第十四話がんばれ!駆け出し冒険者!たまにはちゃんと勉強しろ!
熊の報酬や素材について話がまとまり、ギルバードが連れてきた人々が熊の亡骸を運び出した後。
今後の活動方針について、エリックさんのケガが治るまでの1か月は村に留まるつもりだったマリーと俺。
だが、エリックさんが介護を拒否するなど、すったもんだがあった。
最終的には、村長から「1か月の間、猪狩りを頼みたい」という提案があり、それで話が落ち着いた。
その後、俺は村での生活の中で、さまざまなことを学んだ。罠の仕掛け方、山の歩き方、動物の追跡方法、獲物の解体手順、狩猟の心構え……
エリックさんに、狩猟の基礎をみっちり1か月叩き込まれた。
◇◇◇◇
1か月後――
ドンッ、とM40が火を吹き、狙っていた猪の両肺を射抜いて絶命させた。
「まあ、中々いい腕になってきたな、冒険者」
俺と一緒にいたエリックさんが、ぶっきらぼうに言った。
「エリックさんのおかげですよ」
猪を川辺まで引きずり、解体して毛皮と肉に分ける。
◇◇◇◇
村に戻ると、マリーが出迎えてくれた。
「おかえりなさい。今日もいい成果ね」
マリーは少し髪が伸びていて、村長と作ったらしい綺麗な石のついたネックレスや、乾燥植物を編んだミサンガなどの装飾品を控えめに身につけていた。
マリーはロバと一緒に農作業を手伝っていたらしく、1人と1頭で畑から出てきた。
「ただいま、マリー、アシヌス」
挨拶をしながら、ロバの頭を撫でてやる。
どう呼ぶか不便だったので、俺が名前をつけた“アシヌス”。ラテン語で“ロバ”という意味だ。
ヒヒ~ン、と気の抜けた鳴き声を上げ、気持ちよさそうに目を閉じる。
「おぉ、お嬢ちゃん。もう右腕もいい感じだ、何ともねぇ」
エリックさんは右腕を回しながら、回復をアピールする。
マリーはその様子を見て、優しく微笑んだ。
「もうすっかり良くなりましたね。毎日しっかり治癒魔法をかけた甲斐がありました」
その言葉に、俺は治癒魔法について改めて考えさせられる。
思っていたより、ずっと使い勝手が悪い。
一気に治すと、断ち切れた骨・血管・筋肉・神経を強引にくっつけてしまうため、重篤な後遺症が残るらしい。
しかも一度繋げてしまうと、正しく繋ぎ直すには再び切開するしかないそうだ。
「そろそろお前らも、自分のことをせないかんな」
エリックさんのその言葉には、どこか寂しげな響きがあった。
◇◇◇◇
「アンタ達への依頼も今日で終わりさ。ありがとうね」
迷宮都市へ向かう日の早朝、村長宅の前で、村長とエリックさんが見送りに来てくれた。
「本当は猪狩りだけのつもりだったのに、マリーとアシヌスが農作業まで手伝ってくれて、随分助かったよ」
この1か月、俺たちは猪狩りだけでなく、様々なことをして、多くのことを学んだ。
この世界に来てから、初めて"ただいま"と言えた村とも、今日でお別れだ。
「こちらこそ、多くのことを学ばせていただきました。ありがとうございます。この経験は、きっと巡礼に役立ちます」
マリーがかしこまって、村長とエリックさんに礼を述べる。
俺は何とも言えない寂寥感に胸を締めつけられ、言葉が出てこなかった。
「おい、冒険者。これ、持ってけ」
エリックさんが布で包まれた何かを投げてよこす。
布をほどくと、それは手のひらほどの小さなナイフだった。
「エリックさん……これ……」
「わしが若い頃に使っていた青銅のナイフだ。鉄に比べると切れ味は悪いが、錆びても割れねぇ」
その言葉に、俺は感極まった。
多くを教えてくれた師に、深々と頭を下げる。
「……風邪引くなよ、アルファ」
ありがとうございました。
アルファたちは村の人々から、闘う以外の様々なことを学びました。
短めですが、表現方法を変えてみました。




