3 占いと噂
階段を上がると再び同じ景色が広がる。
ソードマンとウィザードが前を歩き、その後ろを俺とプリエステスが続く。時折現れる魔獣は前の二人が即座に切り捨てたり、小さな竜巻きで意識を刈りとる。魔石は溜まっていくが、いずれも小さいので荷物にはならなかった。
プリエステスが前を見ながら、声を低くして話しかけてくる。
「そういえば、先日、信仰者共同体でプリンセスにお会いしましたが、プリンスのことを心配していました。特に今回の試練の塔のことを」
プリンセスとは王位継承権第二位の、一つ下の妹だ。妹と俺は仲がいい。妹は王位には興味がなく、カッコいい探索者と結婚して、国々を旅行、探索しながらおいしいものをたくさん食べたいそうだ。早く俺に王位を継いでもらって自分は自由の身になりたいと、いつも言っている。
「心配? なんの心配だろう?」
「どうも占いではよくない兆候が出たとか。よくない噂もあるとか。プリンスは耳にしていませんか」
「占いの話は聞いているよ。妹は心配症だからね。占いはあくまでも占いさ。ソードマン、ウィザード、それにあなたもいる。対策はしっかりしてるつもりだ」
「噂は……聞いていますか」
「いや、聞いてない。よくない話は俺の耳に入れないように、周りの人間が配慮していたのだろう。どんな噂だ?」
「プリンスを失脚させて、プリンセスが王位を継ぎ、他国から婿を取らせようという話です……」
「なるほど、そんな噂だったら、プリンセスはさぞかし心配だろう。あいつは早く俺に王位を継がせようとしているからね。さては、もうカッコいい探索者を見つけたのかな」
「それはまだのようです」
「……なぜわかる?」
「同じ女どうしですから。そんな話もよくしてるので」
「えっ? プリンセスとそんな話までしてるのか?」
「……ええ、実は、仲がいいんです。目立たないようにしているので、気づいている人は少ないですが。私の相談もいろいろしてるんです」
「それは驚きだ。人の繋がりってわからないな」
プリエステスは、ええ、ほんとうに、誰がどこで繋がっているかはわからないですね、と微笑みながら答えた。
話に夢中になっていたが、三階層への階段が見つかったようだ。前を歩いていた二人が、こっちだと声をかけてきた。