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ママと冒険者と許可制と罠Ⅳ


 黒めな紺色のヒールブーツに、赤いスカート部分と黒の片足スパッツらしい部分とで色が分かれたスカートパンツ。

 簡易な皮鎧は着けているものの、へそ出しした黒紫色のクロップタンクと細かなレースが肩をタトゥーみたいに繊細に飾っていて、二の腕から先は同色のフィンガーレスロンググローブの手袋がぴちっと吸い付くようにピッタリサイズで着こなされていた。


 なんだこの、いかにもなオシャレコーデ最先端です! みたいな完全に人を選びますよと言わんばかりの、一歩間違えば似合わずに絶対に笑われるネタコースだろうコスプレ手前な服装は。

 さっきまで異世界あるあるなんちゃって中世ヨーロッパみたいな民族的なワンピースドレスや重鎧、良くて現代スーツもどきの軽装鎧みたいな完全に実用重視なのを着る人しか見掛けなかったはずなのに、急に先鋭的が過ぎる。


「――レオンハルト。誰だ、そいつらは」

「ぶっ……」


 アニメか海外とかのモデルさんとかでしか見た事ないようなイケイケな服装が視界に突然現れた情報量のせいで、そこに目が行くあまり肝心の着こなしてる本体をちゃんと見てなかった。

 前髪が斜めなウルフカットといえばいいのか、ミディアムくらいのふわふわの白髪の癖毛で、色素が薄いアイスブルーの瞳のめちゃくちゃクールな感じの超絶美少女が、嘘みたいに長い睫毛をバシバシさせてこちらを怪訝そうに観察していた。


 というか、女性声優が出すようなハスキーな少年ボイスで声まで良いとかすご。好きな声優さんに似てて、ちょっと思わず吹いちゃったじゃん。

 情報量が多すぎて、ある意味では危険を伴う視界の暴力から、暖かみのある赤褐色の髪と優しい緑の瞳の野性的な美丈夫であるレオンお父さんのほうへ視線を逃した。

 ……ミハエルパパ? ちょっと今冷戦中なので。


「シャルルか。今護衛の仕事で街中を案内してるんだよ」

「ふん。SS級の価値も地に落ちたもんだな。そんな野暮ったいブス貴族のちんちくりんお嬢様の護衛とは」


 カッチーン。なにこいつ。ちょっと可愛くて綺麗な名前で、ちょっと好きな女性声優さんに似た素晴らしく良い魅惑のハスキーボイスで、ちょっと歩く絵画みたいな芸術的価値高めな耽美系究極美少女だからって、――言って良い事と悪い事があるんだぞ!

 てか何故にわたしにしか言及しないの。そんなに魔性な美女であるママと似ても似つかないって? 知ってるし!


「おい。そりゃあお前の基準じゃそうかもしれないが、ミア様はとっても愛らしくて可愛らしいお嬢さんだろうが」

「レオンお父さん……!」


 好き! お父さんになって!


「……お父さん? レオンハルトお前、貴族の未亡人と結婚してたか?」

「いや、してないが」

「だがお前、そこの麗しく美しいご婦人はなんだ」


 ママとの扱いに差があり過ぎる件について。知ってたけど!


「ミア様のお母さんで、ミユキだ。結婚はしてないが、父親にならないかとは口説かれてるな」

「……………………娘?」


 おいなんだその間は! 失礼にもほどがあるんですけど!


「――ふーん」


 相手が超越的美少女過ぎるせいで気後れし、レオンお父さんの後ろにこそこそ隠れて睨むことしか出来ないわたしを、シャルル美少女がママとあからさまに見比べて鼻でハッと嘲笑った。

 むっきー! なんて失礼なやつ!


「それで? ミア様とやらは冒険者ギルドに如何様のご用件で? まさか冒険者になりにきたとかではないだろうがな」

「ち、違いますぅ!」


 そう。本当に違う。わたしはただ見学がしたかっただけなのだ。何故ならここは冒険者ギルド。ファンタジーの定番なのだから。それがわくわくしながら入ってみたら、いきなりパンチの効き過ぎた極上美少女と遭遇とか予想外過ぎただけで。

 とはいえここがそうだとは最初は知らなかった。女性が沢山出入りしているという理由が先だったのだ。それがまさか、わたしが先程行きたいと言っていた場所がそうだったとは思いもよらなかったただの偶然である。


「ふん。なら依頼か?」

「ち、違いますぅ……」

「チッ、お嬢様の興味本位の冷やかしだったか。中はもう見ただろ。あんたみたいなのはお呼びじゃないってな。とっとと消えろ」

「うっ……」


 くっ、正論過ぎて何も言い返せない……。くそぅ、クール美少女めぇ。


「おいおい。そう言うなって。お前だってちっこい頃はよく遊びに来てただろうが」

「黙れ。そんな記憶はない。勝手に捏造するな」


 ちょっと目を細めて睨んだだけでミハエルパパもびっくりな冷気を大量生産する美少女の迫力にとばっちりで震え上がったわたしは、頼りになるお父さんの後ろにすぐさま隠れたのであった。

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