ママと冒険者と許可制と罠Ⅹ
ぴかあああぁぁ!!
「うぇっ?」
うぇってなんだ、うぇって。
懐中電灯を向けられた時みたいな強烈な光が急に目に入ってきて、思わず変な声出た。
「おい。指輪が……」
「え、……うっそぉぉお!?」
今の光はなんだったんだろう……と首を傾げようとして、シャルル美少女の何かに驚いたような声に反射で持ってた指を見た、ら指輪を持ってなかった。
というかいつの間にか指に嵌まってた。
――なんで!? もしかしてさっきのぴか! てやつで!?
勝手に人の指に嵌まる指輪だなんてまるで――。
「えええ! ももも、もしかして呪いの指輪とかだった!?」
「それなら拾った時点で呪いは発動してたはずだ」
「そ、そうなの? よかっ――」
「条件を満たして初めて発動する特殊な呪いかもしれないが」
「どっちなの!?」
うぇーん! はーずーれーなーいぃー……!!
「見せてみろ」
「外せないから無理だよ!」
「――ならお前がこっちに来い」
ぐっ……。
さっきのシャルル美少女御乱心もあってか、まだ心理的にちょっと向こう側に戻るのは抵抗がある。
……あるけど、それよりも呪いかどうかも分からないアイテムがこのままずっと永遠に外れないかもしれないほうが嫌だ。
「おい……なんだその動き」
じりじりじりじり、ちょっとずつ様子見しながら進んでいくわたしにシャルル美少女が珍妙なものを見る目でツッコんだ。
し、仕方ないでしょ! まさか安全地帯に居る時のほうが冷静に見れちゃって余計怖さを感じる原因になるとは思わなかったの!
しかもすぐ後に安全な境界を超えるとか心理的ハードルが高すぎなの!
とはいえ、――。
「――もっと近くに来い。結界越しじゃ判断が難しい」
「やっぱりそっち側に戻らないとだめ……?」
「逆になんでこっちに来たくないんだ」
さっき見たあなたの御乱心がめちゃくちゃ怖かったからです!
と言えればいいが、さすがのわたしもそれを今言ったらシャルル美少女のご機嫌を損ねるのは理解していたので空気を読んで絶対言わない。
それでもなんとか結界が見えた境界越しで鑑定してもらおうとギリギリまで近づいてみたものの、シャルル美少女から文句が入ってしまった。
このまま永遠に向かい合ってても仕方ないし、ここはわたしが観念するしかないのかも……。
「ええい、ままよ!」
芽生え掛けのトラウマを無理やり抑え込んでぴょん、と縄を飛び越える動作でシャルル美少女が居る結界側に戻った。
シャルル美少女の時みたいにやっぱり何かわたしに反応することもなく、特に何も感じずすんなり結界を超えられてしまった。
「遅い」
「ごめんなさい」
反射で謝ってから、すぐさまシャルル美少女の顔を見ずにスッと指輪の嵌まった右手を差し出し俯いた。
そのまま見分する為にか手を取られ、さらに顔を近付けて見ているのか何やらシャルル美少女の吐息っぽいものを感じて背筋がぞわぞわした。
――これ、もし顔上げて直視したら悶絶するのでは!?
鑑定のせいか、いつの間にかお互い沈黙してたのがなんだか気まず過ぎて、とても要らんことを考えてしまった。
手を握られっぱなしな上に傾国美少女が近くにいると妙に緊張するから、出来るだけ早く終わってほしい。
「「――――」」
うーむ。もしこの指輪が呪いのアイテムだって分かって、しかも一生外せないとかだったらどうしよう。
今のところ害らしい悪影響は何も感じられないけど、急に光り出して勝手に指に嵌まったくらいなんだから、気付かなかっただけでもしかしたら何かしらの害は既にあった後なのかもしれない。
シャルル鑑定士の見分が終わったら念のため色々聞いてみよう。
「――なるほど」
「あ、終わっぶふぅ……!!」
やっべ。御尊顔が近くにあるのうっかり忘れてたよ。変な息漏れた。




