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ママと冒険者と許可制と罠Ⅱ


「――ステイ、ママ! ストップ、ママ! あああああ……」


 外に出る為に新たな護衛兼案内人を紹介すると言われて赴いた訓練の為の演習場っぽい場所で、わたしは両膝をガクッと地に落として項垂れた。

 くっ……! やっぱりママを、止められなかった――。


「――お名前を聞いてもいいかしら」

「え、あっ、は、お、俺っ、あいやっ、わ、わわ私はっ」


 するり、と見事な手際で腕を絡めて妖艶に微笑んで相手に話しかけた母の姿に、「ついにやっちまったか……」とどこか達観した顔で娘のわたしはその光景を遠くなる目で眺めていた。

 どこかに居るだろうとは思っていたが、まさかこんな早くにエンカウントするとは思わなかった。


「そう、レオンハルトさんと言うの。レオンって呼んで良いかしら? 私のことは是非、深雪……ミユキと呼んで下さいね」

「は、……」


 ママの溢れんばかりの色香にやられて完全に真っ赤になった顔で勇猛な見た目を台無しにするドギマギさで返事をしたのは、明らかに歴戦の猛者です! と言わんばかりの素晴らしい筋肉と彫刻にしがいのある美しくも男らしい顔立ちの、立ち居振る舞いが粗野な感じの男性だった。

 何を隠そう、ママの最も好む容姿で剛速球のドストライクであった。


「み、みゆき……」


 あ。やべ。道案内と護衛と仲介の為にミハエルパパもいたんだった。

 うわ、完全に目の前の光景が受け入れられなくて思考停止で固まって石像化してんじゃん。ウケる。

 ……なんかごめん。うちのママが。


「そうなの。それで――ああ、ごめんなさいね私ったら」

「い、いや……」

「あちらでお利口にお座りしてるのは私の娘で美愛ちゃんって言うの」

「聞いてる。今回の護衛対象だと……おま、いや、母親であるミユキ様もご一緒にご案内を」

「あらやだ。ただのミユキでいいですのに。もっと砕けてお話していいですよ」

「それは助かる、が……」


 徐々に平常心を戻し始めたのか、まだ赤みは残るもののもう普通に受け答えするまでに戻ったのを見ておや? と感心した。

 母がその気になってぐいぐい行ってすぐに平常心を取り戻せるなんて、なんて強メンタルなんだろうか。やりおる。


「み、みゆき……」


 ミハエルパパ、結構図太いと思ってたけど実は意外と弱メンタルだったんだろうか。

 棒立ちのまま機械的に同じセリフを繰り返すこちらはこちらで王子様な見た目が台無しな石像を後ろに控えさせて、わたしは明後日の方向を見て「今日は快晴のお出かけ日和だなあ」とこの後に間違いなくひと悶着あって悪化するのが目に見えている修羅場現場からの現実逃避を試みた。

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