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第十三話初報酬だ!駆け出し冒険者!酒買おう酒!

「それにしたって大物だねぇ」

 熊を倒した後。夜が明けてから、村の住民総出でその死体を村の広場へ運んだ。


 村長が驚いた様子で呟く。


「すごいわね、1.7ヴィエンティ(2.9メートル)はあるわよ」

 マリーが口を半開きにしながらマジマジと熊の亡骸を見ている。


 マリーの身長基準……多分140cmくらい……で教えてもらった単位を換算する。

 

 1ヴィエンティ=1.2マリー=約170cm

 1カロヴィエンティ=0.12マリー=約17cm


 ……なんでも最初の勇者の身長が1ヴィエンティで、1カロヴィエンティが勇者の親指の先から人差し指の先までの長さらしい……なんだよ親指と人差し指って……


 なので1.7ヴィエンティは289cmになる。


 確かにそのくらいありそうな巨大な熊だ。


「こんな大物、ワシも初めてだ……多分エリミエス山脈からくだってきたんだ」

 エリックさんが左手で自分の顎を擦りながら考える仕草をする。

 

 エリミエス山脈というのは迷宮都市の周りの穀倉地帯から、更に進んだところにある険しい山脈である。


 この村からも薄っすらとその威容が見える。


「村長~、冒険者ギルドの人連れてきましたよ~」

 そんな話をしていると、村長が手配してくれた冒険者ギルドの人がやってきた。

 

 余りにも大物だったので冒険者ギルドに報告するべきだということで、わざわざ早朝から村の男性がひとっ走り呼んできてくれたのである。

 

 冒険者ギルドの人は長い紺の髪を持った女性で腰には細剣(レイピア)を携えている。


「この度は巨大な熊を討伐したとのことで、確認に来ました」

 ニコニコと村長に愛想よく挨拶をしている。


「それで、(くだん)の熊はどこに?」


「あぁ、アレだよ」

 村長が熊を指差すが、冒険者ギルドの人は一瞬怪訝(けげん)な顔をしたかと思ったら、突然目を見開いて熊の死体に駆け寄ってくる。


「こ、これは……ショート・フェイス・ベア……」

 冒険者ギルドの人が驚きに満ちた声で呆然と呟く。


 しばらく放心したように止まっていたと思ったら、突然熊の死体を色々な方向からぐるぐると検分する。


「なんてキレイな状態……こ、これを仕留めた冒険者は?」


「あっちにいるアルファって冒険者だよ」

 村長から俺のことを聞くと、ボケーっと彼女の様子を見ていた俺にすごい勢いで走ってきた。


「アルファ様ですね、討伐に参加した他のパーティメンバーの方は?」

 冒険者ギルドから来たけど、こっちのことはご存じないのね。


 

「パーティメンバーはこのマリーだけど、討伐はこの村の猟師(エリックさん)と2人でしました」

 俺は隣にいるマリーを紹介して、エリックさんの方を手で示す。

 

「馬鹿言え、ワシャぁ何もしとらんよ」

 エリックさんが面倒くさそうに手を振りながら答える。


「2人で!?他に手伝った人とかいないんですか!?どうやって仕留めたんです!?」

 なんかメチャクチャビックリしていて、表情がコロコロコミカルに変わる。


「ソイツの鉄砲(てっぽう)で心臓を1発だ……背中のもソイツの鉄砲だ、ワシは1発も撃っとらん」

 エリックさんが熊の傷を指差して冒険者ギルドの人に説明してくれる。


 嘘は言っていないけど……俺は否定の言葉を出そうとするが。


「鉄砲!どんな鉄砲を使ったんですか!?リミュール(銃の名門)の新型とか!?」

 冒険者ギルドの人が凄い勢いで食いついてきて俺は気圧(けお)される。

 

