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ママと冒険者と許可制と罠XIII


「しょ、処刑とかそんなじょうだ」

「――冗談に聞こえたか? 聖姫様っていうのは清らかな温室育ちらしいな」


 剣呑な眼差しで睨み据えられ、言い訳のように言葉が詰まって出る。


「だ、だだって、わたしがちょーっと居なくなったからって、そんなすぐに処刑どうこうだなんて……」

「ハッ、凶悪な女だな。知ってて遊び半分でわざとやったのか? ――それとも、本気で自分の立場も自覚せずに外を暢気にふらふら彷徨いてたのか? ……お前の軽挙妄動のおかげで大量の死人が出るだろうな」

「た、大量の死人……?」

「もしこのままお前が無事に戻らなければ、レオンハルトたちだけでなくあの付近にいた無関係の者たち全てに罪が及ぶ。老人から赤子まで処刑に例外は無い」

「うそ……」


 そんなばかな……だからあれほどミハエルパパはわたしの外出に難色を示していたのか。

 とはいえ――お、おもい! 罪が極端に重すぎる……!


 せいぜい少し怒られるかな? 程度だと思ってたから暢気に構えてたのに……!

 もし無事に戻れても、その間に少し行方不明になったせいで大量の死人が出てたら、ちょっと家出した程度の罪悪感どころの軽い問題じゃなくなるよ……!


「――は! ママ……!」


 まさかママまで処刑の対象じゃないよねッ!?

 わたしが居なければ不要とかなんとか言われてあっさり処分されたりとかしないよね!?


 最悪なことに、どうやらわたしの行方不明にはミハエルパパも処刑対象になるらしいから、ママを守ってくれる人がどこにもいないことに!

 ……全部わたしのせいなのは間違いないけど、ごめん言わせて!


 ――ミハエルパパってば肝心な時に使えないよ! 役立たず!

 そしてわたしの立場が思ったより厄介過ぎる!


 役立つどころか厄立ってるよ! うわーん!

 ママを助けるどころか……わたしの厄介者おおおお……!


 とても薄情かもしれないけど、もしどうしようもなくなって誰か一人だけを助けられるから選べと言われたら、迷わず自分よりママを選ぶと思うくらい口では何を言っててもわたしはママが大好きだ。

 だから罪の無い一般人とミハエルパパたちにはほんと薄情で申し訳ないんだけど! なんだかんだわたしにとってママが最も大事な存在だから真っ先にママを優先してしまうのだ。

 行方不明はわざとなったわけではないけど、わたしのせいでママに何かあったらどうしよう……。


「……は、半日って言ったよね?」

「ああ」

「それより先に戻れたら、無かったことには出来るかな……?」

「無かったことには出来ないだろうが……お前が無事に戻られれば罪を処刑より軽くする説得くらいは出来るだろうな」

「よ、よかったぁ……」

「半日以内に無事に戻ることが出来たら、だが」

「分かってるよ!」


 いちいち怖い事言わないでよ! 趣味なの!?


「でもどうしよう……先に進むにはやっぱりなんとかコレを起動させたほうがいいんでしょ……?」


 ――こうして問題はより深刻になって最初に戻って来た。

 最初のお気楽だった時とはわたしの顔の真剣度合いも段違いだ。


「それなら問題ない。指輪の正体が分かった」

「正体が分かった……!?」


 て、どういうこと? 指輪の正体? 呪いの指輪って話じゃ?

 呪いじゃなくて実は――。


「――指輪は仮の姿で、本体は指輪に封印されて生きてます、とか?」

「ああそうだ」

「そんなわけな、……えっ生きてるの、コレ!?」


 適当に言ったことが当たってた件について。


「正確には、シャレミイの本体から分離した分体が封印されている聖具だ」

「しゃれみい? せいぐ?」

「……まさかとは思うが。聖姫なのに自らを呼び寄せた尊き女神の名や、その女神と関わり深い聖具を知らないのか……? 言い伝え通りなら、呼ばれた際に女神と会話をしたはずだろう……?」

「女神が呼び寄せた!? それに会話!?」


 気絶してたらいつの間にかあら不思議異世界召喚! な状況で、そんな重要そうな話なんてした記憶まるでないし、そもそも目の前の女神っぽい俺っ娘属性の設定盛り盛り美少女以外にそれっぽい人と会ったことなんてないよ!

