10 俺がメガネを掛けたら
名前は思いつかず、結局、プを抜いて『リンス』にした。
自己嫌悪になった。
年齢十八、その他の欄はすべて不明としたが、不明のまま通った。それでいいのかとも思ったが、受付嬢がコッソリ気を利かせたのかもしれない。
探索者のレベルは五段階あって、俺は一番下の『1』だった。まぁ、そうだよな。小さな金属板を渡されて、無くしたら、振り出しに戻りますと言われた。なんだか双六みたいだ。
大通りに戻って再びぶらつく。武器屋とか防具屋などもあるが、素通りする。プリエステスが帰ってきてからだ。そういえば、プリエステスって、どんな名前なんだろう。帰ってきたら、俺の名前を教えるのと交換で聞いてみよう。
道具屋があったので入ってみた。実は白眼を少し気にしている。こんな目をしている人はあまり見たことがない。構わないと言えば構わないのだが、今の状況からして、目立つことはあまりよろしくない。ちょっとでも印象を和らげようと思い、メガネをしたらどうかと考えているのだ。
思った通り、メガネも置いてある。が、種類はない。よくある丸い黒縁だけだ。首都だったらもっと種類があるのだろうが、贅沢は敵だ。
レンズを入れても靄は取れないだろう。視力矯正ではないのでガラスで十分。金額面でも高くはないので、作ってもらうことにした。一時間ほどでできるという。その間街をぶらついていることにした。
一時間ほどしてから、道具屋に戻って、メガネを受け取る。
「一度掛けてみてください。フレームが当たって、気になるようなら調整しますから」
そう言われて、掛けてみる。
フレームは当たらないが、へん、な、感じがする。レンズではなくガラスのはずなのだが。
「入れてあるのは、レンズではなく、ガラスですよね」
一応確認するが、おじさんはガラスです、ですから、お安いんです、と言う。
フレームは当たらないのでこのままで、そう言って、代金を払って、店を出た。
でも、やっぱりへんな感じがする。
へんな感じはそのままに、今日はここまで、そろそろエクレシアに戻ろうと思い、帰途に着く。
しばらくすると、気持ちが悪くなってきた。体力が戻ってない中で無理をしすぎたか。そう思って、エクレシアに戻ると、夕飯以外はメガネを外して横になり、身体を休ませた。