「ちょ……ちょっと落ち着いて、そんなに食い気味で来られると話せない」

 俺は正直な感想を言って、何とか彼女を落ち着かせようとする。


 その言葉に少し我を取り戻したのか、コホン、と咳払いをする。


「申し訳ございません、取り乱してしまいました。ですが取り乱すほどの凄まじい成果なのですよ」

 落ち着いた様子でなぜそんなに取り乱したのかを説明し始める。


「この熊はショート・フェイス・ベアという魔物で、現在冒険者ギルドが確認している熊系(ベアけい)の魔物の中で最大・最強の一種です」

 おいおいマジかよ、そんなにヤベェ熊だったのか……いやよくエリックさんの腕もげなかったな……


「倒すには熟練(じゅくれん)の冒険者が何人も集まって、強力な炎や雷の魔法や弓矢を大量に浴びせ掛けて徐々に弱らせて倒すものなんです」

 だから、と熊を指し示して。


「こんなにキレイな状態の死骸が残ることなんてないんです。これだけキレイな毛皮なら一体いくらの値が付くのか想像もできません……それだけじゃないです、ほぼ無傷の成獣(せいじゅう)骨格標本(こっかくひょうほん)なんて……いえこれだけキレイなら、はく製に……でもこの大きさを処理できる施設なんて……」

 なんかすげぇテンションで捲し立てて、息切れして、その後ブツブツ呟いている。


 結構線の細い感じなのに、人は見かけによらないな~と思いながら話を聞いていた。


「でもこんな熊の毛皮剥いだりできないよ、俺」

 エリックさんはそういうのもできるのだろうかと視線を送ると、三角巾で吊られた右腕をちょっと上げて首を振るジェスチャーが返ってきた。


「安心してください!すぐに皮革(ひかく)ギルドから人員(じんいん)を呼んできます!」

 冒険者ギルドの人はそう言い残すとメチャクチャ走って去って行った。


「……まぁ昼飯にすっか」

 エリックさんがため息と共に提案してきた。


 朝から熊を移動させたり、ギルドの人を呼んできたりしていたので、太陽はもう頂点に差し掛かっていた。


◇◇◇◇


 昼飯を食った後、村の人の野良作業(のらさぎょう)を手伝ったりして時間をつぶしていると、冒険者ギルドの人がゾロゾロと沢山人を連れて帰ってきた。

 

 そして老若男女の個性あふれる人々が熊の死骸に群がり何やらガヤガヤと話し始める。


「すごい、ホントに無傷じゃない!」

「まさか生きとるうちにこんなモンが見られるとは」「初めて見たけどホントにデカい熊だね!」

「竜も餌にしちまうらしいからな」


 そんな人々を眺めていると、冒険者ギルドの人と偉そうな……威張(いば)っているわけではなくいい服を着て洗練(せんれん)された所作(しょさ)の……人がこちらへ向かってきた。


「貴方がアルファ様ですね、(わたくし)、冒険者ギルドメレーヌ支所……迷宮都市支所と言った方がいいですかな。の支所長のギルバードと申します」

 メレーヌ……そういえば迷宮都市の正式な地名がそんな名前だったな……


 俺はとりあえず 、ペコリと頭を下げて男性……ギルバードを見る。


 なんというか……いい体している御仁である、仕立てがいい派手なフリルの付いた白いシャツに藍色の上着を着ているが、シャツの胸元が開いておりそこから覗く上半身は非常に鍛えられた胸筋が激しく主張している。


「今回はショート・フェイス・ベアを討伐したとのことで、その買取と報酬に関してご相談できればと思い参上しました」


「それならエリックさんとマリーも一緒にお願いします」

 相談と言われても何が適正なのかも全く分からないので、有識者の知識を借りる(マリーに丸投げ)


 その後、村長さんの家で車座になって話し合い、報酬や死骸の買取について話し合った……エリックさんが自分は何もしてないから金は要らんの1点張りで、俺の方は何をどう話せばいいのかわからなかったので殆どマリーしか話していないが……


「では、先に手付金をお支払いいたします。その後毛皮や素材が売れましたらそこから手数料を引いた額を冒険者ギルドの銀行口座へ送金いたします」

 

「お願いします、エリックさんもこれを機に口座を開設してそこに入金しますね」

 なんかマリーさんとギルバードさんでちゃんと纏まったらしい。


「アルファ様には冒険者ギルドより、大型獣殺し(ラージ・キラー)の称号が送られますので青銅(ブロンズ)クラスから純銅(カッパー)クラスにランクアップとなります」


 冒険者ギルドへの登録時に説明された後、すぐ忘却していたランクがアップしたらしい。

称号ってワクワクしますよね。

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