第26話見つめる目
「まさか4大災厄の一角を倒すとは」
使い魔からの視覚情報で、アルファ君と飛蝗公の戦いの結末を見届けた。
ヴェルナーという名を教えたのは早計だったかな?と自身の毛先を弄りながら考える。
4大災厄――1000年前の人魔戦争終結以降に生まれた、個人で人類を滅ぼすことができるとされた4人の魔人――
【飛蝗公】
【魔竜人】
【雷鳴動】
【異時界】
飛蝗公は4大災厄の中でも最後に列せられた魔族――地上最後の太陽を克服した吸血鬼。
200年前に大規模な蝗害を起こして、地上を喰らい尽くし、天空を闇で覆った災厄。
アルファ君の動向を探っていたら、偶然2人の激闘を見ることができたが――
「かなりのハンデ戦だったね、飛蝗に食い殺させていれば楽勝だったろうに」
先程までの激闘を分析する――
飛蝗公の最も恐ろしい所、それは単純明快で蝗害という未曽有の大災害をいつでも起こすことができる、昆虫操作の魔法を使えたこと。
しかもその蝗害の飛蝗は人の肉すら喰らい、飛蝗が吸収した生命力は全て飛蝗公の力となる。最早人間がどうにかできる存在ではなかった。
その魔法を使わなくとも恐ろしい強さではあったが――アルファ君の不意打ちで、心臓、肺、肝臓の全てに弾が当たっていた。
普通の吸血鬼なら1発でも戦闘不能――即死していてもおかしくない傷をいくつも負っていながら、飛行と飛蝗の魔法を同時行使できるのは流石の一言だったが――
アルファ君の闘いを思い返す、銃による的確な射撃、腹をぶち破られていてもおかしくない吸血鬼の膂力で殴られても平気な鎧、圧倒的な破壊力の罠、最後の飛蝗公をバラバラにした爆発。
銃の勇者の伝説は聞きかじっていたが、あれ程多彩な武装が使えるとは。
「飛蝗公も変な御仁だったからね……世界を支配するより、細々と人間にちょっかい掛ける方が好きだったようだし」
200年前の災厄では、その時代の勇教会の勇者と戦ったようだが――その戦いの後から始まった趣味と考えると、何か感じ入ることでもあったのかもしれない。
「さて……彼をこちらに引き込むかどうか――」
メリットとデメリットを考える……まだ早いか。
アルファ君を監視していた使い魔――羽が刃物の金属でできた蜻蛉――を回収する。
まだ同志達には気付かれていない。
「他の同志に見出されるならそれも良し、別の勢力に付くなら他の同志を間引いてくれるかな?」
まだ彼に手を出す時ではないと、アジトへ帰ることにする。
次に会うのを楽しみにしているよ――アルファ君――




