第0話降誕の儀式
1組の男女が祈りを捧げている。
その様子は一見するとただの礼拝のように見えるが、場所があまりにも異質であった。
石造りの建物は随分前の火事が起こったのか屋根は無く一部の木製の柱や椅子であったであろう焦げた木片が転がっており、崩れた石壁が健気にもこの土地に建物があったことを主張している。
そんな場所で祈りを捧げる男女の眉間には深い皺が刻まれており、その額からは汗が流れ落ちる。
祈る先は長い月日によって土と埃が積もり苔生した石の床、そこにはその存在を知っていなければ判別できない、魔法陣が刻まれていた。
男がほとんど叫ぶように祈りの口上を唱える。
「神と奇跡の写し身よ、日の先の影よ……どうか我らの祈りと命を代価としてどうかその御姿を!勇者よ我が子たちを救い給え!」
男が言葉を虚空に投げ終えると同時、床に刻まれた複雑な紋様が輝き浮かび上がる。
「おおおぉぉぉ……」
男が苦悶の声を上げながら倒れる、まるで男の命が魔法陣に吸い尽くされるかのように輝きを増していき逆に男のうめき声は小さくなっていく。
うめきが途絶えるが、その獰猛な輝きは男の全てを奪おうとその肉体も枯れ木のように干乾びさせ灰のように崩し、やがて男の痕跡は少しばかりの砂ぼこりだけとなってしまった。
「あぁ……父さん……」
共に祈っていた女がその光景を悲しげに見つめる。
そして輝きは最高潮となり、眩い光が集まり人間の形を取り始める。
「これが……勇者降誕……」
光が収まったとき、そこには1人の男が立っていた。
初めまして、妄想の産物が溜まってきたので初めて投稿します。
拙い部分が多いですがよろしくお願いします。