 ――そうか女神シャレミイ、お前がわたしとついでにママを巻き込んで召喚した犯人かー! 説明もなく異世界にいきなり放り込むなんて、おのれ! とんでもないやつだ! しかと名前は覚えた!

 ――とりあえずいつか会えたら一発ぶん殴る! それがお約束!


「急に鼻息荒くしてどうした……」

「なんでもない! それで? この指輪が聖具とやらだと分かったとして、有り難ーい女神様の指輪だって以外に何か意味なんてあるの?」


 大体こういう場合の聖具とかいう小道具は、奉られるだけで特定の条件下や使用者でないと役立たずというものだ。

 そしてわたしの数々のテンプレを無視しやがったにっくき指輪が、これまでに指に嵌まる以上のアクションを何も起こさない以上、聖姫専用装備というだけのただの飾りの可能性は高い。


 たとえば勲章とかいざという時の身分証明とか、考え得る限りそれ以外の何かに役立つとは思えない。

 今後この指輪があれば聖姫の証的なものとしては使えるかもしれないけど、それは今必要じゃないし……。


「――大有りだ。伝承が全て正しければ、聖姫であるお前が名前をその指輪へ登録すれば、今まで不在だった管理者となってここから容易く出られるようになるはずだからな」

「な、なな名前をと、登録……!?」


 そういえばその手のテンプレがまだあった……!

 ガクッ、と思わず膝を地に付きそうになって堪えた。


 ――そうだよ。なんで思いつかなかったんだろう!?


 まさにこれぞSFのテンプレだよ!

 特別な存在の主人公の何かに反応して、登録!

 血であれ、声であれ、名前であれ!

 ほんと、なんで思いつかなかったんだろう!?


「――美愛(ミア)。16歳」


 ちょっと迷ったけど、苗字は諸事情で変わり過ぎててどれが良いか分からないし、ママの生家の姓は聞いたことないから確実な名だけにした。

 ……ついでに年齢を言ったのは念のためである。


 重要な書類には名前と年齢は確実に入ってるものだし、住所とかは王宮で居候だから分からないし、性別は聖姫専用装備なら不要かなって判断。

 生年月日はこっちではいつになるか分からないけど、年齢なら大体で合っていれば良いかなって判断だけど――。


 ――ピピッ!


『――認証プログラム起動。――確認。聖姫、ミア。登録手続きを開始します』

「反応したっ!」


 嬉しくなって思わずシャルル俺っ娘へ笑いかけたが、何やら複雑そうな顔をされていた。

 なして?


「……なんて言って聖具が反応したんだ?」

「えっ、普通に名前と年齢だけど……」

「俺には今も聖具が何を言ってるのか、全く分からない。だがお前が先程発したのと同じ言語だろうことは分かる。初めて聞いたが、神の言葉というやつかもな」

「そうなの……?」


 感心したように後半に「聖姫、まさか騙りではなく本物だったとは……」と続けてまだ失礼な事を言ってるシャルル俺っ娘の言葉をスルーしつつ、わたしが神様の言葉で話しちゃうとか、それってなんてチートなの? と指輪を凝視。

 ……意図してなかったただのチートの不具合とかだったり?


 でもそんなことってある? 聖具とはいえ翻訳相手は指輪だよ……?

 聖具なら翻訳とか要らないだろうし、やっぱり欠陥チートだった……?


