやるから適当に休んでくれ」

 ロミが戻ってきた俺を見て話し掛けてきたので、相槌を打って荷物を適当に置く。


 馬車に戻ってくる頃にはすっかり日が落ちて、焚火以外の灯りが無い状態だった。

 

 そんな中、ルミが見たことのない様々な謎の道具を広げて胡坐(あぐら)でマスケット銃の手入れをしていた。


 その様子に興味を惹かれて見る。


 銃身を木製のグリップから外して、()()の部分へ鉄の棒――レンチのような道具――を使用して大きなネジ状のパーツを外し、銃身の中身にまた別の金属の棒を突っ込んでゴシゴシと前後させる。


 そして火にかけられグツグツと音のするヤカンをミトンのような手袋をして手に取り、熱湯を少しずつかけて、磨いてを繰り返している。


 最後に水気を払うように銃身を振ると、脇に置いていた小瓶から何かの液体――恐らく油と思われるもの――を塗ってまたマスケット銃に組み立てなおす。


 どうやらこれを持っているマスケット銃の個数分行っており、既に9丁ある内のいくつかは終わっているようだった。


「……貴方は()の手入れはしませんの?」

 ルミが手を動かしながらこちらに問い掛ける。そういえばこれまで銃の手入れは特にしていなかった。


 これは使用した銃を放置していたわけではなく、しばらく使用した後にA3Wのシステムで新品に購入しなおしていたのだ。


 M16の時はダイレクトガスインピンジメント方式という、射撃した際の弾丸のガスを直接機関部に吹き付けて機関部を動作させる方式だったため、機関部の頻繁な清掃が必要だったのだが……


クリーニングキットは別に用意しなくてはならず、A3Wのゲームシステム的にコストパフォーマンスが極端に悪かった。――というか本当に数種類のレギュレーションの時しか使わなかった――

 

「じゃあ俺も手入れするかな……」

 これがAK-47だと話が変わり、銃床の中に簡単なクリーニングキットが標準で用意されているのだ。


 銃床の後部に装着された金属の穴を押し込むと、黒いカプセルが取り出せ、このカプセルの中に金属ブラシや、パーツのネジなどを調整できるキットが入っている。


 更に銃身の下部に装着されているクリーニングロッドにカプセル内の金属ブラシを装着できる。

 

 AK-47はロングストロークピストン方式で、これはその名の通り弾丸のガスで長いピストンを動かして機関部を動作させる。


 動くパーツが多くなるため命中精度に影響を与えるが、非常に堅牢で確実な機構である。


 マガジンを外して薬室から弾丸を抜く。


 後部上端のボタンを押しながらパーツを上に上げると、上部を覆っているダストカバーが外れてリコイルスプリングやピストンを外すことができ、機関部を触ることができる。


 そして各種パーツを外していき、薬室やガスチューブを金属ブラシで擦っていく。


 黒い無煙火薬の()()()()が落ちていき、内部を清掃していく。

 

 メンテナンスをしていると、刺すような視線を感じる……視線の主は分かっているが気になるのでそちらを見るとルミの青い瞳と目が合う。


「随分と複雑な構造なんですのね……」

 その視線は銃に向けられており、難しい顔をしている。


「魔法の武器だからな、色々あるんだよ」

 ルミの疑問に伝家の宝刀を抜く。


 冒険者の武器について深く聞くことは商売道具――言うなれば企業秘密を探ってくるのと同義なので禁忌(タブー)となっているので銃について聞かれたときは大体これで乗り切ってきた。

 

「そうですのね……」

 俺の回答に興味を失ったように自分のマスケットへ視線を落として整備を続けた。


 

 しばらく無言で作業した後、火の番をロミに任せて横になる。


 睡魔はすぐにはやってこず、様々なことが頭に流れる。


 現状で迷宮都市はどうなっているのだろうか、迷宮の魔物が山を越えてきたという事実は、かなり厳しい状態が続いていると考えていいだろう。


 マリー……彼女は今どこにいるのだろうか、生きているのだろうか。

 彼女に会ったとして俺は何をしたいのか――


 何もかも決まっていない旅の始まりだが、この先にどんなことが待ち受けているのか。

 しばらく横になって月を眺めながら、考えている内に意識は沈んでいった。



 「キィエエエエエエエ――!!」

 眠っていた意識が突然の奇声で無理矢理覚醒させられる。


 アガッ!?なんだ!?敵襲か!?

 

 慌てて飛び起きて銃を手に持って辺りを見回す。


 まだ日は完全には昇らず、辺りが少し白み始めた時間である。


 そして声の方を見ると、全身を鎧で覆った青い髪が木に向かってデカい木の棒を振っていた。

 

「ふぁ~、レミの奴、はじめたか」

 あくびをしながらロミが何事もないかのように起きてきた。


 ルミに至っては横になったまま起きる素振りすら見せていない。


 あの謎の儀式、朝もやってんのかよ……

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