8 今後の相談
疑問が残った加護の確認のあと、プリエステスと一緒に今後、どうしたらよいのかを相談する。
プリンスは死んでいるので、俺は別の人として生きていかねばならない。
それは、プリンスという権威から外れて生きるので、今までのような経済的な自由はなくなるだろう。働いてお金を稼ぐ必要が出てくる。王家の者以外はみんなしていることだ。
また、王家という権威、いわば、しがらみがなくなるので、自由に生きることができる。妹がしたかった生活だ。
俺は王位について立派な政を行い、国を発展させることが使命だと思っていた。その俺が自由の身になり、自由な生活を夢見ていた妹が、今のままだと王位につかなければならない。皮肉なものだ。
プリエステスにこれからどうするのかを聞くと、一度首都に戻り、現王、プリンセスに、ことの次第を報告をしなければならないという。
首都には既にプリンスが亡くなった報告と遺品の剣が送られている。実は生きているのだから、そのことをきちんと報告しないわけにもいかない。かってに取ってしまったとはいえ、宝物庫のハイエリクサーで命を吹き返したという報告をして、顔を立ててあげないとプリンセスもかわいそうだというのだ。
報告を終えたあとはまたトリアルに戻るので、戻ったあとは俺に任せるという。
俺は頭の中を整理して、まずは二つのわからないことを明らかにしようと決めた。
一つは、俺を殺そうとした二人は誰の指示を受けたのか、黒幕は誰かということだ。目的は噂にあるような国の乗っ取りなのか、それ以外なのかは、今はわからない。黒幕が分かれば、目的もはっきりするだろう。
もう一つはプリエステスの読めない二つの加護はなにか、どのような能力が発動するのか、ということだ。王家の加護よりも上位に位置しているので、証明乃杖で加護を調べられても、水晶をこすらない限り、俺が王家の人間だと知られることはないだろう。
俺はそのことをプリエステスに説明したあと、この二つの謎を解明するために、探索者となって旅をしようと思うと話した。するとプリエステスは、それでは一緒に旅をしてもいいですか、と俺に問う。
プリエステスには命を救ってもらったし、回復魔法を使える者がいれば、なにかと助かる。断る理由などなかった。
「それでは首都から帰るのをトリアルで待っているよ。一緒に旅に出よう。待っている間に、いろいろ用意をしておくから」
俺がそう言うと、プリエステスは、小さく二回うなずき、待っていてくださいね、そう言って首を少し傾けて笑った。