『――登録完了。現在の好感度を開示します』

「現在のこっ、」


 好感度!? ……ってなに!? 誰のッ!? 思わず反芻しそうになって慌てて口を噤んだ。ここにきて唐突に意味深長な重要ワード。

 異世界召喚で状況的にはそうかもしれない、とは思ったことが何度かあったけど、まさか本当にここってわたしの知らない乙女ゲーか何かの舞台だった――!?


 ――だとしても。おかしい。

 だってまだわたしは誰も攻略してないはずだ……。たぶん。


『――深雪(ミユキ)


 みゆきっ!? ママ……っていきなり邪道!

 やっぱり乙女ゲーではなかった……?


『120%。母親。状態:絶好調』

「――――」


 ――絶好調ってなんですか……?

 によ、と上がった口角がすぐさま引きつり笑いに変わる。


 そもそも状態:絶好調ってどんな状態なんですか女神様――!?

 いきなり不良品を掴まされた気分だ。召喚の時の会話も勝手にスキップされたみたいなのに、この指輪にしても説明不足にもほどがあるよ!

 まさか説明不足が女神デフォルト――!?


 そもそもからして、母親が攻略対象の乙女ゲーとか聞いたことないから、やっぱり最初からわたしの早とちりの勘違いだったりとか……?


『――――』


 ……指輪に反応なし。

 勝手に好感度開示とか始めたけど、やっぱり質問とかは全く受け付けない感じで……?


『――ミハエル・エルシュネイン』


 ミハエルパパだ! ママで終わりじゃなかったんだ……。


『55%。パパ。状態:瀕死』


 瀕死!? なにがあったの!? それにパパって……パパって……!

 まだママの婚約者であってパパではない……ッ!


 ――ピピッ!


『――訂正要請受諾。パパから深雪の婚約者へ自動訂正完了』


 ――えっ、受諾!? そこは反応するんだ……。

 無駄にレスポンスとクレームへの対応が素早い……! 有能!


 でもその有能さをもっと違うことに発揮してほしいなぁ、なんて。


『――――』


 ……指輪に反応無し。――ダメだこの不良品。

 絶対に、何があってもわたしの質問には答えない気だ!

 しかも取り外し不可能で返品不可とかなんて悪質極まりない……ッ!


「……それはそれとして」


 55%か……なんて微妙に反応に困る数値!

 無事に戻ったとして、この数値がちらついて今後ミハエルパパとは顔が合わせづらいよ……? どうしよう……。


『――レオンハルト・パシオネイト』


 レオンお父さん(仮)! こんなとこで初めて苗字知ったよ!


『75%。お父さん(仮)。状態:熱愛』


 ね、熱愛!? ミハエルパパの瀕死といい、一体どういう状況!?

 しかもちゃんと(仮)って……無駄なところで学習能力高すぎない!? この指輪!

 絶対にわたしの心の声、届いてるでしょ……!


『――――』


 ――急に沈黙。そしてやっぱり指輪に反応無し!

 ねえ、もしかしなくとも意図的に無視してる!? ねえぇ!?


『――――』


 むうぅ……この指輪の言う事を全部信じるなら、ママは絶好調でミハエルパパは瀕死。そしてレオンお父さん(仮)は熱愛、ね……。

 その心は――修羅場! 絶対に修羅場になってるよ! 間違いない!


 わたしが行方不明なことで大変なことになるってシャルル美少女から脅されてビビってたのに、なんか違う方向で大変なことになってるよね!?

 愛娘が行方不明なのに、一体なにやってんのママたちは……。


『――検索。深雪、ミハエル、レオンハルト。結果:状態:修羅場』

「…………」


 あれ……もしかして、散々引っ張っといて実はただのネタ装備だった? ねえ……?

 いくらなんでもおふざけが過ぎるよ、女神様……!


『――シャルル・レーツェルリーベ。(マイナス)28%。美。状態:普通』

「ま、いなす……!?」


 ――まいなすって、マイナスッ!? それに美ッ!?

ネタそう、び……? (; ・`д・´)ハッ!?

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