ママと冒険者と許可制と罠Ⅵ
「おいおい。そう言うなって。お前だってちっこい頃はよく遊びに来てただろうが」
「黙れ。そんな記憶はない。勝手に捏造するな」
やれやれ、と言わんばかりにレオンお父さん(仮)が首を横に振った。
向こうから声を掛けてきたからそうだろうとは思っていたけど、シャルルと呼ばれた究極美少女とお父さん(仮)は親しい知人らしい。
「すまんな、ミア様。あいつの態度に悪気は無いんだ。ちょっと早めにA級になれたくらいの才能があったからって調子乗ってんだ」
「誰が調子乗ってるんだ、誰が」
すかさず否定してきたものの、話を聞いてなるほどとわたしは思う。
この耽美な美しさにプラスして相応の強さも生まれつき兼ね備えてるなら、誰でも調子こいちゃうんだろうなと。
「――なんだその顔は。ムカつく」
「えっ」
言いながらカツカツ、とブーツを鳴らして物凄い早さで近寄って来た美少女に面食らう。
ちちち、近い近い近い!! たたた、耽美! 耽美圧が近いっ!!
「な、」
「お前、野暮ったいが確かによく見たら顔は悪くないんだな」
クイッ! と強引に顎を持ち上げられ、間近に美貌の暴力な顔を寄せられてパニックになる。
あ、よく見たらメイクバッチリだこの人。とか良く分からんことに気付くくらいにはパニックになる。
「――今すぐその手を離さなければ、斬ります」
「過保護でおっかない護衛だな。ならこんなとこに連れてくるなよ」
ぱっ、とすぐさま顎からゴツゴツしつつも長く美しくしなやかな指が遠ざかった。超絶美少女からの顎クイを食らって行動不能に陥ったわたしを助けるため、冷戦中だったはずのミハエルパパが助けてくれたのだ。
――ありがとう、ミハエルパパ! ありがとう!
やっぱり時代はミハエルパパだったんだ!
さっきは他にお父さん作ろうとしてごめん、ミハエルパパ!
ちょっと憧れのお父さんへの近さにぐらっとしただけだから!
単なるノリだったから! 許してっ……!
「わりぃな。俺が居ればちょっかいかけるやつ居ないと思って連れて来てやったんだ。初めての外出できらきらした目をされちゃ期待に答えたくなっちまってなぁ」
「初めて? 変装も雑なうえにあからさまでバレバレの護衛付きだとは馬鹿かと思ってたが、とんだ箱入り娘だったか」
「ば、ばか……」
町娘っぽくて街中に埋没出来るような服装を選んだはずだ。実際、外に出てみて他の人と格好に大差はなかった。
むしろシャルル美少女の先鋭的が過ぎる服装のほうが目立つと思うんだけど!
その言われようはなんか、納得いかない!
護衛は確かにミハエルパパが騎士の恰好のままだし言われても仕方ないとは思うけども!
でも他にも似た格好の人もいたからそこまで目立つこともなかったはず!
それなのに馬鹿とはなんだ、馬鹿とは!
「そ、そんなコスプレ上級者みたいな恰好出来ちゃうような人に言われたくないですぅ!」
「こすぷれ? なんて意味か知らんが馬鹿にされてる気がするな」
「違いますぅ! 褒めてるんですぅ! あなたと違って!」
「はあ?」
とにかく何か言い返してやろうと試みたものの、悪口に出来そうな弱点が咄嗟に見当たらないほどの完全無欠な美少女っぷりに何故か最終的に褒め言葉もどきみたいなのしか出てこなかった。
――くそぅ! 唸れ、語彙力! 迸れ、罵詈雑言力! 漲れ、毒舌力!
ぱんぱかぱーん。作者イチオシワード大賞入賞!
「唸れ、語彙力! 迸れ、罵詈雑言力! 漲れ、毒舌力!」
最初の語彙以外、うおおおおおおおおって感じで求めちゃいけない系powerです。




