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プリンスの冒険  作者: テレパスたまちゃん
第一章 プリンをめぐる冒険
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2 禁止

 現在、僕の家庭内の立場は弱い。弱いというより、ないと断言したほうが適切かもしれない。学生でもない、働いてもいない、それらの予備軍である。来年で、どちらかに決まる。できたら、いや必ず、あと四年は学生生活がしたい。今の時代、選ばなければ入学できる大学はあるが、しかし、進学するのであれば、自分の希望する大学に進学したい。


 ただ、残念なことに、いや残念ではないのだが、家庭内で大きな態度に出られないのは、志望している大学が、国立でもなく、私大でも高偏差値の大学ではないところだろう。国立とか高偏差値の私大であれば世間体も良かったのだろうが、志望しているの、まあ、二流の大学である。


 しかし、僕にとっては一流である。世間の評価と自分の評価とが異なるが、この場合、世間に合わせる必要はあるまい。それに、もし、世間でいうところの一流大学に進学したら、僕はきっと学歴を鼻にかけた嫌な奴になるに違いない。世間の二流は、僕にとっては一流で、しかも社会に出たとき、謙虚に努力を重ねられる学歴となるはずだ。

 これは僕の理屈で、家族は、え? そう? という感じで理解に及んでいないようだが、唯一人この理屈を首肯し、喜んでくれるのはたまちゃんだけだ。ただ、たまちゃんの賛意には、わずかに不純なものが混じっているように感じるのだが、気のせいだろう。たまちゃんは純粋な子である。

 たまちゃんは、なぜか家族からは女子大を勧められていると聞いたが、その後どうなったのだろう。



 午前中は静かに部屋で仕事べんきょうをする。午前中からフラフラ出かけたら、何を言われるか、わかったものではない。


 午後、三時のおやつを買いに行くと言って出かけようとしたら、何を買うのか聞かれた。プリンを買おうかと思っている。そう答えると、プリンか、添加物が多そうだな。添加物の入ってないのを買ってこい、と姉の声がする。長男はお腹が弱いんだから、ちゃんとしたものを食べないと、またお腹痛くなるぞ、たまごと牛乳と砂糖から作られたプリンを買ってこい、そう追い討ちをかけてくる。

 大学が休みのようだ。逆らうと大変なので、わかった。そうする。と答えておいた。


 外に出ると暖かで、のんびりした一日だ。コンビニに行くか、スーパーに行くかどっちにしよう、そう思って歩いていると、制服姿のたまちゃんに会った。今日はメガネっ子だ。


 たまちゃんの本名は、堀田真理ほったまり。真ん中の「田真」をとって、みんなから「たまちゃん」と呼ばれている。近くに住んでいる同じ高校の後輩だ。高校一年まではメガネだったが、二年に上がったら、洒落っ気が出たのかコンタクトにしてしまった。僕が強くメガネを勧めたら、コンタクトをしなくなってメガネに戻りつつある。なんて、かわいいんだ。

 かわいいたまちゃんだが、なんでも「真理」という名前は、かわいく誰からも愛されるようにと、祖父の好きだったアイドルからとったらしい。なぜ父ではない? とその話を聞いたとき思ったものだ。もし父だったら、きっと乙葉とか小雪とかになっただろう。

 堀田小雪ほったこゆき、「たこちゃん」か。父じゃなくてよかったのかもしれない。


「先輩、こんにちわ、どこ行くんですか?」

「おかえりー、もう学校終わったの? 僕はこれから三時のおやつのプリンを買いに行こうと思って」

「三年だから、午前で終わるんですよー。午後の選択は取ってないので。

 また、サボってるんですか? だめですよ。ちゃんとやんなきゃ。

 そういえば、うちの家族、とうとう折れました。女子大じゃなくてもいいって。許可が出たので、来年、先輩と同じ大学行けますよー。今度は同じ学年で四年間過ごせますねー。楽しみだなぁ。二人の四年間のために、ちゃんと勉強してくださいね」

「はいはい、了解です。がんばります」


 まだ、たまちゃんとつきあっているわけではない。だが、たまちゃんは、おしてくる。まあ、そこも、さらに、かわいいところなのだが。

 同じ大学に入るのはいいが、入学後は「先輩」はやめて、名前を呼んでほしい。そのときにお願いしよう。


 たまちゃんと別れて、僕はとりあえずスーパーに向かった。



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